第14話逆らえない先輩

私が好狭野教諭と三輪莉央の共謀によって好き放題されて数日が経ったある平日のある休憩時間に廊下を歩いていた。

人気のない教室に差し掛かった際に、教室の前で教科書や参考書といった授業の荷物を片腕で抱える好狭野教諭と、悪魔のような笑顔をたたえる三輪莉央が口論している姿を目撃した。

好狭野が遠目でわかるほどに身体を震わしており、劣勢だとうかがえた。

私は関わるのを避けたい筈なのに、躊躇の末に脚が口論を繰り広げる二人のもとに向かっていた。

「せんせー、どうしたん——」

「凪沙ぁぁ、良いとこに……三輪さんを——」

駆け寄った私が声を掛けると、整った顔をしている筈の好狭野が涙を流し、助けを求めてきた。

「好狭野せんせぇ〜関係ない生徒を巻き込んじゃ駄目ですよぅー。ささっ、此処じゃなんですから——」

三輪が好狭野の片側に胸を押し付け、反対の肩に腕を伸ばして、ガシっと掴みながら場所を移そうと促し、歩き出した。

「凪沙ぁぁ……」

好狭野が連れてかれそうになり、か細く消え入りそう声量で私の名前を呼んだ。

「あ、あのっ!三輪さ——」

数歩進んだ三輪が私の怯みながらの呼び止める声に反応して、立ち止まり、頭だけを背後の私に向け、悪寒を感じさせる威圧のある声音の言葉を発した。

「邪魔するなよ、ブスが。これ以上私の邪魔するなら……イジメちゃうよ」

「ごごっ、ごめんなさいぃっ!命は、命はどうかぁっ……!」

私は三輪の言葉と顔の表情に悪寒が身体中を駆け巡り、ガタガタと震わし、両腕で身体を包む。

三輪の気配は、私の命を容易く刈られそうな危機感を察知してしまう程のものだった。

「じゃあ晶せんせぇを連れてくね、汐嶋さん」

「凪沙ぁぁ……」

「晶せんせぇ、今のわたしは手加減出来ないんです……凪沙ちゃんがどうなっても良いんですか?」

三輪が好狭野の耳許で囁いてるのが微かに聴こえた。

明らかに脅していた。

「ひぃっ……それは。従いますぅ」

好狭野は戦意喪失して、項垂れた。

三輪と好狭野の姿が消え、腰が抜けた私は廊下に尻もちをついて歯がカチカチと鳴り続けるのを止められないまま、震えた。




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