第3話地球外生命体とは、僕らのことですか?
正直、僕は困惑していた。
まさか、自分が我を忘れるほど魅了されていたものが「血」だとは頭の片隅に考えとしてなかった。
身体がおかしくなっているとはいえ、自分が「血」に対してそれほどまで興奮を覚えるなんて、本当に僕の身体は人間のそれとはかけ離れたものになってしまっているのか。
「おかしい、本当におかしい…。僕は人間だ、人間のはずなのに…」
既に匂いの元を持っていたであろう人影はどこかに行ったようだが、おそらく僕はもうこの匂いを忘れる事は出来ないかもしれない。
とりあえず、これ以上この場にいたらまずい…。僕もいつまたおかしくなるかも分からないが、そもそも血のあとが地面に点在している場所に人がいる光景を警察などにでも見られたらありもしない罪を疑われるおそれがある。
僕は誰にも見られないよう急いで森の中を脱出した。
一心不乱に誰もいない空気だけが済んだ道路を走り続け、疲れで足元がふらつき頭から突っ込んだゴミ捨て場の中で、僕はようやく一息ついた。
ゴミ出しの曜日を守らない誰かが捨てた大量のゴミにまみれながら空を仰ぐと、何故かいつもとは違う、一面に星が散りばめられた美しい星空が広がっていた。
「はは…星空ってこんなにもきれいだったんだ」
気づくと目から涙が溢れていた。
確かに人間の母から生まれたはずなのに、何故僕だけがこんな人生を歩まないと行けないんだ。
もはや自暴自棄になりかけていた。
その時、自分が居るゴミ捨て場の反対方向から、人の足音らしき音がこちらに近づきてくるのが分かった。
目を凝らしてよく見てみると、それは怪我をしているのか脚を引きずりながら走るボロボロの服を着たホームレスらしき中年の男の姿だった。
太ももの辺りを手で抑えながら執拗に後ろを気にする男。
なにかから逃げているのか…?
すると、突然あの匂いが猛烈に鼻の奥を刺激する。
怪我をしている男からその匂いはしているのか、最初はそう思っていた。
だが、それはこちらに近づいてくる男よりも遥か後ろから強く臭う。
嫌な予感が頭を過ぎった。
「もしかして…森にいたあの誰かが…居る?」
そう予想すると、今こちらに向かっている怪我をしているホームレスの男が後ろを気にしながら走っているのも納得が行く。
あの誰かから狙われて、逃げているんだ。
{やめろ、来るな…!}男の弱々しい声が夜道に寂しくこだまする。
その声と同時にあの匂いが一気に強くなる。
怖くなった僕は思わず自分が身を任せている大量のゴミ袋を隠れ蓑にして、目の前の恐怖が過ぎ去るのをただ信じるほかなかった。
段々と足音とともに近くなる声。男の弱々しい声とともに聞こえてくる人間とは思えない野太く低い声。恐怖からか神経も過敏になり、自然と聴覚も良くなっている。
{やめてくれ、来ないでくれ…頼む!嫌だ…!}
「$%%Y'&'%&$$%&$&$&…」
言語にも聞こえない言葉が聞こえた瞬間、何かが潰れるような鈍い音が夜の仄暗い道に静かに響いた。
僕はその場でただ震えるだけでどうすることも出来なかった。
ただすぐ近くで何者かが何かをすする音が聞こえる。
これ以上聞きたくない。必死に耳を塞ぎ、事態が終息するのをじっと待つ。
無音の中、自分の心臓の音にだけ集中し、約5分後…。
耳を澄ますが何も聞こえない。ようやく出られると思い、被っていたゴミ袋を払い除けようとすると手をのばす。
すると、突然とてつもない寒気が背中を走る。
「みてた…だろ…?」
その声を聞いた途端、僕は意識を失った。
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