第11話共謀の末に……
「あっ、汐嶋さーん!先輩が汐嶋さんに用があるって〜」
私が教室の前方の出入り口から呼んできたクラスメイトに視線を移すと、彼女が片手で手招きし来るように促していた。
「えっわかった。今行くから……」
私は短い返事を彼女にして、通学鞄を肩に提げ小走りで彼女に近づき、背後にいた彼女よりも身長が僅かに高い女子生徒に視線が向いた。
ボブカットの艶のある黒髪をさわりと左右に揺らした先輩の女子生徒が、私を呼んだクラスメイトにお礼を告げ、クラスメイトが離れるまで口を開かない。
クラスメイトが教室に入ったのを視界に捉えた先輩が、クラスメイトと接していた時よりも僅かに低い声で、私の苗字を発した。
「汐嶋……さん。今から、私の指示に従ってくれる?」
「えっ……あのっ、しぃっ、指示って……?それにあなたが——」
私は沸々と恐怖心が湧いて、声が震えた。
「あぁー、汐嶋さんに手ぇあげるわけじゃないからそんな怖がんないで。私ぃ、三輪莉央。どう、従う?」
三輪と名乗った先輩は、私の言葉を遮り煩わしそうに後頭部を片手で掻いた。
「わ、わかりました。しっ、従います……」
「そう。ありがと……さっ、行こっか」
三輪は感謝の言葉を発した瞬間にだけクラスメイトに見せた笑顔を抑えたような微笑を見せ、低い声に戻して、ついてくるように促した。
「はい……」
三輪が歩み出し、彼女の背中について足を踏み出した私だった。
私は三輪が足を止め、目的地である空き教室に到着する間に彼女が舌舐めずりをしたのを聴いて、背筋がゾクっとした。
三輪が連れてきた空き教室は談話室—(3)と書かれたプレートがある教室だった。
三輪はプリーツスカートのポケットに片手を突っ込み教室の鍵を取り出し、鍵穴に鍵を入れて開錠し、教室に踏み込んでいく。
私が躊躇して立ち尽くしていると、振り返って教室に入室していない私に彼女が、入ってきて、と身体が硬直しそうになる硬い声で促す。
私は恐る恐る足を踏み出し、三輪の側まで歩み寄って立ち止まる。
三輪が私に背後の机に腰を掛けるように促し、私は両足の踵を浮かし、机の淵に両手をつき腰をおろした。
彼女がまたもスカートのポケットに片手を突っ込み、何かを掴んで引き抜いて、その腕を私に突き出し、拳を開く。
彼女の片手の掌の上にはシンプルな黒いアイマスクがあり、アイマスクをつけるように指示を出される。
「これ、付けて」
「えっ、でも……あのっ——」
「いいから」
抵抗をしようものなら手をあげそうな睨みと声音の彼女に、従い、アイマスクで瞳を覆う私だった。
私がアイマスクを装着し、10分ほどが経過した頃にようやく物音が聞こえ、扉が開き誰かが教室に足を踏み込んで私の正面で足音が止まり、背後にもうひとつの気配を感じ取る。
私の背後で耳に残り続けている舌舐めずりが聞こえ、堪えるような興奮した喘ぎも漏れていた。
机についた両手の甲に包み込むような柔らかい感触がし、直後に唇にも柔らかく馴染みのある感触が伝わり、唇の隙間に何かが侵入してきた。
あぁ、舌だ。
私は直感で解り、誰かに濃厚なキスをされていることに抵抗しようとするが、体験したことのある強引さに恐怖が押し寄せてきた。
10分ほどで誰かの舌が私の舌に絡んで、襲っている人物の唾液が自身の口内を満たしている。
背後の柔らかい膨らみに挟まれた頭は、誰かの犯行に抗えないように支えられている。
私は怖いのに、ショーツが濡れていく現実に脳がおかしくなっていくのを感じていた。
ブラウスの上から胸を揉まれ始め、自身の喘ぎ声が大きくなっていく。
背後の人物の喘ぎ声も抑えられなくなってるようで、耳障りなほどに大きい。
怖い、怖い怖い、怖い怖い怖い、と恐怖心が肥大化していくのに、何故か指先で刺激され卑しく音を立てるデリートな部分が電流が流れるように疼く。身体中汗ばんで、火照るように身体が熱い。
あの変態教師のせいで、私の身体が壊れたんだ。
許さない、私の正常な身体を返してほしい。
もうぅ……止めてぇぇ、お願いだからもうぅ……!
私は変態な誰かに身体を弄られ続け、一時間は容赦のない悪意にされるがままだった。
私は、身体に力が入らず、腕や脚の先がピクピクと痙攣していた。
一人の気配が無くなり、アイマスクを外された私は腕や脚の四肢が机からだらんと垂れて、起き上がる気力が残っていなかった。
「羨ましい……あぁああん、汐嶋さんだったら。はぁはぁ」
私を見下ろしていた三輪が恍惚な笑みを浮かべ、満足そうに発した。
「何が……うぅ……羨ましいぃ、よ、だ……最悪、よぅ……」
「あの人の寵愛を……可愛いそうね、汐嶋さん。さて、あの人から報酬を受け取らないと。あぁぁんんっ、愉しみだわっ!!」
三輪が蔑んだ顔をしてから恍惚な笑みを浮かべて、軽い足取りで教室を出ていった。
「ちょっ……!」
私が呼び止めようとする前に、三輪が私を教室に残したまま出ていき、戻ってくることはなかった。
数日後に、私は好狭野晶から三輪莉央と共謀して、私を好き放題にしたことを告げられた。
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