オカ研仁の不思議な体験
僕は、ぬいぐるみの身体の中に意識が入り込んでいたんだ。
そして…あろうことか、現在部長である『藤野涼子』さんの部屋の中にいたんだ。
初めは、はしゃいでいたのだが、ふと我に返った僕は焦り出す。
これはどういう事なんだ??
僕は…ありったけの脳をフル回転させこうなった原因を考える。
あれは。
◇
◇
◇
僕が学校から帰ると部屋に入る。
すると僕宛てに届いていた荷物があったんだ。
そして包装を開けると中にはぬいぐるみが入っていた。
そうだ。
これは僕が部長にチョコのお返しにとネットで購入しプレゼントしようと思っていたクマのぬいぐるみだ。
僕はぬいぐるみを見ると一瞬。
クマのぬいぐるみと目が合った気がした。
「ん?なんだ??このぬいぐるみ…今…目があった気がしたんだけど。」
僕は多少気味悪い気がしたのだが…この時は気にせずにいたんだ。
「おっと!部長に渡すのにメッセージカードも入れないとな!」
僕はメッセージカードを書き…そしてぬいぐるみに持たせる。
そして…そのまま僕はぬいぐるみを同じく、ついてきた包装袋に入れ替える。
「よし!これでバッチリだ!これなら僕の思いも部長に届くはずだ!!」
僕は不思議な自信に溢れかえっていた。
そしてそのまま眠りについて…。
◇
◇
◇
そう!
そして気がついたら僕が、ぬいぐるみになっていたんだ!!
◇
◇
◇
しかし…この状況…どうしたものか。
僕は考える。
声を出そうにもぬいぐるみには声帯がない為…声を出せない。
動けるは動けるが手足と首くらいしか動かないのだ。
ただ…声が出せないのは厳しい。
何かを伝えようにも…その術がないのだ。
その時。
ふと思い浮かんだのは…文字を書き伝えるというもの。
よし!ならば。
そう思いつき僕はぬいぐるみの身体で部長の机の上になんとかよじ登った。
幸い…今…部長は学校へと行っていて不在だ。
部長に伝えるには今行動するしかない!!
僕は何とか部長の机にあった紙を敷く。
そしてペン立てに立ててあったペンを手にする。
よし!書くぞ!!
声を出せない代わりにそう心で一言呟くと文字を書き始める。
少ない文字でこのクマが僕だと言う事を伝えなければならない。
ぼ
く
は
ひ
と
し
く
ま
そう紙にやっとの事で書いた僕。
これできっと伝わるだろう。
あの部長にならきっと。
僕は、そう思いながら疲れ…眠りについてしまったんだ。
気がつくと。
いつの間にか部長が帰ってきていた。
そして彼女は、じっと何かを見ていたんだ。
それは僕がやっとの事で書き上げた先程の紙だ。
「これは一体…どういう事だ??」
部長はそう言いながらじーっと紙を見ている。
僕はなんとか気づいてもらおうと奥の手に出ようとしていた。
それは動いてその紙に書いた事をジェスチャーでもいいから伝えようかと。
そして僕は動こうとする。
すると。
なんと!動かせていたこのぬいぐるみの身体が一つも動かせなくなっていたんだ。
なんだと!!???
これはヤバイ!!
このまま僕は一生ぬいぐるみとして生きていかなければならないじゃないか!?
確かにここにこのままでいれば部長との幸せな日々が約束されるであろう。
だが…時がくれば部長だって学生時代を終え、就職、そしてもしかしたら僕以外の男と結婚…なんて事にもなり得るかも知れない。
嫌だ!!
僕はやっぱりこのままは嫌だ!!
部長といるなら人間として、部長と一緒になるのだ!!
ぬいぐるみのままでいいなんてことは有り得ないんだ。
ヤバイ!!
ヤバイぞ!!
部長!!なんとかその文字で、僕の事を!!
僕に気づいて、そしてなんとか助けてください!!
僕はそう強く願う。
だけど一つも身体を動かす事ができない僕。
部長はじっと紙を凝視しているのだが。
「ふぅ……どういう事なのだ?仁は今日も学校へ来ていなかったが…LINEの返信もないしな。」
部長はそう一言呟く。
何かを考えている部長。
僕は部長に気づいて欲しくて。
動こうと身体を再び動かそうとする。
だが一向に動かなかった。
伝えたい!!
伝えたいんだ!!
部長!!!!!!
その時。
僕のぬいぐるみの身体は…。
コテッと転んだのだ。
部長は果たして気づいてくれるのか!?
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