35話 救世主天使 茶子と翠 編
◇◆◇
「翠、やっぱり彼氏じゃなかった。佐伯くん彼氏のフリしてたんだ。
本当によかったね」
「うん。最後まで聞いててよかった。途中、ほんとうに心臓が飛び出すかと思ったよ」
「でも流川さんにはまだ気がありそうね。付き合ってないことはわかったけど
ライバルには変わりないわ」
「うん。私、頑張る。絶対に佐伯くんは私が付き合うの。部外者からは私が佐伯くんを守るの」
「そうそう。ここまで来たらわたしも応援するわ。今度、桃と私で翠にサプライズなお知らせをしてあげるから楽しみに待っててね」
「なにそれ??でも緋ちゃんと桃ちゃんのことだからいいお知らせだね。きっと。
でも緋ちゃんの王子様がいなくなって残念だね」
「うん、仕方ないよ。でも流川さんとつながりがあるってことはわかったから
そこから探してみるよ。お互い進展があったってことで今日は良しとしましょう」
「うん。じゃあ、最後まで二人を見届けて帰ろっか」
◇◆◇
「うぉ〜〜〜!!僕の水面に手を出すなぁ〜」
オタクっぽい男が1人、手にはナイフを持ち、こちらに向かって叫びながら走ってくる。
その時、誰よりも早く動いたのは、1人の女性だった。
(狙いは僕だ!流川さんじゃない)
とっさの出来事に僕は対応できない。
「危ない!佐伯くん!」
七瀬さんが遠くから叫ぶ。
(刺される!!)
そう思った瞬間、オタクの男が目の前から消える。なんと変装した女性がそのオタクを横から突き飛ばしたのだ。
ガシャンッ
「痛いっ!」
その女性もオタクと一緒にテーブルに突っ込む。女性の手からは血が出ている。
ナイフで切れていた。
「えっ!?長谷川さん?」
飛び込んだ衝撃でキャップとサングラスが吹き飛び、マスクも外れていた。
僕は衝撃のあまり固まってしまった。
「く、くそ〜!水面を守るのは俺だ〜!」
オタクは目の前に落ちたナイフを拾い、再び僕を襲おうとする。
「ダメ〜!!」
今度は七瀬さんが男を横から突き飛ばす。
オタクは再び隣のテーブルに弾き飛ばされる。
七瀬さんは突き飛ばした衝撃でその場に転がり転ぶ。
「な、七瀬さん!?なんで?」
長谷川さんに、七瀬さんの登場に僕は頭が混乱する。
「佐伯くん!ナイフ!!」
今度は離れた位置から白木 緋さんの叫び声が聞こえる。
「え!?生徒会長?」
「ナイフ!!!」
もう一度叫ぶ生徒会長に僕はハッと気づく。
我に返り、その場でできる処理を最速で考え続ける。
「く、くそ〜!」
オタクが身体を起こそうとする。
僕はオタクの近くに落ちているナイフを蹴り払う。そしてオタクの顎に向かって拳を繰り出す。
ガフッ
オタクはそのまま気を失った。
しかし僕はすぐに身体をオタクに絡ませ、腕十字ひしぎでさらに動けないように固定する。
「長谷川さん!まずは止血だ。流川さん、俺のカバンの中のタオルでその女性の腕を縛って止血して。白木さんは七瀬さんの手当てを。店員さん!救急車と警察に電話を。それとロープかガムテープがあればすぐに持ってきて」
僕はそう言いながらオタクの男の腕を締め上げ動けないように固定する。
もうすでに周りは野次馬だらけだ。
「七瀬さんは大丈夫。打ち身程度です」
緋さんから安堵の声が聞こえてくる。
「佐伯くん、この人の出血もそんなにひどくないよ。びっくりして気を失っているみたいだけど大丈夫そう」
流川さんも迅速に対応してくれたみたいだ。
「よかったぁ。七瀬さんも長谷川さんも命にかかわらなくて」
「あ、あの。ガムテープです」
「ありがとうございます。そこの柱に綴りつけます」
僕はオタクを柱にくくりつけ動けないようにした。
「佐伯くんだよね?佐伯くんでいいんだよね?」生徒会長が恐る恐る聞いてくる。
「俺は佐伯に決まってるじゃん。どうしたの?白木さん」
「いや、今までの佐伯くんと全く違って、人が変わったかのように感じちゃったから」
(普段モブキャラが急に男前な対応するとめちゃくちゃカッコよく見えちゃう)
(しまった!突発的な出来事で俺の時の動きや言葉遣いになってしまった)
「緋ちゃん、佐伯くんはかっこいい人なの。これが本当の佐伯くんなんだよ。わたしは知ってたけどね。先に好きになったのはわたしだからね」
七瀬さんは先程の事件のことはもう忘れてしまったかのように何故か自慢げに僕のことを語ってくれている。
「長谷川さん、七瀬さん、助けてくれてありがとう。2人がいなかったら僕は刺されていたかもしれない。本当にありがとう」
「うん。佐伯くんが無事でよかったです」
七瀬さんが満遍の笑みで答えてくれる。
ピーポーピーポー
救急車のサイレンが聞こえてきた。
「長谷川さんと七瀬さんは念のため救急車に乗って病院に行こう。僕が付き添うよ。流川さんと白木さんは警察に報告してもらっていい?」
「うん、わかった」
「そうね。七瀬さんと長谷川さんをよろしくね」
(紫尊くん、君が刺されるかもよって言ってたこと本当にそうなったよ。本当に君は預言者だね)
なぜかこんな時に僕は紫尊くんのことを思い出してしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あとがき
急な展開にハラハラしていただけたら嬉しいです。
楽しかったと思われた方はぜひ
☆ポイント評価を
よろしくお願いします♪
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