第10話

 そして一週間後、ドロシー主催によるお茶会が予定通り開催された。


 幸いなことに当日は晴天に恵まれたので、穏やかな日差しが射し込む中庭がお茶会の会場となった。


 テーブルと椅子がコンビ数に合わせて三脚ずつ用意された。それぞれがコンビ別のテーブルに腰を下ろした後、主催者であるドロシーが挨拶をするために立ち上がった。ちなみにミハエルの席は、当然ながらホストであるドロシーの隣に用意されてある。


「皆様、ようこそおいで下さいましたわ。私の日頃の行いが良いお陰か、このような晴天に恵まれたことを神に感謝致します」 


 冒頭から自画自賛のようなコメントが発せられたので、参加者達は揃って苦笑していた。


「本日、茶葉は厳選された最高級品をご用意致しましたわ。お茶請けには王宮のシェフが腕に縒りを掛けた一品をご用意しております。どうぞご存分にご堪能下さいまし」


 挨拶が終わり、ドロシーが席に着いたタイミングで侍女達が各テーブルを回る。各自のカップにお茶を注いでいよいよお茶会がスタートした。


 ライラは茶葉の良し悪しなんか分からないので普通に口を付けたが、他の参加者達は全員まずはお茶の香りを楽しんでから口を付けた。その時だった。


「グエェェェッ!」


 ソニアが苦しそうに喉を抑えてテーブルに突っ伏した。テーブルの上にあった紅茶のカップやお茶請けが地面に落ちて派手な音を立てる。


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」


 一緒のテーブルに着いていたファリスが悲鳴を上げて仰け反る。その他の参加者達は、全員なにが起こったのか理解出来ずに固まってしまっていた。その時、一番早く動いたのはライラだった。


 ライラはテーブルに突っ伏しピクピクと痙攣しているソニアを抱き起こし、口元の吐瀉物の匂いを嗅いだ。


 そしてテーブルの上に落ちずに残っていたミルク瓶を取り上げ、ソニアの口に運んだ。


「飲んで! 飲みなさい! 誰か! ミルクをもっと持って来て!」


 ライラは無理矢理ソニアの口を開けてミルクを流し込みながら、他の参加者達に向けて叫んだ。


「待ってろ!」


 その言葉に我に返ったミハエルが一早く反応し、自分のテーブルに置いてあったミルク瓶を掴んでライラの元に急ぐ。


 ミルク瓶を受け取ったライラはソニアの口を更に大きく開けさせた。


「さぁもっと飲んで! 苦しいだろうけど頑張って!」


「グボオッ!」


 ソニアは咳き込みながらもなんとか飲み終えた。すると次にライラはやおらソニアの口の中に手を突っ込んで、


「今度は吐いて! 全部吐き出しちゃいなさい!」


「オエェェェッ!」


 吐瀉物が上がって来たことを確認したライラは、ソニアの体を下向きにして背中を擦ってあげた。


「もっとよ! もっと吐き出しなさい!」


「オエェェェッ!」


 ライラはソニアに噛み付かれるのも構わず、ソニアの口の中に手を入れ続けていた。

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