69. サリア、カマール、オスカー
オスカーはやっと、水天宮の前に姿を現した。
「私が今のパーシヴァルだ!」
自分より身分がはるかに低い、孤児院が出自である「紅の騎士サリア」を小馬鹿にしたような態度だった。
サリアもカチンときた。
「良く、お前のような若ぞうにパーシヴァル卿は、跡目にすえたな!」
「なんだと、孤児院出身のくせに!」
「なにっ!」
オスカーは低い身分ではあるが、いちおう貴族出身なのである。
二人はにらみ合い、ケンカになった。
水天宮は慌てて止めようとする。
その時だ、オスカーがサリアの白磁のような美しい顔にグーで、パンチを入れたのだ!
完全に取っ組み合いのケンカにまで発展した。
水天宮はオロオロとするばかり……。
やがてオスカーとサリアは、どちらともなく剣を抜いた。
剣で決着をつけようというのだ!
(馬鹿目が!)
とサリア。
剣と剣がぶつかり火花が飛び散る。
剣を交えているうちに、オスカーは内心穏やかでいられない。
サリアは剣の天才なのだ!
そのことが、徐々に理解できてきた。
もう、遅い。
じりじりとオスカーは押されていく……。
(もはや、これまでか!)
という時に狂戦士カマールが到着したのだ。
カマールはこの光景を見て、衝撃を受けた!
なんとか、とどめを刺そうとする、サリアを羽交い締めにしてこの場を乗り切ったのだ。
負けたオスカーはみっともなくその場から、走って逃げ切った。
「あのオスカーというバカ者、捨て置けぬ」
「人を出自で判断する、可哀想な奴……」
「相手にするな、サリア」
美しく成長したサリア。
ブロンドの髪を短く切り添え、青い宝石のような瞳。
傭兵ばかりやっていた小汚いノラ犬のような自分。
同じ孤児出身でもここまで違うものか……。
まさしく美女と野獣なのだ!
「サリアとカマールは、お互いを抱きしめ合う!」
孤児院時代の昔話に花を咲かせている。
自分たちが両親に捨てられたこと。
いつも、ひもじい思いをしていたこと。
口に入れば、何でも食べたこと。
肉が食べたくてしかたがなかったこと。
今、というかこれから、戦う相手「龍の一族」について、
剣士である自分が、テルジンという中国人留学僧に遅れをとり敗北したこと。
今はオスカーを破って、とどめを刺そうとしたこと。
これまでのこと。
時間が過ぎていく......。
やがて、カマールの頼んだ「バズーカ砲」二つが運ばれて来た。
右の肩、左の肩に一門ずつ背負うとその状態で走り回る。
戦闘準備が整ったのだ!
後は「フォースの力」の問題だった!
カマールとサリア、水天宮がタンカーの甲板に上がった。
カマールは両肩のバズーカ砲を真上に向かって打ってみる。
なぜか、500メートル位先の海面に出ていた岩が吹き飛ぶ!
そうなのだ!
これがカマールの「フォースの力」なのだ。
念力というかサイコキネシスで、弾道を自由に変えられるのだ!
バズーカ砲の射程距離は600m程度、行ける!
水天宮は勝利を確信した。
最強の戦士と言える狂戦士カマールが味方にいる。
それだけでも十分だった。
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