Life Re:3 The "Aikagi" to your dream life in Tokyo 一緒に暮らすということ
2018年8月29日。
彼女も落ち着いたのか、気を使ったのか、昨夜は電話を掛けてこなかった。
まあ、彼女にも考える時間は必要だし、あるいは理想の同居生活にウキウキしてるのかも知れない。
う~ん、イマイチ、実感が湧かない。
やる前から実感が湧くと、それはそれで問題なのだが、僕が17歳の女の子と暮らすというイメージすら湧かないのだから、実感など湧くはずもない。
別にいいのだけど、それでも、今日からは、彼女と一緒に暮らす。これしか、彼女に対しては、もう援助出来ない。
「おっはよう。なんか浮かない顔してるね?」
彼女と朝会った時の第一声がそれだった。
「おはよう。そうだね。なんか、イマイチ、目の前にいる女の子と、これから東京の自宅へ帰るっていう実感が湧かないんだよね。」
「あ、女子高暮らしって、案外男子校よりもっとヒドイよ。ああ見えて、汚い世界だから大丈夫。」
「そういうことを心配してるんじゃない。だって、好きな子といきなり同居、しかも同級生ではなく、17歳ってさ。」
「戸籍上は37歳なんです。私も実はもうオバさんなんですよ。オトーサン。」
ただ、新鮮なのは、オトーサンという言葉だ。僕は、人の親になったことがないが、一応、この娘の保護者として、父親役になったのだから、もう少し頼りがいのある父親にならなきゃいけないのかもしれない。ただ、そんなに責任を持てるだろうか。
「どうしたの?」
「あ、ごめん。なんかね、オトーサンって言葉。結構重いなって思ったの。」
「じゃあ、君のほうが、まだいいかな?」
「適材適所かな。君が父親を欲しているときはオトーサン、君が僕を欲しているときは君でいいんじゃない?」
「君を欲している...私、そんなに発情とかしたことないもん。」
「そう受け取るんだ。でも、慣れればどっちでもいいよ。昨日も言ったけど、曖昧なままにしておく部分も必要だしね。」
「ホント、そういうとこなんだよなぁ。上手くごまかすというか、まとめちゃうというか、君のすごいところ。」
「そう?あんまり気にしてなかったけど。」
「私が口下手なのかも知れないけど、なんとなく大きな意見を、そのままうまいこと変換して、反映させることが出来たじゃん。昔は。」
「そんなことしたっけ?文化祭の時とか?」
「忘れちゃった?京都で私を助けてくれたこと。」
「...ごめん。」
「もしかすると、無意識にそれをやってたってことなのかもね。天性のものというか。」
「多分、ただ必死だったんだと思う。君も見てたしね。」
「本当に私のこと、意識してたのかなぁ。ま、でも、今は独り占め出来る。出来てる。」
「君は嬉しい?」
「嬉しいよ。やっぱり、君は特別だったもん。でも、高校は宇都宮に通ってたのに、会うこともなかったしね。」
「そこで仮に会ってたとして、声を掛けることはなかったでしょう?君は、常に周りに気配りをするような人だったからね。」
「実はしっかりと見てたんだ。嬉しいよ。」
そんな話をしながら、駅への道中を進んだ。想い出話は尽きないけど、今を生きていくこと、それが果たしてどうなるか?
