第2話

「コホン、次は私ですわね。フィンラート辺境伯家のレイチェルと申しますわ。歳は17です。私は皆さんと仲良し小好しを演じるためにここに来た訳じゃありませんの。だからあんまり馴れ馴れしくしないで下さいませ。私にとって皆さんは敵、ライバルですので。ご理解頂けたかしら?」


 続いて挨拶したレイチェルの発言により、場の空気は更に重苦しいものとなったが、


「...レイチェル嬢は好戦的...と...さすがは日夜隣国の脅威に晒されている辺境伯家の娘...他の娘達とは覚悟が違う...と...メモメモ...」


 場違い令嬢だけはそんなことお構い無しにただひたすらメモを取っていた。


「次は私ですね。ソリアーノ侯爵家のミシェルですわ。16歳になります。よろしくお願い致します。私は皆さんと仲良くなりたいですわ。だってせっかく縁あってこうして集まったんですもの。是非ともお友達になりたいものですわね」


 ミシェルの挨拶は、前の二人の挨拶が排他的、好戦的だったのに比べ、とてもフレンドリーなものだったので場の空気が一気に弛緩したのだが、


「...ミシェル嬢の発言は一聞するとフレンドリーに聞こえるが、目の奥が全く笑っていないのであれはきっと本心から言ってる訳じゃ無さそう...と...メモメモ...」


 場違い令嬢のブツブツとした呟きはミシェルに聞こえていたので、思わずミシェルは場違い令嬢のことをキッと睨み付けた。当の場違い令嬢はそんなことに全く気付いていなかったが。


「え~ 次は私ですね~ シェリダン伯爵家のファリスと申します~ 歳は16になります~ どうぞよしなに~ 私は~ 争い事とか苦手なんで~ ユルッと行かせて貰いますね~」


 なんとも間延びしたファリスの挨拶に、場の空気は穏やかなものになって行ったが、


「...ファリス嬢のは本当に天然なのか、それとも狙ってやってんのか、意図はまだ不明...と...狙ってやってんだとしたら、案外強かな面も持ち合わせているのかも...と...メモメモ...」


 場違い令嬢の呟きが気のせいか段々と大きくなって来たので、当然ながらその発言が聞こえたファリスは、なんとも言えないビミョーな表情を浮かべていた。


「最後は私ですね! オーランド子爵家のソニアって言います! この中では一番年下の15歳です! お姉様方、よろしくお願いしますね! ソニアのことは妹だと思ってくれると嬉しいな♪ キャハ♪」


「...ソニア嬢! あざとい! あざと過ぎるだろそれは! 誰に対して妹アピールしてんだよ! 他はみんなライバルなんだぞ! 敵なんだぞ! 空気読めよ! みんなポカンとしてるじゃねぇかよ! メモメモ!」


『お前うるせえ!』


 場違い令嬢はついにキレた候補者達全員から突っ込まれた。


 

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