count2 アイドル参戦?

 望美ちゃんと出会って、一週間経った。その間に望美ちゃんと情報交換をしたり、例の友達を探したりした。


 この一週間で分かったことは、二つある。まず、一つ目は望美ちゃんの能力だ。


 望美ちゃんの能力は周囲にいる人間に自分が見えている状況を見せることができる能力と自分以外の能力者の居場所を特定する能力だ。


 一つ目の能力は、最初に会った時に見せてくれた写真で撮った顔を見せる能力だ。この能力は、自分が見たものしか見せられないという条件があるが、これにより探しやすくなった。


 二つ目の能力は、主に友達探し用っぽい能力なのだが、これがどうにも当たり外れがひどいのか、当たらない。毎度の如く、すれ違っているはずなのに顔が見えなかったり、急いで移動しているのか全く追いつけない子がいるので、あまりにも不便な能力だ。


 次に望美ちゃんの所在についてだ。この子の両親が世界旅行中で、お姉ちゃんが友達の家に遊びに行ってくるからしばらく帰ってくるつもりがないと言い、望美ちゃんを無理やり押し付けていったという設定で、なんとかうまく誤魔化してきた。



 昨日までにうちに泊まったり、夕奈の家に行ったりしてきた。


 今日は、夕奈の家で望美ちゃんが泊まり、今、私とトライアングルというスマホアプリで話している。


 夕奈:『今日もいなかったね』

 七奈:『そうだね。早くに捕まえられると思ってたのに、甘かったのかな』

 夕奈:『もう一度、特徴を見直さない?』

 七奈:『うん』

 夕奈:『確か、アホ毛があって、望美ちゃんと同じくらいだっけ?』

 七奈:『そうだよね、望美ちゃん?』

 望美:『うん』

 夕奈:『にしては、移動しすぎじゃない? 小学生でどんだけ移動してるのよ。よほどの金持ちならまだ分かるけど。すれ違っているはずなのにその子が見つからないってどういうこと?』


 そうなんだよなぁ。何度か、私たちはその子とすれ違っているはずなのに、一向に見つからない。


 夕奈:『そうなると、別人になっているかも...』


 夕奈が一つ思いついたことを話す。


 七奈:『どういうこと?』

 夕奈:『つまり顔の形、体の体型、髪の色の三つすべてが変えられていたら、見つけるのは困難になる』


 ありえなくはない話ではないのか、望美と同じ宇宙人だし。でも、なんのために?


 夕奈:『望美ちゃん、その子の能力ってわかる?』

 望美:『確か、〈変身〉の能力だったと思う。』


 夕奈と交代交代でスマホを使ってるらしく、少し返信が遅れる。


 七奈:『それじゃあ、探すのは無理じゃない?』

 望美:『無理じゃないよ、あの子にはある特徴があるもん』

 七奈:『特徴?』

 望美:『とんでもなく長いアホ毛がある』

 七奈:『それはそうなんだけど、あれは変わらないの?』

 望美:『あのアホ毛だけはどうにもできないから』


 あんなバカ長くていつもハートのアホ毛が特徴の子ならネットとかで話題になりそうなレベルなんだけどな。いや、待って。そういうことかな。あれなら確かに隠すことができる。でも、どこにいるのかまでは分からない。


『ねぇ、もしかしたらだけど…』


 とある可能性について夕奈と望美に話す。


 夕奈:『確かにそれなら、ありえなくはないかもしれないけど、どうやって探すの?』

 七奈:『今度、隣町でそれのイベントがあるみたいなんだけど、そこで会えるかもしれない。望美ちゃん、どうかな?』

 夕奈:『もう寝ちゃったみたい』


 そっか、年は小学3年生と変わらないからないもんね。


 七奈:『この続きはまた明日話そ』

 夕奈:『うん、そうだね』

 七奈:『おやすみ、夕奈』

 夕奈:『おやすみ、七奈』



 No.2 count1


 次の日の話し合いの結果、そのイベントに行くことになった。それから一週間後、駅前で待ち合わせをした。


「待った?」


 ベンチに座って、スマホを見ている夕奈に近寄る。今日の夕奈の格好は、肩出しの白のワンピースだ。そして、私の格好はというと、半袖Tシャツにジーンズという歩きやすい格好だ。


「ううん、時間ぴったし」

「相変わらず、早いね。30分ぐらい前には来てたでしょ?」

「今日は、10分前に来た」


 ほんとかなぁ。望美ちゃんに聞いてみよう。望美ちゃんの格好は、夕奈と同じく、白のワンピースで、こちらは、肩を出していない。頭には、麦わら帽子をかぶっている。かわいい。