僕の自宅は田端にある。
建物自体は、僕と同じ歳。築38年。6畳が2間、キッチンが4畳、そして風呂トイレがユニットバス。
時代を考えれば、まあ、不便はしない。一人で暮らすには十分だった。だったんだ。それどころか、二人でも十分暮らせる。でも、部屋は荒廃しており、最近は壁紙が剥がれてくるのを、自分で補修しているレベル。まあ、結構住んでるしね。
宇都宮線で約70分、そこから京浜東北線で10分。山手線の内側というステータスが、案外この場所のランクを上げてる気がする。
まあ、どこに出るにも便利。ちょっとそこまでの感覚で、秋葉原や池袋に行けるのは結構大きかったりする。
「はぁ~。着いたね。案外、遠かった気がする。」
「憧れの上京。どうだい?」
「なんか、実感が湧かない。でも、東京なんだよね。ここ。」
「少し外れる感じではあるが、住むにはそれほど不便はないところだよ。」
さてと、どうしたものかな。まずは、合鍵でも作りに行くかな。
「ねぇねぇ、どこに行くの?」
「そうだね。合鍵でも作ろうか。君も、ないと不便だったりするだろ?」
「うわぁ。合鍵だって。あいかぎ。なんて甘美な響きなのだろう。本当に私は、この世界にいていいのでしょうか?」
「随分嬉しそうだね。そんなに憧れてた?」
「バカにしないでね。私、今まで、そういう体験が出来るとは思ってなかったんだ。昨日も話したけど、受験勉強と、親からの期待、そして変につきまとわれる同級生。」
「あれ、高校時代にも、中学の同級生がやっぱり家に押しかけてたの?」
「何人かね。律儀に、旅行に行ったりしたら、お土産を買ってきて、そして聞きたくもない告白を聞くの。興味ないってわからないのかな?」
「ま、恋は盲目というし、君も可愛いし、それは別に自慢してもいいって話じゃない?」
「でもね、女子校って、やっぱり彼氏自慢もそうだけど、なんだかんだで肉体関係の話なんかもするわけだよ。まあ、そっちのが、もっと興味ないって。」
「男子は意外とそういうところ、バカだから盛り上がるんだよな。下手に急いでセックスしたりして、振られたりとかさ。」
「やっぱり男子もするんだ。女子は、そういう性生活に対して、更にもう一つ、内側に食い込んでくる。誰の彼氏が一番気持ちいいかとかね。」
「私立校だけど、やっぱり文化圏が違うものなのかな。それとも女性のほうが、性的に見られるからなのかな?」
「理由はわからないけどね。あ、一応カミングアウトしておくと、私はまだ処女。というか、相手だって、君がいいぐらいだよ。」
「なんでもいいけど、父親役のけじめとして、君とはやっぱり肉体関係は持てないからね。悪いけど、僕らがもしその先の関係になった時、考えよう。」
「まったく、真面目過ぎ。でも、オトーサンとしては、真面目なほうが頼れる。ねぇ、オトーサン。」
「はは、なんか、実感湧かないけど、ありがとう。」
鍵屋さんって、なんかハンコ売ってるようなイメージがあるんだけど、どうしてだろうね。
入ったことない、近所の鍵屋さんだったけど、やっぱりここでもハンコ売ってる。う~ん。
「いらっしゃいませ。」
「すみません、この鍵のスペアを作って欲しいんですけど。」
「う~んと、あ、これ、普通の鍵ですね。1650円です。」
「じゃあ、1本、お願いします。」
僕はなんとなく疲れてしまったので、椅子に座って待っていたが、彼女は興味があるみたいで、カウンター越しに、鍵が出来ていくのを見ていた。
まぁ、そんなに作ることもないしね。僕も、自分のスペアキーの他に、鍵を必要とするとは思わなかった。
15分ぐらい待っただろうか。1本の鍵が出来上がった。
「はい。これで大丈夫ですか。」
「とりあえず、家の鍵が開くか、試してみます。」
「レシートと一緒に持ってきてもらえば、1回なら作り直しますから、よろしけばどうぞ。」
「ありがとうございます。」
そうして、一礼してからお店を出た。
「ほい、じゃあ、これを君に預ける。無くしたときには知らないから、なくさないように、自分の持ち物にでもつけておくといい。」
「あ、じゃあ、私もキーケース持ってるし、そこに入れよっと。」
満面の笑み。なんか、幸せそうなオーラが全身に出てるな。
「えへへへ、これで、君と同居出来ることになったね。」
