13話 行方不明者 七瀬 翠 編
俺は念には念を入れて白木荘の共同玄関からは入らず、裏手に周り、壁をよじ登ってベランダから自分の部屋に侵入する。
ベランダによじ登っている時に隣のアパートの住人にその姿を見られているような気がした。今日の俺は視線に敏感だ。なぜなら七瀬さん、緋さん、桃さんと3度も女子に見られ続けたからだ。隣のアパートをもう一度見てみる。
ササッ
やはり一瞬、隣のアパートの住人の頭が隠れたように見えた。やっぱり見られている気がする。
でも何も言ってこないんだ。やっぱり気のせいか。そうか!2階のベランダによじ登っているから空き巣とかに思われたのかもしれない。まあ、でも制服だから大丈夫か。
「ふぅ〜〜、本当にこれでホッとできる」
部屋の中に入った俺はようやく生きた心地がした。今日はもう誰とも会いたくない。
このまま籠城だ。
………………
…………
……
気付いたら僕は寝てしまっていた。
起きたらもう22時。
白木荘の住人、緋、桃、翠に絶対にばれないように共同トイレにそーっと向かう。
階段の下から声が聞こえてくる。
「桃、やっぱり翠が帰ってきてない。こんな時間なのに帰ってないって。もしかして佐伯くんと一緒にいるとか?あの子なら好きな人と一緒にいるなら時間なんて忘れてるだろうし」
「佐伯くんには絶対に翠ちゃんに捕まるなってクギを刺しといたんだよ。佐伯くんがもう帰っているなら翠ちゃんはいまも1人のままだから危険かも。まずは佐伯くんの部屋にいって佐伯くんがいるかどうか確認しよう、お姉ちゃん」
コンコンコン
「佐伯くん、部屋にいますか?」
話が聞こえてきた僕はトイレには行けず、部屋に戻っていた。
「はい、います。何かありましたか?」
「いや、いるなら大丈夫です。翠とは絶対に会わないようによろしくお願いします」
「はい、わかりました」
コツコツコツコツ、2人が階段を降りていく音が聞こえる。
(七瀬さんが白木荘に帰って来てない?まさか!あの子は僕がいなくなっておかしくなってどこかに行ってしまったのか?ありえる、あの子ならありえる)
僕にも責任がある。いや、僕の責任だ。
探さなきゃ、見つけなきゃ。
僕は急いで外に出ようとする。
「おっと、玄関はまずかった」
部屋の扉に手を掛けたが踏みとどまる。
ベランダから外に抜け出す。
ピカッ
向かいのアパートで何かが光る。
その瞬間に人影が動いたのが目についた。
(やっぱり見られてる?まさか!七瀬さん?
あの子ならやりかねない)
部屋の位置はわかる。僕はまず隣のアパートに突撃した。
コンコンコン
人影がいた部屋のドアをノックする。
誰かがいる気配はない。
コンコンコンコン
反応はない。
(勘違いかなぁ〜)
「七瀬さーん、僕ですよ〜、いますかぁ〜」
やっぱり反応がない。諦めてその場を後にする。七瀬さんを探しに外に出たのはいいが七瀬さんの立ち寄りそうなところがまったく検討つかない。
とりあえずコンビニやカラオケ店を見て回る。
時刻はもうすでに23時30分を過ぎている。
探すあてもない僕は途方に暮れた。
最後に七瀬さんと別れた、いや、置きざりにしたのは学校のトイレだ。いるはずもないとわかりながらも僕の足は学校に向かっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あとがき
翠ちゃんは何しているでしょうか?
これが佐伯くんの心をほんの少し揺れ動かします。ぜひお楽しみに。
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