「望美ちゃん、夕奈お姉ちゃんが言ってることってほんと?」

「うん! 早く七奈お姉ちゃんが来ないかなぁってずっと言ってた」


 やっぱり、早く来いって思ってるじゃん。


「そんな話してないでとっとと行くよ!」


 そう言って、夕奈は無理やり話を切り、顔を赤くして、靴の音を大きくしながら駅のホームへ早歩きしていく。


「「はーい」」


 望美ちゃんと一緒に返事をして、夕奈を追いかける。





「着いたー!」


 望美ちゃんが改札を通り過ぎ、拳を空に伸ばす。


 全員で切符を買い、電車に乗った。途中、望美ちゃんが初めて電車に乗るので騒ぐかと思ったが、そんなことはなく、ニコニコしながら足をぶらぶらさせていただけだった。どうやらだんだんこの環境に慣れてきているみたい。


「ふぅ、案外近くて助かったね」

「遠かったら、バスで行く羽目になってたかも」


 人混みの少ない改札を通りながら、夕奈と会話する。目的の場所は、駅前の信号を渡ったすぐそばにあった。


「どこから見てみる?」


 信号を渡り、近くに置いてあった地図の看板を見て、夕奈たちと相談する。


「とりあえず、端から見てみよ」

「うん、分かった! じゃあ、行ってみよー!」


 望美ちゃんの掛け声に合わせて、見に行こうとした。


 その時だった。


「いえーい、みんないくよー!」

「うおおおおおおおおおおおおおお」


 ものすごい叫び声がとどろいた。


「近くに行ってみようか?」


 二人に聞いてみる。


「うん!」

「行ってみよ」


 だいぶ近くに寄ったけど、人が多くてなかなか見えない。周りにはペンライトを八本持ちしている人や全身グッズまみれの人がいた。見えないのか、望美ちゃんがぴょんぴょん跳ねている。


「少し高いところから見てみよっか」


 すぐ近くにあった高台を目指し、歩く。


「望美ちゃん、どう? ここなら見える?」

「うん! 見える!」


 望美ちゃんが手すりを掴み、はしゃいでいる。私も歌っているアイドルの方を見る。


「次の曲はー」


 あれ? 今、ちらっと一瞬見えたけど、例のアホ毛じゃない?


「いくよ、せーの」


 やっぱりだ。まさか当てずっぽうで言ったにもかかわらず、本当にいた。ターンした時に、ハートのアホ毛だったので間違いない。この人だ。まさか、コスプレイヤーじゃなくてアイドルだったとは。


 それにしても、ものすごい盛り上がり方だ。

 

「そっちのみなさんも手を上げてー」

「はい!はい!はい!」


 コスプレ大会ってこういうこともするの? あ、こっち向いた。すごいニコニコしながら踊りに混ぜてこっちにすごく手を振ってる。


 ――ライブ終了後


「あれ、私たちって何見に来たんだっけ?」


 夕奈が質問してくる。


「コスプレイヤーの中に望美ちゃんが言ってた特徴にそっくりな子がいるからって来てみたけど」

「うん」

「まさか、コスプレイヤーじゃなくてアイドルとして出ているなんて」


 予想外だった。どうりで見つからないはずだ。それに望美ちゃんとは違って、体大きいし。


「どうする? 会いに行ってみる?」


 そうだなぁ。


「ステージ裏に潜り込むわけにもいかないし、出てきたところで話を聞いてみよう」

「聞けるかなぁ」


 正直、私も自信がない。だが――


「聞けたらラッキーだと思って、チャレンジ精神で行ってみようっ! 望美ちゃんもそれでいい?」


 望美ちゃんの方を見る。望美ちゃんは、口を開けて、固まってしまい、会話に入ってこれていなかった。


「望美ちゃー」


望美ちゃんに呼びかけとした――


「そこの方々、少しよろしいでしょうか?」


 突然、後ろからスタッフが声をかけられ、体がビクッとしてしまう。


「は、はいなんでしょうか?」


 声が裏返ってしまいそうになるのをなんとか耐える。

 

 何かやってしまっただろうか? ここに来たばかりだし、そんなはずはないか。もしかして、有料ライブでお金が必要だったとか!? でも、パンフレットにはそんなこと書いてなかったし、なんだろう?


「鳥様がお呼びです。舞台裏まで来ていただけないでしょうか?」


 考えていたのとは違った。鳥様ってさっき歌ってたアイドルの人の名前かな?


「鳥様って先程歌っていたアイドルの方ですか?」


 一応質問しておく。


「はい。そちらのお嬢さんと一緒に来て欲しいとのことです」


 やっぱりこっちを見つけてたんだ。


「行ってみる?」


 夕奈が聞いてくる。


 せっかく会えるチャンス貰えたのだから、それを逃すわけにはいかない。それにここで逃すといろいろとまずい気がする。


「行きます」


 力強く返事をする。


「では、こちらへ」


スタッフさんについていく。


「望美ちゃーん! 行くよー!」


大声で望美ちゃんを呼ぶ。


「は、はーい」


 ぽかーんとしていた望美ちゃんが慌てて、こちらにやって来る。



 数日間、全く見つけらけなかった相手にようやく会える。

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