第6話好機のチャンスを無駄に

室内には汐嶋凪沙の匂いとコーヒーの芳ばしい香りが混ざって、鼻腔がくすぐられ、思考が正常に働かない。

「キショいですよ、センセー。もうぅ……」

「はぁっ!いけない、貴重な時間が無駄になるとこだわ。腰掛けて、良いかしら?」

小さなサイズのローテーブルを挟んで向かいに座る汐嶋に、恍惚とした表情から幾らか真顔を作り訊く私だった。

「断りたいですけど、どうせ遠慮しないでしょうからいいですよ。ほんと、センセーには困らせられますよ……」

ベッドにまで触れられないというのは如何なものか、とは思った。

しかし、私が彼女の立場であれば、嫌いな人物にベッドまでも触れられるのは許せないだろう。

私は、汐嶋凪沙かのじょのことに関することには理性が保てなくなってしまう。

「ありがとう、凪沙。凪沙の匂いが堪能したいんだもん、仕方ないじゃない」

私は立ち上がり、彼女のベッドに腰を下ろして、吐息を吐く。

「はぁ〜んっ、これが凪沙の匂いが染みついたベッドね!たまんないわ、うん凪沙の——」

「キショい、ほんと変態教師だよッッこの人!!頬擦りしないで、マジで寝らんなくなるゥゥーーー!!!!!これだから上げたくなかったんだよぅー……はぁー」

彼女が、足をフローリングにつけたままで上半身をベッドにつけてシーツに頬擦りをしながら鼻息を荒くする私を引き剥がしながら叫んでいる。


「はぁはぁ……泊まるんですか、ほんと?帰らないんですか、センセー?」

「えぇ〜泊まりたいよぅ、凪沙ぁ。ご両親が居ないから、ハメを外して愉しもうよぅー。ねぇ〜え?」

肩で息をしている彼女に、私は両掌を擦り合わせて猫撫で声でごねる。

「はぁー、分かりましたよ。ハメは外さないよ、そんな関係は御免です〜!」


私たち二人が風呂から上がったのは、22時を過ぎていた。

彼女の制服姿やジャージ姿は見慣れていたが、ルームウェアは肌の露出は控えめだけど、そこが唆られる。


汐嶋一家の彼女以外が出払っていて、彼女に手を出しやすかったがキスより先は出来ずに明日を迎えた。


彼女にすすめられたbokula.というバンドの『ガールブレンド』という曲が脳内に焼きついて、ろくに眠れなかった。

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