第216話 カラオケ

「嫌だー!」

 抵抗する俊を、面白そうに連行する一同である。

 日本が世界に誇る文化であるカラオケ。

 実はハードロックとは、あまり相性が良くなかったりする。

 単純にあちらは、楽器の演奏までも含めて、一つの音楽であるからだ。

 なのでジャンルとしてはR&Bの曲の方が、歌うのには適している。

「まあ確かに生の演奏とは全然違うけど」

 そう言いながらも暁は、いきなりStairway to Heavenを入れてきたりする。

 お前それ、カラオケで最初に歌うもんじゃないだろ。


 約八分にもなる楽曲であり、しかも序盤のイントロが楽器だけで極めて長い。

 原曲はジミー・ペイジのギターが情感たっぷりに弾かれているが、これを今の日本人が聞いても、あまりぴんと来ないのではないだろうか。

「素直にディープ・パープルから選んでおけよ」

 信吾がそう言うが、確かに暁は歌唱力はそれほど高くない。

 それでも普通にコーラス部分で、歌を入れてきたりはする。

 ちなみにディープ・パープルの曲も、充分に長いのが多い。


 一人一曲がノルマ。

 そう言われた俊は、すぐに入れてしまった。

 彼でもかろうじて、歌えるようになっている曲。

 日本の国歌君が代である。


 やたらめたら歌の上手い人間が揃った、混沌としたカラオケボックス。

 だが花音たちは、本来の用事を忘れたわけではない。

「後でまた戻って、アンケート用紙回収しないとね」

 スパイラル・ダンスはそういうこともしているのである。

 それはそれとして、どうにも何か言いたげな、俊について気になっている。

 正確には俊だけではなく信吾と、そして月子も少し微妙に思っているのだが。




 ミュージシャンというか、アーティストというのは人気商売だ。

 はっきり言って人気さえあれば、どうしてあんなのがという存在でも売れたりはする。

 忘れてはいけないのが、ロックのターニングポイントであったビートルズなども、アイドル的な売り方から入っている、ということだ。

 だが、まず最初に俊が確認したかったのは、告知の仕方である。

 花音のYourtubeには、このライブの告知がなかった。

 SNSではアカウントが作られていたが、それと花音を結びつけるものがない。

 花音の知名度はボカロPをやっていた頃の、俊の比ではないほどなのに、だ。


 もしも花音の知名度に乗っかるのが嫌とかでも言うなら、それは子供の戯言でしかない。

 花音が積み上げてきた数年を、有効利用しないという手はないのだ。

 そもそも事前に調べれば、玲も流行の邦楽などを、ピアノで弾き語りなどはしている。

 そういった導線を完全に使わず、本当に身内への告知だけでどうにかしようとしたのか。

 ……まあ実際に、充分に沸かせたものではあったが。


 そう考えると、少しだけ納得する部分もある。

「花音のネットでの人気に乗るのが嫌だと言ったのは誰だ?」

 言葉では応えず、花音がそっと手を上げた。

 本当に歌わない時は、無言であることが多い少女である。

 楽器を弾きながらでは歌えないことといい、どこか欠落した部分があるとも思える。

 才能がある人間は、確かにそういった極端な部分があるのだ。


 花音の代弁者は、共に住んでいる玲である。

 ほとんど実の姉妹のように、二人は感じているのだ。

 そして花音は周囲の大人からは、ある期待を受け続けている。

 偉大すぎる母親を持った、子供の苦悩。

 それは偉大な父親を持った俊には、かなりよく分かるものである。

 もっとも花音には本人に充分すぎる才能があったし、俊の場合も父には時代を超えるだけの才能はなかった。

 なので今、凡人に近い自分が、こうやって成功しつつある。


 母親の遺産ばかりではなく、自分で手に入れたもので勝負したいのか。