「あのさぁ、別に一緒に生活しようって話だよ。君に限ってそういうことはないと思ってるけど、君の態度次第では、追い出すまであるからね。」
「えええええ、追い出されるの。私。」
「あんまりひどい態度だと、追い出すよ。と言っても、ウチでは、ほぼ家事はしなくていい。いいとこ、洗濯機の面倒だけだ。」
鍵屋さんから、家へ歩いていく道中。
「なんで、洗濯機の面倒だけなの?」
「そうだな。まず、料理はしない。君が出来るか出来ないか、それよりも、二人で好きなお弁当でもコンビニで買ってくれば、安く済む。」
「そういう逃げ方があるのか。なるほどなぁ。」
「次に部屋の掃除だけど、ある程度ゴミは掃除してるし、何より僕らがいられる専有面積が非常に狭い。だから、掃除もマメにはしない。」
「掃除機掛けるのも1年に1回ぐらいなのかな。それはそれで、どうなのかって思うけど。」
「あとは、う~ん、そうだな。お風呂に入るなら、お風呂掃除ぐらいは出来そう?」
「あ、それは大丈夫。」
「一応道具は揃ってるし、今はマジックリンを掛けて、1分もすれば汚れも落ちてくる。難しいことはない。」
「で、洗濯機は?」
「洗濯機に関しては、毎日これから掛けるとして、洗濯乾燥機なので、数時間もすれば、乾燥までやってくれる。君は、それをたたんで、自分のものと僕のものに分ける程度かな。」
「要は、風呂掃除と洗濯物をたたむってことだよね。それぐらいなら、私でも出来るよ。」
「どうする?料理やってみる?」
「う~ん、私、多分料理出来ないんだよなぁ。情けないことに、そこら辺は親に任せっぱなしだったんだ。」
「じゃあ、無理してやることじゃない。もっとも、僕のご飯のセンスだと、3日ぐらいはカレーを食べててもおかしくないから、その辺は注意してほしいかな。」
「そうしたら、私、帰ってくる君を、駅まで迎えに行くよ。それで、ご飯を買えば、いい妻みたいじゃない?」
「どんな時代の奥様だか知らんが、ドラマでもそんな古典的な妻は出てこない。まして、君が迎えに来ても、娘が迎えに来たってことになっちゃうだろ?」
「あ、そういえばそうか。私は妻にはまだなれないのか。」
「まあ、君がどう思ってくれようと、僕は君のことが好きなままだから、君が失望するだけでも、僕はそれとして受け止めるよ。」
「そんなことないから。大丈夫。どんなに部屋が荒れてようとも、私と一緒に暮らして、愛の巣にするんだから。」
「いちいち表現がなんか古いな。もしかして、フジテレビあたりのドラマの再放送とか、午後見てたりしてたんだろ?」
「え、なんで分かったの?すごい。エスパーみたいじゃん。」
「知ってるよ。同じ時代を、高校生として過ごしてたんだから。あの頃はGTOとか、結構好きだったなぁ。」
さて、ようやく我が家に着いた。
「じゃじゃーん。さっき作ってもらった鍵で、君の家の鍵が開くか、テストします。」
「うん、早速、やってみて。」
カチャ、ガチ、カチャーン
「開いたみたい。大成功。」
「いやいや、毎日住むところだよ。しばらくは、これをずっと繰り返して、部屋を出入りしていくんだ。」
ガチャ
「着いた。一人暮らしのオタクの部屋だから、驚くことしかないと思うけど、驚くなよ。」
「その言い訳、全然いいわけになってないよ。お邪魔しまーす。」
「...やっぱり違うところに住みたいな。」
「言うと思った。まあ、しばらくは我慢して、部屋を片付けてから、二人で暮らせるようにすればいいでしょ。」
「う~ん、夏休み、まだ残ってるんでしょ?その間だけ我慢してあげるから、二人で片付けしよ。」
とても片付くとは思えないが、まあ頑張ってみよう。守るものを守るための仕事と考えれば、それで十分すぎる大義にはなっただろう。
「改めまして、これからしばらくご厄介になります。よろしくお願いします。」
良く律儀と褒めてくれるけど、彼女も大概である。十分大人として振る舞うことも出来るだろうに。
「こちらこそ、面倒ばかり掛けるけど、よろしくお願いします。」
大人としての挨拶かな。僕にそうさせたのも、彼女のこの挨拶からだ。やはり、彼女が好きな自分がいるのは、認めざるを得ないようだ。
「ニシシ、少しの間だけ、私を育ててください。オトーサン。」
「努力はするよ。父親として、君を一人前にするまで、そこまでは頑張るよ。」
さて、それじゃあ、どうする?
