第17話 気づかなかったでしょ?
今日のところは、その場で
帰り道を歩きながら、
「
「そうみたいだね」
「だとするなら、解決は難しいよ……」
だろうな。
僕たちはカウンセラーでもなければ、心理学を学んでいるわけでもない。
ただの高校生。それだけ。
「気持ちはわかるんだけどね……私も、似たようなものだし」
「……? 似たようなもの?」
「うん。私の場合、人前で文字を書くと手が震えるの」僕が驚いた顔を見せると、
まったく気がつかなかった。まさか
「気づいてないだけで、みんな悩みは抱えてるの」なんだか
人前で演奏ができない。人前で文字が書けない。
いろいろな悩みや問題を、相談したり助けを借りたりしながら解決していく。それが生きるということ。
「人間にできないことがあるのは当然なの」
できないことを認める……それこそが成長の一歩だということか。
ならば……
「なら、
「うん。自分のできないことを、しっかり認められてるから……きっと大丈夫」
自分の弱みを認めるというのは結構難しいことで、実行できている人は少ない。
謙遜することは簡単だ。だけれど、正当な自己評価による弱みを見つけるのは難しい。
自分はできるはずだと思いたい。自分はできないはずだと思いたい。そんな考えがどこかにある。
有能だと思いたい。同時に無能だと思いたい。そんな相反する矛盾した感情が、どこかにある。
僕は哲学的な話が好きだ。だから、今の
とはいえ、哲学的な話だけで解決できないのが現実というもの。
……
なんとかして、
「キミはやっぱり優しいね」
突然、
「なにが?」
「初対面の人のために……そこまで真剣になる人は少ないよ」
「……そう?」それは
「……」彼女は笑顔で、「キミは変わらないなぁ……その調子じゃ、覚えてないんだろうね」
「……なにを?」
「私がキミに惚れた理由」それは……お人好しなところ、だったのでは? 「まぁいいや……いつか話すよ。お礼も言わないといけないし」
お礼と言われても……まったく心当たりがない。
僕はいったい、彼女に何をしたのだろう。
傷つけてなければ良いけれど。
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