 あまり感情を表さないが、そう考えているならちょっと、傲慢だとも言えるだろう。

 だがアーティストというのは傲慢なものだし、傲慢だからこそ生み出すエネルギーがある。

 そのあたりを上手くコントロールするのが、プロデューサーやマネージャーの役割になるのだ。




 あともう一つ大きく気になったことは、MCの部分である。

「メンバーの名前、紹介してなかっただろ」

「あ……」

「あとSNSとかの告知はどうしてるんだ?」

「それはちゃんとやってるよ」

「どうしてYourtubeのチャンネルに紐付けしてないんだ?」

「……しておいた方が良かったのかな」

 話にならない。


 認知度を高めるためには、名前を知ってもらうのが一番最初であろう。

 フラワーフェスタはその最初の一歩を軽んじている。

 自分たちの実力を、正確に評価はしているのだろうし、それについては俊も異論がない。

 だがいい物ならいつか必ず売れる、というナイーブな考えは捨てなければいけない。

 もちろん買って損はないものを売っていくのが、商売の基本ではある。

 しかしいいものが必ず売れるとは限らないのが、この世界の不思議なところなのだ。

 音楽やWEBマンガ、WEB小説などは、単なる暇つぶしとして無料で消費されている。


 今の世の中は、コンテンツの量が莫大なものになっている。

 だからたとえいいものであっても、そこに対する導線をしっかりと作らなければいけない。

 それこそ俊でさえ、目先の利に飛びつかないことが、正しいのかどうか迷ったものだ。

 その俊は単純に音楽だけではなく、マーケティングについても大学で勉強した。

 また父の時代と今を比較して、どのように展開していったらいいのかも、ちゃんと分析していたのだ。


 ネットの時代と言われている。

 ネットから生まれた、ボカロPがその才能を発揮している時代だ。

 純粋に実力だけで分かる、というわけでもない。

 初期のボカロ曲は映像イメージも単純なものであったが、次第にその特徴ははっきりとしたものになっていった。

 音楽と映像を合わせて、それで流行るという曲も出てきた。

 だがほとんど一枚絵を、わずかに変えていくというだけで、大きくPVの回る曲などもあったのだ。


 ボカロ曲を原案イメージとした、コミカライズやノベライズ、さらにはアニメ化までも発展していった。

 またそこからメジャーシーンにデビューしていった才能は、楽曲提供やユニットを組んで、年度を代表とするような曲をどんどんと発表していった。

 もちろん既存のような、バンドから爆発していっているグループもある。

 そういったものは昔ながらのタイアップが特徴であったりするが、そのタイアップ先は90年代のトレンディドラマと違い、アニメであることが多くなった。

 完全に日本のアニメが、世界展開されるようになったことが大きい。

 またここでもネットによって、アニメは配信されるものであり、時間になればテレビの前で待つものではなくなった。

 俊はこのあたりの事情を、懇々と説明していったのだ。


 俊が自分で思っているより、ずっとお人よしの人間だとは、月子や信吾ははっきりと分かっている。

 もちろんメンバーに説明したように、新しいムーブメントを起こすためには、一つのグループだけでは難しい、ということも事実である。

 しかしわざわざ自分たちよりも若く、そして土台となるものもしっかりとした、予算が投入される相手に塩を送る必要はない。

 そのあたり本当にドライでいられるのは、信吾だけだと言えよう。

 ただその信吾も、本当にどうやったら売れるのかというセンスは、俊の方がずっと優れているのだとは分かる。

 月子はそもそも、現実を知っていながら夢見がちな人間だ。