とりあえず、布団を引くスペースでも、僕の寝床の隣に作ることにしようかな。
「私は何してたらいい?」
「う~ん、iPhoneの充電でもしてれば。その辺に、ケーブルの束があるでしょ。」
「うわ、君ってスマホ何台持ってるの?マジ、結構ありえない台数あるよね。」
「趣味だからしょうがないね。」
「ふぅ~ん。」
どうも、テレビの横にある、フィギュアの棚に興味を持ったらしい。
「男の人ってさ、やっぱり部屋にフィギュアとか飾ってるものなの?」
質問が飛んでくる。流石にアニメ文化の国だ。まあ、その質問もわからんではない。
「みんながみんな、こうやって部屋の一角にフィギュアをおいていることはないんじゃないかな。それに、フィギュアと言っても種類あるしね。」
「君もロボットとか入ってる棚あるしね。コレクション欲がすごいんだ。」
「そうなのかな。知っての通り、たまにフィギュアが届いたりするぐらいには買ってるよ。まあ、それがいいのか悪いのかは別として。」
「ふぅ~ん。」
フィギュアをよく見てる。
「結構可愛いな。」
おっさんみたいな感想になってるな。
「ははは、ちゃんと下着履いてる。そこまでこだわるのか。」
「細かいよねえ。これだけ精巧に作ってあると、確かに飾りたくなるかもね。」
「わかってくれた?」
「そうかもね~。好きになる気はわかった気がする。」
「なんか、でっかいペンギンのぬいぐるみがあるんだけど。」
「ああ、Suicaペンギンね。可愛いでしょ。」
「可愛いって...う~ん、君ってどこで、こんな感じになっちゃったかな。」
「僕がぬいぐるみが好きなのは昔からだよ。UFOキャッチャーで取ったり、自分で買ったりとかね。」
「で、ペンギン?これ、えらくデカいのが3匹もいるんだけど。」
「今となっては入手困難な3匹。でもコイツらに癒やされたい日もあったりしたんだよ。」
「ぎゅーってしてた?」
「そうだね。ぎゅーってしてた。」
「唐突だけどさ、ぬいぐるみ好きな男ってどう思う?」
なんとなく流れで聞いてしまった。
「うん、まあ、そうだなあ。う~ん、傍目から見たら、やっぱりキモチワルって思うかなw」
「笑うんだw まあ、僕もそう思うしね。」
「でも、それは愛着を持って接してる証拠なのかも。さすがに私とぬいぐるみが同等だったらイヤだけど。」
「さすがに君のほうが、ぬいぐるみよりずっと好きだよ。」
「正直でよろしい。もし、ぬいぐるみより下だったらどうしようって思った自分を恥じるわ。」
「ぬいぐるみより下なわけないって知ってるくせに。自分からそう言わせるように仕向けたでしょ?」
「うん、だって、君がぬいぐるみより私が好きって知ってるもん。」
「まったく、ズルい娘だ。」
「今は、君の言葉を支えに生きてると言ってもいいからね。君が好きって言ってくれなかったら、私、どうしようかなって。」
「その割に、僕は好きって言ってもらってないですけど?」
「違うんだな。大好き。君のことが大好きだから。でも、敢えて口に出す必要ないでしょ?」
「まあ、こんな汚い部屋に上がり込んで、寝床を作ってもらってるんだから、大好きなんだろうね。」
ピンポーン
「あ、ごめん。君の荷物だ。ちょっと出て、ハンコ押しといて。」
「ハンコは?」
「靴箱の上にある。」
「はぁーい、今行きます。」
「早いね。もう届いちゃうんだ。」
「これで着るものは大丈夫と。日用品とかはどうする?僕が一緒に行きにくいところもあると思うけど。」
「あとでドラッグストア行こう。そこで、一緒に買ってもらう。」
とりあえず、寝床完成。ま、最悪は、僕と一緒に寝るか、もうちょい大きな布団でも買うか。
「そこが私の寝床?」
「そう。とりあえず、ちょっと年代物だけど、勘弁してね。」
「ううん、全然。それじゃあ、」
と、いきなり服を脱ぎ始める。
「ちょいちょいちょいちょい」
「え、なに。もしかして恥ずかしがってる?」
「当たり前だろう。仮にも、男と女。」
「ええ、別に親子だったら、そういうところは気にしないものじゃないの?」
そうやって迫ってくる下着姿の彼女。
「でも、親だから、体の関係は持てないんだよね。だから、安心して、下着でウロウロしちゃう。
「うん、わかったから、とりあえずTシャツとショートパンツを着ようね。」
