第33話 神隠しにあおう

「神隠しが発生しやすい場所を聞いたんで、そこに向かいます……えっと、あっちだな」


〝それにしても菜の花畑、広いな〟

〝祭りの会場とは無関係にひたすら菜の花畑〟

〝この景色……クラナドのアニメと同じだ!〟


「コメントで流れてきたけど、俺もクラナドで見た覚えがある。だからこっちで正解のはずだ」


「クラナドって昔のアニメだっけ?」


「お。明日香さん、クラナド知ってるんだ」


「見たことないけど名前だけは知ってる。そのアニメがどうしたの?」


「クラナドの終盤でさ。主人公が娘を連れて、祖母に会うため旅行に行く話があるんだよ。その舞台がどう見ても横浜町なんだ。菜の花畑がまさにこうだったし。駅の形も同じだったし」


「へえ。ここが舞台なんだ」


「主人公は娘を菜の花畑で遊ばせて、一人で祖母に会いに行くんだ。徒歩でね」


〝そんなシーンあったな〟

〝まだ未就学児の娘を一人で置いていくんじゃないってツッコんだ覚えがあるw〟


「で、祖母との待ち合わせ場所は、龍飛崎なんだよ」


「え! 遠すぎない!?」


〝海沿いの崖だなぁとは思ったけど、あれって龍飛崎だったのか〟

〝待って。調べたら横浜町と龍飛崎って直線距離でも八十キロくらい離れてるんだが〟

〝横浜町から龍飛崎まで徒歩で!? 何日かかるんですか!〟

〝想定の千倍くらい娘放置してたw〟


「そう。遠すぎる。けれどポータルを使って移動したと考えれば辻褄が合う。クラナドのスタッフは、おそらく横浜町に取材に来て、実際にポータルで龍飛崎まで移動したんだよ。だから主人公にも同じことをさせたんだ」


「な、なるほど……地元の人の証言だけじゃなく、有名なアニメでも描写されてるってことは、本当にポータルはあるのかも」


「しかしポータルってかなり大きな空間の歪みですよ。ダンジョンみたいな魔力が集まってる場所ならともかく、こんなのどかな場所にポータルがあるとは思えませんが……」


「アミーリアさんに同意したいところだけど、青森県ってそこら辺にモンスターがいるし……菜の花畑にポータルがあっても『まあ青森だし』って感じかも……」


〝俺もアミーリアたんに同意したいけど、明日香ちゃんにもっと同意だわw〟

〝青森県ならなにが起きても不思議ではない〟


「地元の人いわく、特定のルートで道を歩くと神隠しにあいやすいんだとか。えっと、まずここを右に……次も右に。そして回れ右して、今度は左に」


「なんか同じところをグルグル回ってるだけな気が」


「しかし魔法というのは、無意味に思える行動が儀式として成立したりしますから。この場所でこういう道筋を辿るのが、ポータル起動の儀式なのかも……って、あれ!?」


〝景色が変わった!〟

〝海だ!〟

〝崖だ!〟

〝クラナドで見た!〟

〝すると、ここが……〟

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