 なので俊のこういったお人よしな面は、むしろ好ましいとさえ感じている。




 俊はとにかく石橋を叩いて渡るタイプだ。

 それでも過去には、上手くいっていないことが多い。

「あのさあ、いっそのことアメリカからデビューとかって無理だったの?」

 バンドの方針については、基本的に意見の少ない千歳が、そんな疑問を抱いた。

 エイミーは日本語をネイティブほどには話せないが、花音と玲はかなりネイティブに近い。

「それは無理だ」

 俊はすぐに否定した。

「なんで?」

「アジア系と黒人のグループだからだ」

「は?」

 ものすごく単純そうだが、理不尽な理由である。

 そもそも花音も玲も、かなり欧州の血が入っている。

 ジャンヌにしても同じことだ。


 これは完全に差別的な思考である。

 だがアメリカというのは、隠れた差別をなかったことにする文化の国なのだ。

「ロックをやる黒人が少なくて、ヒップホップに多いとか、そういう背景がある。さらにアジア系は成功しにくい」

「え~、なんかそれ差別じゃん」

「そうだ。逆に日本で成功してから輸出した方が、グループとしては成功する。花音一人でさえも、かなり容姿は東アジア寄りだからな」

 実際のところ、顔立ちでは人種がよく分からないのが、エイミー以外の三人である。

 ただ俊は、アメリカの事情を情報として知っている。


 黒人音楽を元にして生まれたロックだが、60年代はほとんど白人の音楽であった。

 ジミヘンなどは黒人に、ネイティブアメリカンの血まで引いていて、ちょっと特別ではあったが。

 70年代から80年代にかけていっても、黒人のミュージシャンでロックは少ない。

 もちろんマイケル・ジャクソンはキング・オブ・ポップスであるが、晩年にかけての彼の、色素の除去は異常なものがあった。

 ジャスティン・ビーバーもかなり例外的な存在であろう。

 短命だが影響を与えた、女性歌手のミニー・リパートンなどもいる。


 もちろん黒人が活躍していないというわけではなく、ジャズの世界では帝王とまで言われた人間もいたが、それでも人種差別は凄まじかった。

 逆に今では、黒人枠というものが、逆差別として優遇されていたりする。

 また白人の貧困層というのが、過激な人種差別に走ったり、移民排斥の運動をしたりすることもあった。

 一番叩かれるのは、中東系であろうか。

 白人の下に黒人、そしてそれと同じぐらいがヒスパニック、東アジア系はその下、というカーストが存在する。

 これは善悪の問題ではなく、ただの事実である。


 これが日本だと逆に、黒人要素の強い容姿のエイミーが、ドラムを叩いたりベースを弾くことで、無条件に好まれたりする。

 人種差別とかルッキズムとかではなく、ファッションに近いものだ。

「純粋に音楽をやるのは、はっきり言ってどうしても不可能だ。その中で一番、マシなのが日本だとでも考えたんじゃないか?」

「それはそう」

 あっさりと花音は頷いた。

「それにアメリカは暮らしづらい」

 そうなのか、と俊は思ったものだが、何度か訪れたアメリカにおいては、俊はあくまで旅人か客人であった。

 またこの数年は行っていないので、雰囲気はまた変わっているかもしれない。


「うちのお父さんがちょっと前まで、仕事で一年のかなりをアメリカで過ごしてたんだけど、東洋系は評価が極端に割れるんだって。まあ東洋系に限らず、結果が残せるか残せないかなんだけど」

 玲の父親も、アメリカで働いていたということか。

 この中では、日本生まれは玲だけだと聞いていたが、彼女にもある程度はアメリカの記憶はあるのだろう。

「未だにヨーロッパのどこかから、急に出てきて成功するバンドはあるしな。あと日本の場合は、音楽市場が世界で二位だから、国内だけで完結しても食っていけるという理由もある」

