第13話 「すみませんでしたぁぁぁ!」
クリボが入ってきてわたしたちは一気に緊張した。
じり、と壱也くんが距離を取る。
「池へ誘い込もう。天真、裏口はあるか?」
「……」
「天真?」
何か考え込むようにしていた天真くんは、呼ばれて顔を上げた。
「壊すんじゃなくて。作り直しちゃうのはどうだろ?」
「え?」
「クリボは君が作ったんだろ? その、ぷろ……ぷろろ……プロローグして」
「プログラムって言いたいのか!?」
「それ!」
相変わらずカタカナが苦手な天真くん。
でも、わたしには思いがけない言葉で目が丸くなっちゃった。
クリボを、作り直す?
シロはふむとうなずいた。
「なるほどな。きっと今のクリボはおかしくなっている状況だ。直せば、もしかしたら……」
「そんなこと、できるの?」
「つくも神として人格が出てきてるから、すんなり言うことを聞いてくれるとは限らない。それでも元はプログラムされた機械なんだ。新たにプログラムされたら、『意思』と『指示』の矛盾で動きに迷いが出る可能性はあると思うぜ」
「そう。そして少しでも動きが止められたら、彩衣なら……できるだろ?」
「……! うん!」
わたしは大きくうなずいた。
もうカメラで妖怪を撮りたくないなんて言ってる場合じゃない。
それでクリボが戻るなら。
壱也くんの努力が消えてしまわないなら……!
「壱也くんは!? できる!?」
「……バグを見つけてシステムコードを書きかえるんだな? 十分……いや、五分くれ!」
さけんだ壱也くんはカバンからノートパソコンを取り出した。
USBを差し込んで、キーボードをたたきはじめる!
正直壱也くんが言ってることは半分もわからないけど、でも、すごく頼もしい。
「よし、彩衣。オレたちは鬼ごっこだ」
「うん! ……クリボ、こっち!」
天真くんとわたしは顔を見合わせて、うなずき合った。
壱也くんがプログラミングし直すまでの、時間稼ぎだ!
わたしたちはスルリとクリボの横を走り抜けて外に飛び出す。
わたしたちは追いつかれないようにお店の周りをあちこち逃げ回った。
「彩衣、手!」
「わ……!」
追いつかれそうになったわたしに、天真くんが手を伸ばしてくる。
その手をつかんだら、ぐんと引っ張られて。
同時に天真くんの背中から、バサッと大きな翼が広がった。
大きく前の方に飛んで、クリボと距離が取れたら、まずは天真くんが着地。
わたしの足が地面につく前に、くるんと回転。
な、なんかダンスみたいだった!
ガクン、とクリボが大きくよろめいた。
「イラナイ……ゴ、ミ……」
「――彩衣! 今だ!」
「っ、うん!」
壱也くんのさけびが聞こえて、わたしは気持ちを切り替えた。
スマホをかまえて、のぞき込む。
今なら――ブレずに、撮れる!
――リィィン……
鈴の音が響き渡ると、クリボから黒い影が浮き出て、かき消えていく。
そして。
しばらく呆然とした様子のクリボは、ハッと我に返ったかと思うと。
「すみませんでしたぁぁぁ!」
わたしたちに向かって、それはそれはキレイな土下座をしてみせた。
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