「っと、荷物に買って詰めたはずなんだけどなぁ。」
しかし、まじまじと見てるけど、確かに、まだ大人になりきってない感じの体型だったりする。それなりのサイズの胸に、いい形のお尻。
肉体関係がどうのより、理性が保てるのだろうか。あ、でも、そんなことを思えてる時点で、理性は保ててるのか。
「あった。これで大丈夫。」
と、Tシャツとショートパンツを着た。
「見てもいいよ。あ、別に下着もいいけど。なんなら、見るだけなら裸も見ていいぞ。」
あ、それで思い出した。トイレとお風呂の話。
「それで思い出したんだけどさ、この家、ユニットバスなんだよね。」
「ユニットバス?」
「ああ、トイレとお風呂がくっついてるんだ。あと洗面台。」
「え、じゃあ、片方が入っている時、もう一人は入れないってこと?」
「一応シャワーカーテンはあるけど、それ一枚だけ。それで完全防備とまではいかないんじゃないかな。」
「ま、でも、減るものじゃないし、私の裸を偶然見るぐらいなら、別になんとも思わないから、大丈夫だよ。」
「僕が逆に嫌なんだよね。ほら、やっぱり、男のアレを見せたくないじゃない。」
「一応保健体育の授業で習ったけど?」
「まあ、現物は...いや、もうそれなら偶然見られたほうが、いいや。」
「そんなに恥ずかしがるものなのかな。割と女子校時代は、下着になって着替えたりしてたし。」
「あああ、僕の、君に対する清楚イメージが崩れていく。」
「それに、清楚なイメージの子だって、しっかりエッチなことしてたりするんだから、そんなの気にしないの。」
「そういうことじゃないけど、まあ、いいや。」
たくましいな。これなら、下手に僕が心配する必要はないかもしれない。
それから、ドラックストアに行き、日用品を買い、スーパーのお惣菜コーナーでお惣菜を買い、この家で初めて二人で食べる夕飯。
そして、お風呂。まあ、これは特にこれと言った事件もなく。ドライヤーで器用に髪を乾かしていく。でも、やっぱりムラがあるみたいだ。
寝ようと、布団に入った時だった。
「ねぇ、私、本当にこの時代でやっていけるかな?」
「どうしたの?」
「なんか、怖くなってきちゃったの。買い物にも連れて行ってもらって、世の中が本当に変わったんだなって思った。」
「そんなこと、気にするような弱い娘じゃないだろ。君は。」
「ううん、不安でしょうがないの。私はバイトも未経験だし、学歴も今は中卒。そんな感じで、この先、やっていけるのかなって。」
「そうだなぁ。不安なら、不安なままでいいんだ。不安なままで飛び込んでいけばいい。不安も1つ、2つと飛び込んでいけば、徐々に不安は消えていく。」
「君は?やっぱり不安なことある?」
「あるよ。今だって不安でいっぱい。僕が、君を連れて、一緒に暮らそうとしてる。それが正しい選択だったのか?それが不安。」
「私は心強いよ。好きな人が、そばで気にかけてくれる、そんなこと、夢のようだもん。」
「でも、不安を取り除くには、君はまだ若すぎる。そこは、大人に頼っていいところだよ。不安なら、話してくれればいい。解決できるか分からないけど、アドバイスぐらいは出来ると思うんだ。君が僕を頼りにしてくれるなら、そうしてくれるだけで、嬉しいものだよ。」
「そっか。不安も、口に出していいんだ。」
「まあ、ごめん、女性特有の悩みとかは、無理かもしれないけどね。」
「そういうところまで気が回りすぎだぞ。大好き。」
「ありがとう。君が好きでいてくれる限り、僕も好きでいるようにするよ。」
「じゃあ、ひとつ、お願い聞いてもらっていい?」
「何?」
「手を繋いで寝て欲しいの。隣りにいるってわかっていても、繋がっていたい。」
「お安い御用で。」
右手で、左手を握ってあげた。彼女も握り返してくれた。
「あったかいね。」
「そうだね。手を触れ合うっていうのは、案外、安心出来るものなんだね。」
「知らなかったんだ。」
「僕も、知らないことが多い。君に教えてもらうことも、多いかもね。」
「うん、知らないこと、二人で知っていこう。」
「そうだね。それじゃあ、僕は寝るよ。おやすみ。」
「おやすみなさい。大好きだよ。」
今日はこの辺で。おやすみなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます