第3話 それでも人間が好きな、たろう

私は今考えると、本当、たろうは出来た猫だと思う。私は本当の事を話す。

今考えると、これも発達の遅れから来ているのだと、そう思う。

私は犬みたいに、猫も散歩出来るのかと思った。

こんなの、幼稚園児でも解る。出来るハズなんてない。散歩が出来る猫は、ちゃんとチビの頃からしつけをされている。

何も知らない私は、たろうと散歩がしたくて、ヒモを作って、たろうの首に巻きつけた。

そして、たろうを抱っこして、外にたろうを放し、そのままヒモを引っ張る。

抵抗する、たろう。

「グギァ〜!!ニャー!!」

あれぇ?オカシイなぁ……猫は駄目なのかなぁ?

そんな事を数分すると、母が怒鳴りつけた。

「何してるの!!」

そして母が言った。

「こんな事、二度としては駄目。たろうを悲しませてはいけないのよ。解る?」

「??これ、悪い事なの?」

私はしちゃいけない事だと思い、二度としなくなった。

後から、たろうの足の裏を見ると、肉球の皮が剥がれていて、たろうは痛そうにしていた。私はそれを見て、「これは、してはいけない事をした」と反省した。たろうに謝った。

それでも私が帰ると、たろうは何時も通りにお迎えをしていた。

母は、「本当に、たろうは美月が大好きなんだね。あんな事をされて、それでも美月のお迎えするなんて、大した猫だわ」と言っていた。

しかし、私よりもっと悪質で酷い事を、たろうにした。悪い事と解った人の、今で言うと動物虐待に当たる。やったのは、父だった。

父はギャンブルに負けたりすると、極度に怒りだす。その目つきは普通じゃない。本当に怖い。

多分たろうは、何て事のない、イタズラか何かをしたんだろう。

「フギャー!!」と何時もとは違う、鳴き方を、たろうはした。

私は異変に気づき、台所に駆け込んだ。

「たろう!?どうした!?何があったの?」

私が言っても、たろうは震えていた。

私は床を見て、目を疑った。

血があった。たろうは、血を吐いたのだ。

その後、母が駆けつけた。

「たろうに何をしたの!?」

母が父に強く言うと、父は言った。

「たろうを殴った」と。

それを聞いた後、すぐに母はたろうを、そっと抱きしめた。

その目は……今でも強く私の記憶にハッキリと残っている。

泣いていた……そう、たろうは涙を流していたのだ。

「お母さん、たろうは」

「解ってる。相当怖かったんでしょう。たろう、もう大丈夫よ。怖かったね、ごめんね」母は、たろうを、ずっと抱きしめていた。

その後、たろうは普通に戻ったが、父だけは避けた。

父は亡くなるまで、この出来事は、母に言われていた。



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