雨の季節の。その二。

俺たちの会議中に飛び込んできたのは青ざめた顔をした一人の女子生徒。


「助けてください!!???」


すると部長は口を開いた。


「まずは中に、落ち着いて話すといい。」


女生徒を落ち着かせる部長。

彼女を椅子へと誘導し落ち着くのを待つ。

「ふぅ。取り乱してしまってすみません。」

「いや…落ち着いたのなら良かった。」

「部長。」

「うむ…では……君に起こった何かを話せるのであれば聞かせて欲しいのだが…よいか?」


部長のその声に女生徒は一旦言葉を飲み込む。


「うむ、よいぞ…ここはオカ研で…ここにいる者は君がどのような話をしても信ずる者達ばかりだ。」


すると女生徒は深いため息をふぅっと吐き出すと…意を決して語るのだった。

あれは先程、私が帰ろうとした時の事です。

今日はまさか雨が降るなんて思ってもいなくて私は傘を家に忘れてきました。

友人と帰ろうとしていたのですがその時私は教室にいつか傘をこんな時の為に予備に置いておいた事を思い出しました。

友人に傘を取りに戻るから待っててといい残し私は教室へと走り出したのです。

私は急いで教室に戻り傘が定位置にあったのを確認、手に取ると友人を待たせていた玄関まで辿り着きます。


「ご……ごめんね!まったよね!?」

「う……ううん!大丈夫!」


私がそう訪ねると友人は首を横に激しく振り否定しました。

私は妙な違和感を感じつつも一緒に帰りはじめました。

「それでね…隣のクラスの子なんだけど……」


たわいもない話をしながら、いつもの様に帰っていると…紫陽花寺の前まで差し掛かりました。

あそこはこの街に住んでいたら誰しもが知っているいわく付きのお寺です。

まあそんな事も気にしなければなんてことない季節になると紫陽花が綺麗に咲き誇るお寺なんですけどね。

私達は紫陽花寺の前に差し掛かったその時。

友人はピタリと足を止めたんです。


「えっ!?どうしたの!?」


私のその声にビクッと反応する友人。

見ると彼女の身体は小刻みに震えていました。


「大丈夫!?」


私がそう言いながら肩に手を添えようとしたその時。

雨は突然スコールの様に激しく強まりました。


「うわっ!?何この雨!?」


私達はそれまで強くもない雨だった為、全く濡れる事はなかったのですが。

私が視線を友人に向けると…友人の肩…そして髪の一部がどう言ったわけか濡れていたのです。

それもびっしょりと。

これには私も驚いてしまい一歩引いていました。

すると友人は真っ青な表情を浮かべていました。


「あ……あじ………さい………あめ………」

「大丈夫!?」


私がそう問いかけると。


「きゃーーーーーーーーーーーー!!!??」


友人は傘を投げ捨て…その場を走り帰ってしまいました。

「そんな事が起こったのです……これがつい先程の出来事です。」

「そうか。」


部長はそう言うと考え始める。

女生徒に起こった確かに奇っ怪なこの事件。

我々の前に二度も同じ様な事件が起こるとは。

俺もその事件をどう見れば。

普通の事件ならば警察に言って何らかの調査を依頼する所なのだがこれは明らかに人智を超える何かなのである。

その為にこの事件の対策本部をここに設けているのだ。

すると部長は口を開く。


「ふぅ……二件ともあの紫陽花寺の所で発生した事件だな。」

「部長…そして、二人とも雨に当たっていますね。」

「仁…そうなのだ……そして…雨が襲ってくるというワード…果たしてこれが一体なんなのか。」


俺達は頭を悩ませている。

すると部長は考える。

その時。

俺の視線に止まったのは女生徒の肩の部分。

濡れてはいるのだが…やはり手形に見えているのだ。


「ふむ……ここでこうしていても何も変わらんな…それならいっその事…我ら三人で紫陽花寺へ行ってみるか!?」

「「なんですとーーーーーーーーーー!?」」


こうして俺達三人で現場に向かう事になったのだった。

お読み下さりありがとうございました。

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