「へえ、中国じゃないんだ」

「中国は海賊版が出回ってまともな市場にならないからな」

 そもそも政策によって、海外からの文物が一方的に遮断されることさえある。


 このあたり、ビートルズなどを生んだイギリスよりも、日本の方が音楽市場が大きいのは、不思議に感じるかもしれない。

 だがそれは単純に、イギリスが純粋な英語圏の国家であるからだ。

 ローリングストーン誌が選ぶグレイテストソングでも、ほぼ全てが英語歌詞の曲である。

 ただ日本の音楽が通用しない、ということではない。

 最近のシティポップの流行などもあるし、過去には坂本九の歌が全米ナンバーワンに本当になったものだ。

 月子の霹靂の刻がオリバーの琴線に触れたのは、オリエンタルな要素とか、今までにあまりないものを、取り込んだからであったろうが。

 日本の古くからの民謡などは、今でもそれなりに観光客などから、相当の注目を浴びている。




 少し話は逸れたが、日本で売れるための方法だ。

 花音一人ではなく、彼女たちで売れる方法。

「やっぱタイアップ?」

 これも千歳が、安易な案を普通に示してくれる。

 彼女のこういった普通目線は、実はとても大切なものだと、最近の俊は思っている。


 アニメタイアップは、今ではかなり売り出すには、いいルートになっている。

 ノイズの曲ももうすぐ、七月から始まるアニメでOPに使われるのだ。

「アニメタイアップ、それも大きな人気作に、ALEXレコードなら送り込めるだろうな」

 もっともそういった路線はむしろ、GDレコードの方が得意なのだが。

「ただ、彼女たちの最大の武器はなんだと思う?」

「実力」

 これに即座に答えたのは、千歳ではなく暁であった。


 実際にセッションをした暁は、それがはっきりと分かっている。

 さすがにもう何度も合わせてきた、ノイズとは比べられない。

 だが最初からこのグループに誘われていたら、間違いなく入っていただろうな、とは思うほどに認めている。

「実力は、あって当たり前のものだ」

 それでも売れないミュージシャンはいる、と俊は分かっている。

「スター性があると思う」

 月子の言葉は、かなり近いものであった。

「惜しいが、少し違う。キャラクター性だ」

 これが明確であるほど、売り出すほうとしても分かりやすいものなのだ。


 俊は四人を指で示し、くるりと回した。

「まずルックスがいい。そして外国育ちがいる。日本人以外の人種がいる。そして誰もがボーカルの出来るマルチプレイヤー。圧倒的に若くて、そして全員女性」

 いくつかのバンドの中には、マルチプレイヤーというのがいたりはする。

 超有名なビートルズの中では、ポールがベースのほかに、ギター、ドラム、ピアノ他といった感じであった。

 ノイズにしても俊は、一応ある程度のレベルならば、ギターからベースにドラム、キーボードと弾いていける。ヴァイオリンはおまけだ。

 ただ彼女たちのレベルは、それよりもずっと上のものだ。 

 一番得意なキーボードでさえ、花音や玲の方が上だろう。


 ライブをしていた中でも、どんどんとポジションをチェンジしていくのは、見ていてワクワクしたものだ。

 そして俊たちはあらかじめ知っていたが、最後に花音のボーカルを持ってきた。

 花音が演奏しながらの歌唱が出来ないという弱点は、ボーカルのパートを使いまわしていくことで解消出来る。

 サビの部分を花音の演奏をなくし、彼女に歌わせればいい。

 ノイズでもおおよその曲で、サビに難易度が高いものは、月子が歌っている。

 そういう手段が使えるということが、とんでもない武器になるのだ。




 フラワーフェスタの弱点は、まず自己分析が足りない。

 自分たちの力、そしてストロングポイントを理解して、活用出来ていないのだ。

「でも針巣さんがどう言うかな……」

 玲がそう呟くのは、やはり花音をソロで売り出したいからなのか。

 しかし彼女のピアノも、かなり捨てるには惜しい要素なのだ。


 四人全員が相当のレベルで歌える。

 これだけ強力なのは、今の日本のバンドやユニットを見ても、ちょっと見つからない。

 特に花音はトップレベルであるし、一番バンド的な玲でさえも、バンドボーカルとしての素養が充分にある。

「なんなら天国への階段、君らなら演奏出来るだろ」

 Stairway to Heavenは、確かにツェッペリン的な構成で演奏すれば、フラワーフェスタはいける。

 またボーカルが誰でもいけて、その中で特に花音が中心というなら、ボヘミアン・ラプソディなども行けるではないか。


 実力もあるのに、血統的な背景さえある。

