12話 サンドイッチ姉妹 白木緋・桃 編

「お願い、待って!」


聞こえてくる声の質が七瀬さんじゃない。

生徒会長の白木 緋さんだ。


しまった。今はだった。


一難去ってまた一難。七瀬さんの後は白木 緋さんだった。さらに校門には緋さんを待っている桃さんが立っているではないか。

(やばい、挟まれた。の状態では不味すぎる。どうする、俺)


▽▼▽


前後を挟まれたらもう横しかない。

ラブコメの主人公なら一度はするであろう、学校の塀をよじ登っての登下校。もうこれしかない。俺は塀に向かって猛ダッシュ。


トントンと塀を駆け上り、登り切った頂上で少し後ろを振り返ってしまった。追いかけてくる生徒会長と目が合う。とっさのことにアイドルの職業病が発動する。俺は追っかけのファンを相手にいつもしているようにウインクをしてしまった。そして反対側に飛び降りた。


(かっこいい〜、やば〜い。ウインクなんてされたらキュンキュンしちゃう。それも学校の塀を飛び越えるなんて学園ドラマのワンシーンみたい。わたしは生徒会長、彼はたまにしか現れないイケメン王子様。これってやっぱり運命なのかしら)


緋はここ最近かなりテンションが下がっていた。なぜならこの1週間、運命の人の情報が一切入らなかったからだ。しかしいま、その見つからなかった運命の人が急に現れたのだ。不安が一気に解消され緋のボルテージが一気に上昇する。


「桃〜!いたの、いたの、わたしの運命の人が」

話したくて仕方ない緋は校門で待ってる桃に駆け寄りながら話しかける。


「え?いたの?よかったじゃん。それでいまその人はどこにいるの?」

「それがウインクしてどっかに飛んでいっちゃったの」

「ウインクして飛んだの?その人ってスーパーマン?」

「わたしにとってはスーパーマンかも。もうどっかいっちゃったけど」

「おねーちゃん、その話は後で。まずは翠ちゃんのことだよ。白木荘でのあらゆる事態に備えておかなきゃ」

「たしかに、浮かれてる場合じゃないわね。帰りましょ」

「あ、お姉ちゃん、でも今日の調理実習でキャンプ用の魔法の調味料と粉がお姉ちゃんに破棄されたから買って帰りたいの」

「こんな時にもう。でもわたしも悪い気がする。いいわ、わたしが先に帰ってるから」

「ありがと〜、さすがお姉ちゃん、桃のことよくわかってるぅ」


▽▼▽


(ふぅ、さすがに追ってはこないね。一休み一休み、でも今日の夜からは外には出づらいな。晩御飯は買い溜めしといたほうがよさそうだ。桃ちゃんに調味料を分けてもらったし、ついでにそれも買っとくか。次会った時に新品をまるまるそれとなくお返ししてあげよう)


▽▼▽


(あ、あった、あった。この辺だとここでしか売ってないんだよね。魔法の粉は。ラス1だ。ラッキー)


俺が手を伸ばすとパチッと俺の手が弾かれる。

「ごめんなさい、大丈夫ですか?」

弾いた本人が慌てて謝ってきた。

「大丈夫ですよ、あなたも大丈夫ですか?」

隣の女性を見たらなんと桃さんではないか。

「蒼乃くん!え、え、蒼乃くんもここ御用達なの?」

桃ちゃんは俺の肩をポンポンと叩きながらテンパっている。

(しまった、今度は桃ちゃんとでくわした。本当に厄日だ。寄り道せずに帰るべきだった。いや、そんなことよりここから早く離れなければ。万が一ここに生徒会長がいたらそれこそ終わってしまう)

「桃ちゃん、奇遇だね。ラス1だし、桃ちゃんどうぞ」

「いいよ、蒼乃くんが持って帰って。それか桃が買って、2人でシェアしちゃうとか?2人で1つのものシェアするなんてなんかカップルみたいだね。それか蒼乃くんが持って帰って桃が借りに行ってもいいかも。なんか通い妻的な......

まずは蒼乃くんの住所きかなきゃ。それか........」

桃ちゃんは俺に出会って完全にあっちの世界に行ってしまっている。1人で乙女になって妄想が広がり続けている。

桃ちゃんが妄想している隙にそーっとその場から脱出する。そして猛ダッシュ。


(本当に今日はなんて日だ。でも追いかけられ、でも追いかけられ、もう逃げ場がない。大人しく部屋で閉じ籠ろう。それしかない)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


あとがき


このあと、翠ちゃんと白木荘での問題が発生するのでしょうか?

次回から翠ちゃんが再登場です♪


読者のみなさん、

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