一方的に押し付けられた姪に傷つき、生徒に癒されたい!
木場篤彦
第1話疲労と癒しに挟まれ
「オバさんー、遅いんだけどぉー。これだからぁー……」
玄関扉を開け、帰宅した私を出迎えたのは姪の生意気な罵りだった。
荻原からの労いの言葉は、
「ごめんごめんー。同僚からちょっとね……インスタントで済ませたぁー、夕飯?」
「いやぁー、まだー。オバさんが食うなって——」
通勤に履いているパンプスを脱いで玄関を上がり、スリッパを履き替えリビングに繋がる廊下を歩きながら、彼女と会話を交わす。
「炊けてたりする?もし炊いてないんだったら——」
「炊いたし、炊けてる。早くメシ……オバさん」
無愛想な低い声で否定し、催促する彼女。
リビングに足を踏み入れた私の視界には、奥のキッチン側に置かれたダイニングチェアに腰を下ろし、片膝をダイニングテーブルから突き出しスマホを弄り、顔を上げない彼女の姿が映った。
「はいはい。今夜は豚の生姜焼きで、そんなかからないよ。白飯をよそってくれる、瑠衣?」
「……」
荻原はダイニングチェアに載せていた片脚をフローリングに下ろし立ち上がり、私の隣に並んで食器棚から茶碗や箸、ガラスのコップを取り出しダイニングテーブルに並べた。
彼女が炊飯器を開けて、白飯を茶碗によそっていく。
預けられた当初の荻原と比べると若干ではあるが、従うようになったなと思う。
生意気な姪——の荻原瑠衣ではあるが、憎めないところも……あったりなかったり、だ。
汐嶋凪沙に抱く感情に比べると、荻原瑠衣に対して抱く——感情は数段劣っていた。
荻原は憎たらしく生意気だが、汐嶋は割と優等生を演じて他人から好かれたいという感情が見え隠れしていて惹かれる。
汐嶋から冷たくあしらわれても、哀しみは感じるが酷く落ち込むというより若干ながらゾクゾクする。
「オバさん、キショい
「そぉう……ごめんね、瑠衣」
荻原が両肩を抱きながら、後退りしながら指摘した。
姪を怖がらせるような貌をしていたのかしら?
そう言えば、汐嶋さんも表情を強張らせていたわね……
夕飯を済ませ、バスタブで身体を浸かり、ひとときの幸福に浸りまたも汐嶋の身体の隅々まで想像を膨らませる私だった。
私が就寝したのは、日付が変わる十五分前だった。
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