音楽愛好会
第10話 タイムリープ
改めて、タイムリープというものについて考えてみる。
未来から戻ってきて……未来を変えるために奮闘する物語を、よく見かける。
それは美談だろうか。それとも……過去に対する冒涜だろうか。
一度確定した未来を変えようとすることは、素晴らしいことなのだろうか。
起こってしまった過去を否定せずに前へ進むことこそが、未来を生きるということなのではないだろうか。
過去を悔いるのなら、今を変えるべきなのではないだろうか。
過去の改変は……今を生きる人に失礼なのではないだろうか。
……
答えはわからない。結局、タイムリープなんてのは夢物語だ。ありえない事象について考えても、答えなんて出ない。
結局できることといえば……今を生きる事だけなのだろう。
☆
「どうしたの?」廊下を歩きながら、隣の
「うーん……」適当にごまかそうかとも思ったが、「タイムリープについて考えていたんだ」
タイムリープ。時間遡行。
彼女……
「私が未来人かどうか、疑ってるの?」
「少しね」というより、完全に未来人じゃないと思っている。「証拠がないからね。簡単に信じることはできないよ」
「証拠か……それを見せるのは難しいね」
おや……ちょっと作戦を変えてきたようだ。
「そうなの? クラス分けは当ててたのに?」
「うん。クラス分けくらい大きな出来事なら、些細なことでは未来は変わらないんだけど……ちょっとしたとは、小さなことで変わっちゃうからね」
バタフライエフェクトみたいなことが言いたいのだろう。
「例えば……」
「なるほど……その影響で、いろいろな変化が起きている。だから、未来予知は難しいと」
「そういうことになるね」
なかなか知恵を絞ってきた。
未来人という設定を守るのなら、未来予知は避けられない問題だ。
すでに体験した未来を言い当てることなど、本来なら簡単なこと。本当にタイムリープしてきたのなら、簡単だ。
だけれど彼女はタイムリープなんてしていない。だから未来予知はできないわけだ。
一度くらいはクラス分けみたいに偶然予知できるかもしれない。だが……毎回的中させるのは不可能だろう。
だから、未来予知ができない理由を付ける必要があった。それが……まぁバタフライエフェクトのことだろう。
まぁ、これ以上突っ込んだ話は控えよう。未来人として取り繕おうとする
簡単な質問にしておこう、
「未来の僕は、部活とかやってたの?」
「やってなかったはずだけど……」
「
「私も帰宅部……だったよ」過去形で話すのが難しそうだ。「なにか部活やりたいなぁ、とは思ってるんだけど……勇気が出なくて」
勇気……そうだろうな。知らないコミュニティに所属するというのは、かなり度胸がいるだろう。
「いっそのこと、自分で作っちゃえば?」
「それも度胸がいるかな……私、臆病だから」
未来人という設定を作って告白した人が何を言うのか。
まぁ……彼女はやはり未来人という設定を守る気でいるらしい。ならば、少しくらい乗ってあげよう。
「さて……じゃあ」
突然、そんな事を言いだしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。