第14話
「あぁ、その可能性は低いだろうな」
ミハエルも苦笑で返した。
「あの時のドロシー嬢は本気でショックを受けていた風だった。あれが演技だとはとても思えないし、演技だとしたら大した役者だということになるからな」
「えぇ、私もそう思います。演技じゃないでしょうね」
「ドロシー嬢が犯人じゃないという根拠は分かった。次は肝心の犯人だが、君が犯人だと思う者は居るか? 居たら参考までに誰だか教えてくれないか?」
するとライラは口を濁した。
「まぁ...居るには居るんですが...まだこの段階じゃ状況証拠でしかないんで名前を言う訳にはいきませんね」
「そうか...それは残念だ...」
「ちなみに殿下、使われた毒を探すために、他の候補者達各自の持ち物チェックや部屋の中の捜索なんかは進めているんですか?」
「あぁ、本人立ち会いの元、現在進行形で進めてる最中だ。今のところ、まだなにも出て来ていない」
「まぁ、そんな簡単に見付かるような所に毒を隠したりなんかしないでしょうねぇ」
「そうだな」
「そもそも、今回の件で持って来た毒を犯人が全て使い切ったという可能性もありますし」
「犯人を特定するヒントが一つ失われることになるのは痛いが、もしそうならば、今後は毒による事件は起きない訳だから、その方がありがたいのかも知れないな」
「まぁ、そういう考え方も出来ますよね...」
そこでライラは少し考え込んだ後、
「殿下、使用人達の聴取は進んでますか?」
「あぁ、お茶会をセッティングした侍女や、料理とスイーツを用意したシェフ、それにパティシエなどを尋問している。こちらも今のところ収穫なしだ」
「シェフとパティシエは外していいと思います。あの時、まだ誰も食べ物には手を付けてなかったですから」
「分かっている。彼らには形式通りの話を聞くだけで解放するつもりだ」
「問題は侍女ですが...」
「そうなんだ。実はその件でちょっと困っててね...ライラ嬢、どの侍女がソニア嬢のカップにお茶を注いだか覚えているか?」
「いえ、さすがにそこまでは...」
ライラは首を捻った。
「実は他の候補者達の誰に聞いても覚えてないと言うんだ。同じテーブルに着いていたファリス嬢でさえも。もちろん僕もだが」
ミハエルは自嘲したような表情を浮かべた。
「侍女達を尋問した結果はどうだったんですか?」
「それが誰もソニア嬢のテーブルには回ってないと言うんだ」
「えっ!? それってどういうことですか!?」
ライラは目を剥いた。
「侍女が一人行方不明になっているということだ」
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