第2話蔑まれ、悦ぶ変態

「うわー、大盛況だねー汐嶋さん〜!」

「そう、ですね……」

燦々と照り付ける真夏の陽光に目を細めながら、隣に立つ汐嶋凪沙に視界に広がっている海を眺めながら、声を掛ける。

ビキニに着替えるのを恥ずかしがって、私を先に着替えさせた彼女。

私を更衣室から追い出してから着替え出した彼女だった。

ラッシュガードでビキニを隠した彼女に、期待が高まっていた私。

どんなビキニだろう……焦らされている現在いまも止まぬ興奮で露出した肌が、照り付ける陽光の熱気とは違う汗が噴き出すのを感じている。

隣で真夏の陽光が顔に射さないように片手でかげを作りながら、テンションの低い声で応じる汐嶋。

「テンション低っ!?海だよ海、凪沙ぁっ!涼みに来たんだよ!」

「なぎっ——馴れ馴れしく名前で呼び捨てはっ——」

「んーっ!もし、ここに知り合いが居たりしたら私たち即アウトだよぅ〜!良いの〜凪沙ぁー、両親に迷惑かけて今後の将来がお先真っ暗になっても〜?それが嫌なら呼び方くらいで騒がないの〜っ!」

声を荒げ、呼び捨てされたことに文句をつけようとした彼女の口を塞いで、脅しのようなことを告げた私だった。

「んんーっ!……ほんと、教師ですか、貴女は……?」

抵抗を続けようとしていたが、抵抗が無駄だと気付いたようで諦めた彼女が、口を塞がれていた手が離れると同時に恨みがましく睨みながら蔑んで言葉を吐いた。

「可愛い〜っ!そんな凪沙も好きだよ、私っ!」

「うぇー……!もう……嫌だぁ」

苦い物を口にしたような渋い顔で吐く仕草をしながら、愚痴を漏らす汐嶋。

「はぁ〜あんっ!堪らないっ、蔑んだ凪沙の顔と声っっ!!」

汐嶋に蔑まれた私は、興奮して思わず艶かしい声を上げながら、両手で頬を挟んで空を仰いで背中を反らした。

「ちょっ……!その声、やめてくださいよっ!?ヘンタイ、すぎるよぅ……」

彼女が周囲の集中した視線に羞恥心が湧き上がったようで、頭を抱えてその場にしゃがむ。

「断り切れたらなぁ……」

「今は親娘か姉妹になりきらないと、凪沙。ささっ、行きましょ!」

ぶつぶつと未練がましく愚痴を垂れ流す彼女に屈んで肩に手を置いて、慰めることなく海に入ろうと促した私。

「はぁ……この地獄が何時間続くのー……!」

私に身体を支えられ乗り物に酔い潰れた人のような真っ青な顔の汐嶋が呟き、嘆くのだった。



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