第8話変態の慣れない手つき

私の背後のグラウンドでは野球部の金属バットで球を打ち返す物音や威勢の良い野次、テニス部のラケットで球を打ち返し合う乾いた物音といった色々な雑音が聞こえている。

私はグラウンド側の壁に追いやられ、脚もとに屈んだ好狭野教諭にプリーツスカートのチャックを焦らすように下ろされながらもう片方の手で太腿をいやらしく撫でられていた。

私は左手で半分ほど開いた硝子窓の窓枠を掴みながら、右手の甲で喘ぎ声が漏れないように堪えていた。

「……ッん。んんっ……ぁあッ!……ッん……」

彼女に太腿を撫でられてる間に荒い鼻息と生温かい吐息が太腿に掛かり、背後から聞こえる雑音でこそばさと火照る感覚を紛らわそうと努めるも身体が反応してしまう。

彼女の太腿を撫でまわす五指が今にもショーツに触れそうなのだ。

「んんっ……せぇ……っんせっ……アッんん……やっぁぁン……めぇ……」

「凪沙、凪沙ぁ……可愛いよ、恥じらって感じてる凪沙は……凪沙……凪沙ぁっ……」

彼女の頭がずれ落ちそうなスカートで完全に隠れていて、太腿の内側に変態な彼女の鼻先が触れいっそう身体がビクっと痙攣した。

私の身体は今にも膝から崩れてしまうほどで、立っているのがやっとなのだ。

彼女の指がショーツの中に忍びこむ寸前に、廊下から私たちがいる教室に向かって走る脚音が聞こえ知らせようとする。

「せんせっ……えぇっ、だぁれぇっ……かっぁぁ……くぅっ……るっぅぅ……」

廊下からの脚音が聞こえたようで、ショーツに触れていた彼女の指先が離れ、素早くスカートの中から頭を出して、立ち上がった彼女。

そして、何事もなかったような表情で背後の机の縁にお尻を載せ、やり過ごそうとした彼女だった。

幸い、廊下の脚音は私たちの教室を素通りして遠のいていった。

「ふぅー。ははっ、良かったね凪沙ぁ!バレなくてさぁ」

「わぁっ……はぁはぁ、笑いご……とじゃっ……ないですよ、うぅ……ほんと」

私は床にへたり込みながら、息も絶え絶えになりながらも彼女を睨み付けた。

「そろそろ本音を吐いちゃいなよ、凪沙ぁ。なぁ〜?」

「ほっ……んねはぁ……はぁ……はぁ、いつも言ってるじゃないですか。ふぅ……はぁはぁ。気持ち良く……なんかぁ、ないですよ」

「はぁ〜凪沙ってば、まだ分かんないの?まぁ……分かんないなら、じっくり分からせてあげるからさぁ……私の手でね。また明日ね、凪沙っ!」

好狭野教諭の恍惚とした貌に、既に汗ばんだ背中に冷やりとした汗が流れたのを感じた。

「ちょっ——せんせっ、こんなことしておいて手を貸してくんないのっ?」

彼女がへたり込む私を置いて教室を出ていこうとするのを、私は引き留めようと声を掛けるが無視された。

「……もう、サイアク」

教室に取り残された私は、最終下校時刻がジリジリと迫るなか、中学生の頃のマラソン大会で走り終えた時のような疲労感をおぼえた脚を摩りながら立ち上がれるように揉んだ。

「はぁー、あの変態が嫌がることってなんだろ……?」


私は左脚を引き摺りながら、帰路につくのだった。

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