第10話相変わらず、変態を極めた教師

私が好狭野教諭の住処に上がって、二時間はとっくに経過し、窓の外は闇が広がっている。

彼女から、家の物は自由に使って良いからと言われたけど、流石に他人の住居に上がってる身で弁えないのはどうかと思い、リビングのダイニングチェアに腰掛け、スマホを弄っている。


20時を経過した頃に、玄関扉が開く物音が聴こえると共に疲弊しきった低い挨拶が聞こえた。

「ただいまぁー。待たせてごめんー、凪沙ぁ〜!夕飯は済ませたー?」

「あっ、おかえりなさい……まだですけど、せんせー」

「えぇっ!凪沙が制服着てない……制服を脱がす愉しみがぁぁッッ!!なんで着替えてんのさ、凪沙ぁ〜。もうぅっ、凪沙ってば酷いよぉー!!」

彼女がリビングの扉を開け放ち、私を視界に入れた瞬間に大袈裟に驚き、呻きながら落胆し、膝から崩れ落ちそうになった。

「制服を脱がすのが愉しみって、変態を極め過ぎでしょ……いくら春でも気温が高過ぎて、汗ばんでたから着替えたんですって。それより、せんせって誰かと同居してます?」

「え?あぁー、してるよ。クソ生意気なじぇーけーとね。彼女が友達ん家に泊まってるから、凪沙を誘ったの。凪沙にあんなことやこんなことをさせたくてさ〜ぁ!拒否権なんて凪沙にないからね、覚悟しといてよ!」

キッチンのシンクの作業スペースにパンパンに膨らむレジ袋を置きながら、不機嫌な低い声で疑問に答えてから、今の時代では完全にアウトな発言を嬉々として発した好狭野だった。

「教師とは思えないセリフがせんせの口から聞こえたんですけど、好狭野サンって教師ですよね?……まぁ、家の鍵を預けられた時点で拷問は覚悟して来てますけどね」

「拷問だなんて失礼ね、凪沙ぁ〜。凪沙が泣き叫ぶ姿は流石に気が引けるよぅ。そんなに常識から外れた行為を凪沙にヤるなんてことはぁぁ……ないから安心して。ね、凪沙」

「変な間が有った気がするけど、しませんよね?教師ですもんね、好狭野サンは……」

「そんな不安がる必要がどこにあるの?凪沙ってば、変ねぇ……私と凪沙の仲に何を不安がることがあるの。嫌ねぇ〜凪沙ってばぁ!」

近所のおばさんみたいな馴れ馴れしい言葉に聞こえて、悪寒を感じた。

「夕飯をささっと作るから、リラックスしててね」

「うん……」

彼女の上機嫌な鼻唄がキッチンから聴こえる。


私と好狭野晶の二人での夕飯は、穏やかに済ませられるはずも無く——。


21時30分に彼女に腕を掴まれ、浴室に連行されて、彼女に身体の隅々まで洗われた。


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