17話 巨乳スナイパー 長谷川 茶子 編

今日はなぜか地味子ちゃんに絡まれた挙句、僕の正体のことも仄めかされて心が不安定な1日だった。そういえば紫尊くんもバカなことを言っていた。七瀬さんとは帰りも別々だ。だからこの不安定な気持ちを和らげるために久しぶりに夜の街にくりだそう。もちろん《俺》の姿で。

久しぶりに1人の時間を楽しんで息抜きになった。これが俺のマイ時間だぁ、とルンルンで白木荘に帰る。《僕》に変身するのは面倒なので《俺》のまま部屋に帰る。


ピカッ


(まただ!誰かいる)

俺は部屋に入り、ばれないように向かいのアパートを偵察する。やはり誰かが向かいのアパートのベランダにいるようだ。


(やっぱり動いている。あれは双眼鏡だ)


完全に覗き魔スナイパーを視界にとらえた。

さあどうする。相手のアパートのインターホンを鳴らしたところで居留守を使われるだけだ。なかなか手が思い浮かばない。


(手も思い浮かばないから、暇つぶしに紫尊くんの提案通りにスナイパーをからかってみるか)


俺は画用紙に大小のCマークを描きまくった。

画用紙を持ってベランダに出た瞬間、相手はササッと隠れる。それも織り込みづみだ。

俺はベランダで涼んでいる素振りを取り続ける。


(引っかかった!)


チラッとスナイパーの方を見ると双眼鏡と頭が出ているのが見える。こちらを見ているようだ。俺はちょっとの間、夜の涼しさを堪能した。そしておもむろに足元に置いていた画用紙を持ち上げてスナイパーの方に見せる。

スナイパーは一瞬隠れようとしたが俺の顔がスナイパーの方を見なかったおかげでまた定位置に戻りこちらを見ている。


アイドルなら1つは持っている自前のペンライト。それを光らせ、視力検査のCマーク(視力0.1ぐらいの大きさ)を指してスナイパーにみせる。

スナイパーに動きはない。

次は視力0.2だ。動きはない。

0.3、0.4...

俺のペンライトは徐々にハードルが上がっていく。

奇跡が起こったのは0.5からだった。

明らかにスナイパーの顔と双眼鏡がベランダの腰壁から乗り出している。そして片手には双眼鏡、もう片手には視力検査に合わせてどちらかの方向を指している指がある。


(のってきた!紫尊くん、天才だ。まさかネタのつもりが本当にこんなことになるなんて)


視力1.0の時には完全に首を傾げながら何度も指の方向を変えて真剣に悩んでいる。

こういう展開だとなぜか覗かれてたことが怖いというより今はもうスナイパーに愛嬌さえ感じてしまう。


視力1.2の時にはついにスナイパーは双眼鏡を外して頭をうなだれている。あれはギブアップ宣言だ。


こんなにも上手くいくなんて俺は悪ノリを継続してしまう。

俺は一旦部屋の中に戻る。うなだれていたスナイパーはすぐに反応して即座に双眼鏡を身につけてこちらを伺う。


俺はちょっと意地悪をしてしまう。それは放置プレイだ。スナイパーがどれくらい見続けるのか気になってしまう。カーテンの真ん中ではなく、端からこそっと覗き続けること1時間、スナイパーは諦めない。俺の部屋を見続けているようだ。

流石に痺れを切らしたのは俺の方だ。


何か変化が欲しい。俺はに変身して外に出てみる。もちろん、スナイパーの顔は見ないようにしている。横目で見るとしっかりと両手で双眼鏡を持って覗き込んでいる。

の方を見るとモブキャラ過ぎて萎えるだろう)

そしてすかさず携帯番号を書いた画用紙を相手に向けて持ち上げる。

もう隠しはしない、スナイパーをガン見だ。


スナイパーはそそくさと室内に戻った。

(あれ?やっぱりガン見したのが不味かったのかな?)

しかし、一瞬でベランダに戻ってくる。

双眼鏡とペンを持ち替えながら何かに書き記している。

(なるほど、メモに取るために紙とペンを取って来たのか。なんて真面目なやつなんだ)

書き終えたのか、また室内に戻って行った。


……………………


………………


…………


プルル、プルル、プルル、プルル


僕の携帯電話が室内で鳴り始めたのが聞こえてくる。


(来た!紫尊くんの言う通りだ。もしかしたら彼は天才なんじゃないか?)



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


あとがき


紫尊くんのおかげでスナイパーが見事に引っかかりました!

このあとスナイパーと対面で会うのでしょうか?


お楽しみに。


それと☆レビューまだの方はよろしくお願いします♪

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