第19話桃太郎??

僕の名前は桃園太郎ももぞのたろう

そう、友達なんかには桃太郎なんてあだ名をつけられることもある。

でも至ってどこにでも居る普通の高校生だ。

だけどね?

僕の住むこの街には奇妙な昔話が残っているんだ。

そう。

これは昔昔の物語なんだ。

昔昔…僕の先祖は桃を育て収穫しそれを街へと売りに行く桃農家だったらしい。

「おーい!太郎さん!桃こっちにも売ってくれねーか??」

「あ!はい!何個ですか??」

「そうだなぁ…隣町の爺さん婆さんにも食わせてやりてぇから十個も貰おうか??」

「はい!ありがたいです!」

こうして僕の先祖は桃を育てそしてこうして街へと売りに来て生計を立てていたらしいんだ。

ところがそんな折りオラはいつもの様に桃を売りに来ていたんだ。

「お!太郎さん!また桃かい??いいねぇ!太郎さんとこの桃は絶品だからな!ところで。」

オラのお客さんはそこまで話すと何か神妙な面持ちの表情を浮かべる。

「あ………実はな太郎さん……。」

男の子表情は先程までと違い暗くその影を落とす。

「ココ最近この街で不思議な事が起こっていてな……実は、夜な夜な鬼が出るとか出たとかっていう話なのだ。」

「鬼??ですか??」

「ああ…昔話にはある、あの桃太郎の話なのだ。あれにも鬼が出てくるであろう??」

「はい…確かに出ますね…。」

「だろう??それがな?ココ最近鬼が現れて人を襲ってるんだよ??」

「えっ?それって本当の話ですか??」

「ああ!勿論だとも!こないだ太郎さんが来た次の次の日に事件が起こったばかりだ!」

「それでなにかの対策なんかはしてるんですか?お侍さんを呼んでるとか祈祷師さんを呼んでるとか??」

街人は首を振り語る。

「全く…その鬼は本物の鬼みたいでな…顔は真っ赤、そして口には大きな牙、身体は身の丈八尺はありそうな巨人なのだ…だから誰の手でもどうにもならないとの皆そう避けているのだ。」

「そういうことですか…でもどうして?このオラにそんな話を??」

すると街人は口を開く。

「この街には、なぁ、とある伝説が未だに残っていてな…そう、ここはもう桃太郎様の伝説に皆すがっているのだ。」

「えっ??」

ボカッ!!!!!

そんな音がしたかと思えば。

オラの視界は真っ暗になる。

そしてオラが目覚めると。

パチパチと薪が火にくべられ燃え上がる音が聞こえる。

「誰だ!??」

オラは火をたいているその者に声をかける。

「た…太郎……さん。」

「ん??」

そこには見たことも無い女性がいて薪をたいていたのだ。

「オラ…どしてこんな所に。」

「貴方はこの街を救うための人間なのです。」

「どういう事だ??」

「貴方がこの街を救ってくれる最後の希望の……『桃太郎』さんという話なのです。」

「ん?オラ桃太郎なんかではない!オラは太郎だ!!??」

すると娘は立ち上がりオラに背を向ける。

「鬼は…桃太郎さんに恨みを持ち続けているといいます…それを鎮めるためには。」

娘は走り去る。

「あっ!?待ってくれ!!!!!」

オラの声は辺りに響き渡る。

すると突然薪の火が消える。

「あっ!?どうなってる!!??」

オラの叫び声。

そして徐々に聞こえてくる巨大な足音。

ズシリズシリと聞こえそして大地を揺るがす足音はオラに恐怖を与える。

ズンズンと迫る足音と激震。

「ぐるるる…」

「ひっ!!」

オラの目の前には巨大な口が迫っていた!!!

「うわぁぁぁーーーーーーーーーーー!?」


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