14話 純愛アイドル 七瀬 翠 編

学校のあの塀をよじ登り侵入する。

校舎に侵入しようにもどこの窓も扉も開いていない。施錠されているのは当たり前のことだが校舎に入れなくてなぜか悔しい。どこか入れないか再度校舎をぐるっと見て回る。


(あ、あった!)


少し高い位置だが引き違いの小窓が少し空いている。僕は小窓に手を掛けてよじ登る。誰かが見たら完全に泥棒にしか見えないだろう。


(なんで今日はこんなによじ登りdayなんだろう。学校の塀、白木荘のベランダ、そして学校の窓.......)


小窓に無理やり体を突っ込み、なんとか侵入する。


(あ、トイレに出た)


僕が侵入した先は僕が抜け出したあのトイレだった。まるで神様にもう一度やり直せと言われているかのようだ。


ぱっ、ぱっ、ぱっ、

服についた汚れをはたき下ろす。


キーンコーンカーンコーン

学校の鐘が0時を告げた。


(やっぱりもう一度やり直せと言われてるようだ。七瀬さんを見つけたらちゃんと謝ろう。よし、心を改めてここから再スタートだ)


ガラガラガラ

僕はトイレの扉を開けた。


「え!?七瀬さん........」


「今日も会えたね♡2日連続だね」

「なんで、ここに!?帰らなかったの!」

「だって佐伯くんがトイレに入ってたから」

「いや、抜け出してるかもしれないじゃん」

「抜け出してもちゃんといま、トイレから出て来てくれたよ。待ったてよかった。だって夜中の学校に2人きりなんてラブコメの主人公とヒロインみたい♡」


僕は七瀬さんの純粋さと屈託のない笑顔が愛おしく感じてしまった。無意識だ、無意識に動いてしまった。


ぎゅっ


僕は気付いたら七瀬さんを抱きしめていた。

七瀬さんの手が僕の背中にも回る。


「待ってたご褒美は大きいね」

「ごめん、待たせちゃって。ごめん」

「じゃあ、いつでも会えるようにお付き合いする?」


…… …… ……


「ん〜、それとこれとは別で」

僕は七瀬さんから離れて距離を置く。

さっきは七瀬さんの純粋さに無意識に動いてしまったが冷静に考えるとそれはそれで怖い。

「じゃあ、わたしのこと好きになるようにアプローチはしていい?」

「うん、まあ、それぐらいなら」

「じゃあ、約束通り一緒にに帰ろっ」


僕は七瀬さんを白木荘まで送ってあげた。

「帰ってきた!翠、こんな時間までどこ行ってたの?」

「もう、すごく心配したんだよ。あちこち探し回ったのに。なんで携帯に出ないの?」

緋さんは安堵の表情、桃ちゃんは心配だったことを露わにしていた。

「ごめんね、デート中だったから帰ってくるの遅くなっちゃった。それにデート中は携帯に出るのも佐伯くんに失礼かなーと思って」

「じゃあ、僕はこれで。家はまだまだ向こうだから帰るね」

「待って、佐伯くん」

引き止める七瀬さん。


(まさか、僕の家まで一緒に帰るとか言い出したりするのか!?)


「迎えに来てくれてありがとね。わたしの王子様」


ちゅっ


温かい感触が僕の頬に伝わる。

ほっぺにキスされた。


緋さんも桃さんも口を開けてポカーンとコチラを見ている。もちろん僕もまさかの展開に動けない。


「気をつけて帰ってね♡」

「う、うん、じゃあ、さようなら」


桃さんが小さく僕に向かって親指を立てている。それはキスをされたからではない。僕がこの白木荘の住人であることをバラさずにここを出て行くことにGood jobと反応したのだろう。


外に出た僕は裏手に周り、またまた壁をよじ登るのであった。


(今日の最後の締めもまたよじ登り............か)


キラッ


(光った。やっぱりのぞかれている。はぁ〜、まだ何かあるの?いや、今日はもういいや、疲れた。寝よう...........)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


あとがき


翠ちゃんのかわいさは伝わりましたか?


次からは新しい女の子が登場です♪

お楽しみに。

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