第13話
「仕方ないですね...あくまでも私個人の意見で良いというのなら...」
ライラは諦めたような表情を浮かべてそう言った。
「あぁ、構わない。聞かせてくれ」
「まず、確実に犯人じゃないだろうという人はすぐに挙がりますね」
「ほう、誰だ?」
「ドロシー嬢です」
ライラがキッパリと言い切った後、すこし間を置いてからミハエルが続きを促す。
「...その根拠は?」
「自分が主催するお茶会で誰かを毒殺しようなんて考えるバカは居ないでしょう? 真っ先に自分が疑われるじゃありませんか?」
「確かにそうだな。だが逆説的に、周りがそう思ってくれるだろうと期待して犯行に及んだのかも知れないぞ?」
「そういった可能性も無きにしも非ずかも知れませんが、あまりにもリスクが大き過ぎると思います。仮にですが、本当にドロシー嬢がソニア嬢に殺意を抱いていたとするのなら、自分が主催するお茶会の場ではなく、他の誰かが主催するお茶会の場を選ぶんじゃないでしょうか?」
「なるほど...確かにその方が理に適っているかも知れないな...」
そう言ってミハエルは一つ頷いた。
「それにもう一つ、ドロシー嬢が犯人ではないと思われる根拠があります」
「ほう、それはなんだ?」
「狙われたのがソニア嬢だったという点です」
「その意味とは?」
するとライラはちょっと言い辛そうな表情を浮かべた。
「こう言っちゃなんですが...今回の候補者レースの中で、ソニア嬢は私と並んで最下位だったんじゃないかと思ってます」
「なぜそう思う?」
「年齢的にも一番下ですし、爵位的にも私を除いて一番下ですし。それになにより、一緒に暮らしていて気付いたんですが、その言動は実年齢よりも遥かに下に見えるくらいまだまだお子ちゃまなんですよ。とてもじゃないけど、将来の王妃となるような器とは思えませんね。だからドロシー嬢がライバル視というか敵視するような存在だったとは到底思えないんですよ」
「つまり、ソニア嬢を殺そうとする動機がドロシー嬢には無いと?」
「えぇ、もっとも私の預かり知らないところでソニア嬢がドロシー嬢の恨みを買っていた可能性もありますが、少なくとも一つ屋根の下で暮らしている間、両者はほとんど会話することもなかったですから、その線も薄いと思ってます」
「なるほど...こうして並べられると確かにドロシー嬢が犯人とは思えないな」
「えぇ、ドロシー嬢が犯罪を楽しむ劇場型のサイコパスでも無い限りは」
ライラは少し苦笑しながらそう言った。
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