第4話教師の威厳はどこにやら
「ねぇ、これからどうする?もう一回、海にはいる?」
「……帰りたいぃ。もう私を解放してぇ……」
かき氷を半分くらい残した汐嶋がテーブルに突っ伏しながら疲労感を含ませた低い声で返す。
「えぇー、二時間くらいしか海にはいってないじゃ〜んっ!もう少し、海にはいろーよぅ。せっかく来たんだし、楽しもうよ〜!ねっ、凪沙ぁ〜!」
「もう充分楽しみましたよ……楽しんでるの、アキ姉だけですけどね」
私がせがんでいるのに、彼女は顔を上げることなく私の提案にのってくれずに後半の言葉をボソッと吐いた。
「私と凪沙ではテンションの差があるけどさーぁ……涼みに来たんだし、もう少し涼もうよ凪沙」
私は唇をすぼめて、不貞腐れたような声をあげるが徐々に消え入りそうになる。
「えぇー……分かりましたよ、入りますよ。あと一時間だけですよ。気持ち悪い眼で、水着をまじまじ見ないでくださいよ。変態のような行為もやめてください。これらのこと、約束してくれますかアキ姉?」
彼女が渋々といった様子で、私の提案を受け入れてくれた。
汐嶋さんのローライズビキニを拝んではならない……かぁ。変態のような行為……?
「ぅうーんん……うーん、ううーん……」
「唸りながら迷わないでください、アキ姉っ!迷うようなとこじゃないですよ、そこはッ!?」
バンッ、とテーブルを両手で叩いて喚く彼女だった。
「えー、だってぇ〜」
「来年も行こうよ、なんて言い出すつもりなんでしょどうせ。来年まで我慢してください、堪えてください好狭野センセー」
「うわー、鬼畜だよー凪沙ぁああぁぁあああ!ここでそれを持ち出すのって、卑怯すぎるぅぅー!凪沙が鬼すぎるよぅー!」
「えー、ここは悦ぶとこじゃないのー好狭野先生!?わけわかんないよーぅ。謎すぎるよぅ、好狭野先生ぇ……」
子供が欲しい玩具をねだって両親に買ってもらえずに泣き叫ぶような様子に、彼女が困惑していた。
結局、彼女に泣きついて、約束の内容を緩和してもらい、海水浴を楽しんだ私だった。
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