第26話オカ研のクリスマス。

俺は最上輝也。

転校してきた先で友人が出来たんだ。

そいつは仁。そして仁に誘われる様に入ってしまったオカルト研究会、通称オカ研。

さて。この日俺は部長に呼び出され…夜に学校のオカ研へと入っていく。

ガラガラっとドアを開け中に入ろうとすると。

「おい!仁!ちゃんと椅子を押さえておくのだ!?」

「部長!!いや、でも、この状況って!?」

俺が部室内に見たその光景は。

クリスマスリース飾りに勤しむ二人の姿だったのだ。

「ぶ…部長…それに仁…何をしてるんだ??」

「ん??おおっ!!??輝也か??いいところに来た!身長の高いお前なら飾り付けも楽だろうて。」

「お?輝也!?本当にいいところに来てくれたよ!」

部長の足を押さえていた仁が振り向く。

「わっ!!??バカ!お前ちゃんと掴んでるのだ!?」

よろめく部長!!

俺はすかさず落ちてくる部長を抱えようと飛び込む!!

ずっしーーーん。

とまぁここまでの音はしながったが俺の背中に落ち。

座っている部長。

「いてて。」

「すまんな…輝也?」

「いえ、大丈夫ですよ?部長は大丈夫ですか??」

「ああ!お前のお陰で何ともない!ありがとう!」

そう素直に言う部長を俺はその時。

めっちゃ可愛いと思ってしまったんだ。

「どうした??輝也??ん??」

すると部長はすくっと立ち上がり自分のスカートのホコリをパンパンッと払う。

「ふぅ〜〜〜やれやれ…お前ら二人ともまだまだ煩悩の塊であったか。」

呆れ顔の部長の声に思わず絶句する俺達二人。

すると部長はサンタの帽子を被り直す。

「二人ともそこへ座るのだ。」

「えっ??」

「部長??」

部長は深く自分のソファーに座ると。

語り始めたのだ。

よいかこれは。

その昔…この街で起こったと言われた怪奇譚である。

ある所に、一人の男の子がいたのだ。

彼は幼い頃に親に捨てられ、とある施設で育ったのだ。

だがその少年はどうやら周囲の子供達とも馬が合わなく一人でいる事が多かった故にこの日も。

「「ジングルベール!ジングルベール!鈴がーなるー!」」

彼は眠りから覚めるともう夜になっていたようだ。

部屋に一人でいる事が多かった彼は日中に寝てしまい気がついたら辺りは真っ暗だった。

だが彼はみんなの歌声に目を覚ましたのだ。

(ああ…僕寝ちゃってたんだ。あの歌声って、そうか今日はクリスマス・イブってやつか。)

少年はそう…ぼんやり考える。

(いいなぁ……本当に楽しそうだ。そういえば…サンタさんって来るのかな。)

施設の仲間達の楽しそうな声を聞いていた彼はそんな事を思っていた。

そして彼は、また眠りそうな、それほど心地よかったのだ。

すると。

「きゃーーーーーーーーーーーーっ!!?」

誰か、そう仲間の一人の叫び声が聞こえる!!

(ん?なんだ???)

先程までとはうってかわっての絶叫。

「な!なに?何が起こったの?」

僕はベットから起き上がる。

すると次々と聞こえてくる絶叫の声。

「うわぁぁぁっ!!???」

「きゃーーーーーーーっ!!???」

「何?何が起きてるの??」

僕は、そう呟くとガチャリと部屋の扉を開ける。

その時。

先程までとは違い年の重ねた人の断末魔の叫び。

「うぎゃぁぁぁぁああああーーーーーっ!?」

その声に思わず驚く僕。

(もしかして…施設長の…おばさんの……声??)

僕は恐る恐る決死の覚悟を決め…叫び声の聞こえた食堂へと向かう。

一歩、また一歩。

そして食堂へと辿り着くとその扉を開けていく。

ゆっくり…静かに……音を立てないように。

やがて扉が開くと僕は目を向ける。

するとそこは部屋中が血だらけで血の海へと変わっていたのだ。

「えっ!?」

僕はついそう声を上げてしまう。

先程まで幸せそうに、歌っていたであろう仲間達。

そして音楽をひいていたであろう施設長のおばさんは…オルガンの脇で血にまみれ倒れていたのだ。

「………!!!!??????」

「先生!!!!!???」

僕は先生に近づくと血だらけになった彼女の身体を起こしてみる。

すると。

「……君…サ……ンタ………か…ら……に…げて…。」

彼女はそう言い残すと。

がっくりともう…動かなくなったんだ。

すると後ろからカタリと誰かの足音が聞こえ…。

僕が振り返るとそこに立っていたのは…血に染まり赤く染まった毛糸の帽子。

そして白い服までもが赤く染まる。

その様子はまるでサンタクロースだ。

「おお!君も……ワシのプレゼントの一部になってくれるのかい??」

にやりと笑うサンタクロース。

手には血に染まるナイフが握られている。

そして。

「ふぅ〜〜〜どうかね??」

俺も仁も、その恐怖の話にドキドキと心臓の鼓動がとまらなかったんだ。

「あー!でも部長!これって怪奇譚ではありませんよね?」

俺はそう言うと。

部長はにやりと微笑む。

「私からのクリスマスプレゼントは未だあるその施設への立ち入り許可!!とってきたんでな!出るらしいぞぉ???はっはっはっはっは!!」

「仁!!??」

「うん!!」

俺たちは顔を見合わせ合図をすると走り出す!!

「こらーーーーっ!!お前達!!!???」

部長はふぅっと息を吐く。

「やれやれ。でも……やっぱり恐怖話とは…楽しいものだな。」

「あ!皆さん!読んでくれていたのだな?これはこれは…いつもありがとう!」

部長はとびきりの笑顔を皆様へ向ける。

「ハッピーメリークリスマス!!!」




黒の怪奇譚、今年はこれで終了です。

来年もまたよろしくお願いします!




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