 俊はノイズの活動の中で、父の名前は出さないようにしている。

 当時としてはかなり流行ったが、今ではほぼカバーなどもされていない。

 時代性で売れた要素が強かったからだ。

 しかし花音の母親の歌は、いまだに多くのカバーがなされていっている。

 これは皮肉な見方をすれば、あまりにも早く劇的に、死が彼女に訪れたからでもあろうが。


 売れて当然というストーリー性すらあるのだ。

 ただこの事実は、最初に公開するべきではなかったのでは、とも俊は思う。

 ケイティに導かれて、あのドームでパフォーマンスを行った花音。

 聴衆の全ては、その実力を感じたであろう。

 だがそこに、バイアスがかかっていないか、という視点は当然ながら出てくる。

 俊も自分の父の件に関しては、相当に考えて利用しないと決めたものだ。


 ただそういった葛藤などは、俊はある程度相談に乗ったとしても、判断は針巣たちなどに任せるべきであろう。

 それが筋であるし、実際に予算を使うのはALEXレコードなのだ。

「ただ社長を納得させるための、データなら撮影しておいた」

 どれだけ上手く撮れているかは、ちょっと分からないところではあるが。

「なんだかんだ言って、あの人も実力を好む人だしな」

 商売人として、また業界内の政治を行える人間として、ちょっと油断のならないところはあるだろうが。


 しかし花音は、ケイティからのバックアップを受けているようなものだ。

 下手な売り方をしていけば、彼女のバックのアメリカのレコード会社が、引き抜きなどをしてくるだろう。

 花音だけなら売れるが、ケイティの娘までも巻き込んでいる。

 このあたり針巣も、他にちゃんと計画があるはずなのだが。

 ケイティとエイミーは日本の社会に疎いであろうし、花音は芸術家肌というか人見知りの傾向がある。

 なので玲がリーダー的に判断しているのだろうが、さすがに荷が重過ぎる。

 彼女に力量や才能がないというわけではない。

 そんなことが可能な人間は、そもそもほとんど存在しないのだ。




 俊は随分とアドバイスをしてしまった。

 その背後では延々と、他のメンバーがカラオケを歌っていたが。

 月子と千歳がデュオで歌うと、さすがにフラワーフェスタの四人よりも、しっかりと息が合っている。

 単純に過ごしてきた時間、練習してきた内容が、全く違うのだ。

 四人はまだ若い。

 そうは言っても一番年長のエイミーは、暁や千歳と同じ年齢であるのだが。


 なんだかんだ言いながらも、俊はこの四人の未来が見たいのだ。

 それは自分よりも上だとか、先に行かれるのは嫌だとか、そういう嫉妬や羨望を上回る。

 自分たちは自分たちにしか、出来ない音楽をやればいい。

 そしてノイズは彼女たちには出来ない、またMNRや永劫回帰やミステリアスピンクにも出来ない、独自の路線を歩むことが出来る。

 あるいは道ではなく、自由度の高さこそが、ノイズが他に優る点であるのかもしれないが。


 こちらが折れないのであれば、ライバルは強ければ強いほどいい。

 日本の中であっさり負けているようであれば、海外では戦えないだろう。

 もちろん日本の中に限定しても、充分に成功するだけの、準備や計画を考えてきた俊である。

 だが多くのミュージシャンが、一気に盛り上がっていくなら、それは日本という枠を超えていけるかもしれないのだ。


 実際に花音の母は、日本で活動していた時代にも、アメリカで聞かれていた。

 彼女はそもそも、先にアメリカで売れていた、という背景はあったものだが。

 ビートルズが一番偉大なバンドだとしても、他のバンドに価値がないわけではない。

 それこそビートルズよりも、ツェッペリンの方が好きであったり、QUEENの方が好きであったり、ストーンズの方が好きであったりする人間がいる。

 ビートルズはそもそも、既に古典だという人間もいるだろう。


 音楽はEDMの発達もあるので、ビートルズの解散後に、そのメンバーであるジョンやポールは、ソロで偉大な曲を残している。

 ジョンは早くに暗殺されてしまったが、ポールは長く他のミュージシャンともコラボして、色々と名曲を残しているのだ。

 後から来た者に、追い越されるという恐怖はある。

 ずっと前ばかり見ていたので、彼女たちの出てくるまでは、感じていなかったものだ。

 しかしいずれは、自分たちより若い力は出てくる。

 それに負けないためには、今もこの彼女たちに、負けるわけにはいかないと思う俊であった。

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