第9話 見たかったからね
男子たちの拳が、僕と
僕は
「あ、あれ……?」同じく自分が殴られないことを不思議に思った
冷静になって、目の前の男たちを見る。
「あ……」
お互いが、お互いのことを守っていた。
僕は
結果として、どちらも殴られなかったのだ。
「なんだそりゃ……」ナンパしていた彼が、「お前ら……」
「僕も驚いてるよ……」完全に殴られるつもりでいた。「
「こ、こちらこそ……」彼女も同じ驚きを味わっていることだろう。「……ありがとう……」
あまりの奇跡に、驚いてしまった。そしてそれは、相手も同じ。
「チッ……!」彼は大きく舌打ちをして、「まぁいい……もうそんな女に興味はねぇよ」
そんな捨てゼリフを残して、彼らは教室を去っていった。
教室はしばらくの間静まり返っていたが……すぐにその喧騒を取り戻した。始業式当日とはいえ、友達作りのために教室に残る人が多いようだ。
それにしても
カナヅチだけれど、身体能力は高いようだ。
「ああ……」
「まぁ、そうだね」
「私は大丈夫だけど……」
「僕も大丈夫だよ」
「それはよかった……」
それから
「……傷つけちゃったかな……」……この状況でも、あの男子たちの心配をする
「
「でも……」
相手を傷つけて良いとは限らない。
たしかにそうだ。相手が無礼だからといって、こちらからも無礼を返してよいわけじゃない。
だけれど、今回の
ともあれ、空気を変えるためにからかってみる。
「ずいぶん動揺してるね……この出来事も、知ってるんじゃないの?」
「え……? あ……」未来人という設定を完全に忘れていたようだ。「そ、そうだね……その……えーっと……き、キミのカッコいいところを見たかったからね」
「それはどうも」これ以上教室にいるのも面倒なので、「行こうか」
「うん」
そうして、僕たちは教室を出た。
僕と彼女の……奇妙な奇妙な生活のスタートである。
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