第28話 明日香、襲来
「うわ、マジで明日香さんだ! どうしてここに!?」
「拓斗さん! 拓斗さんだ! 助けてください! 私はただ拓斗さんに会いたいだけなのに、この人がホテルに入れてくれないんです。私たちを引き裂こうとするんです。きっと魔女の眷属に違いない……このホテルはもう魔女に支配されてるんだ! おのれ魔女め! 拓斗さんから離れろおおおおおおっ!」
〝ホテルのロビーで騒ぎすぎ〟
〝炎上案件〟
〝日本だったら警察沙汰だぞ〟
〝日本やろがい!〟
「え、なんなんですか、この人……タクトさんの友達、ですか……?」
「友達っていうか……前に一度、新宿ダンジョンで会ったことがあって。明日香さんの配信に映ったおかげで俺の配信もみんなに見てもらえるようになったんだ。ある意味、俺の恩人かな」
「タクトさんの恩人ですか! それは凄い人ですね。にしても……なぜこんな騒いでるんでしょう?」
「さあ……」
〝拓斗さんの名前を連呼してるんだから、拓斗さんに会うために青森県に来たんだろ〟
〝最近、明日香チャンネルの配信がないと思ったら、こんなところに来てたのか〟
〝アミーリアたんへの敵意ヤバイ〟
〝まあ、明日香からしたら、自分が先に拓斗さんと出会ったのに、あとから出てきたアミーリアたんがヒロイン面してるわけだからな。気にくわないだろう〟
「そんな。人気配信者の明日香さんが、俺に会うためだけに青森に来るなんて、まさか」
「会うためだけじゃありません!」
「ですよね」
「赤ちゃん作りに来ました!」
「は?」
「拓斗さんと子作りをしたい!」
「え、いや、落ち着いてください! 冷静に!」
「落ち着いてるから! 私、冷静だから! 冷静に拓斗さんと子作りセックスしたい!」
「「は、はああああっ!?」」
〝拓斗さんとアミーリアたんの声が綺麗にハモってる〟
〝俺もパソコンの前で同じように叫んでしまった〟
〝これは炎上とか事故とかいうレベルじゃないぞw〟
〝明日香ちゃんって清楚系冒険者だったのに〟
「あれ? 私、なにかしちゃいましたか……あ、そうですよね。まずは結婚ですよね。えへへ、私ったら拓斗さんが好きすぎて焦っちゃいました。じゃあ結婚しましょう。婚姻届は用意してますよ。ここに拓斗さんの名前を書いてください」
〝服の下から婚姻届が出てきた!〟
〝まさに肌身離さずってやつか〟
〝あれってゼクシィについてくるピンクの婚姻届じゃね?〟
〝すでに自分の分を記入済みなのがヤバイ……〟
「え。無理」
「なぜ!? あ、そうか、まずはちゃんとお付き合いして、それから結婚ですね! 私はいきなり結婚でもいいんですけど、拓斗さんがそっちのほうがいいなら私、合わせますよ。初デートどこ行きます?」
「付き合うのも無理」
「どうして! あ、分かった。拓斗さんは自分から告白したいタイプですね。さあ、どうぞ!」
「告白なんかしないよ。俺、明日香さんに恋愛感情ないし……そりゃ、明日香さんのおかげでバズったから、それは感謝してる。けれど、どうして結婚とか付き合うみたいな話になったのか分からないんだけど……」
「だって! 私は拓斗さんが好きだから! 新宿ダンジョンの深層で、もう死ぬってところを助けてもらって! あんな格好いい姿を見せつけられたら、好きになっちゃうに決まってるでしょう! 私の心を盗んでおきながら、異世界から連れてきた魔女とのイチャイチャを私に見せつけるように配信して!」
「別にイチャイチャはしてないけど……」
「してるから! もう毎日のようにイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャと!」
「そう見えるかな……」
〝見えるよ〟
〝そこだけは明日香に激しく同意〟
〝イチャイチャしてないつもりなのは拓斗さんだけだから〟
「あはは……確かにイチャイチャに見えたかもです……」
「そうか。俺は普通に仲良くしてるだけのつもりなんだけど……男女が仲良くしてるとイチャイチャに見えてしまうのかな……」
「どうでしょう。それだけ私とタクトさんが相性抜群なのかも?」
〝お。アミーリアたん、攻めるねぇ〟
〝いやぁ。この程度の攻めじゃ拓斗さんには伝わらないよ〟
〝今の明日香でギリなところあるもんな〟
「なぁにが相性抜群よ! 振られたばかりの私に対する当てつけか!」
「け、決してそんなつもりは……」
「キエェェェェッ!」
「お客様、暴れるのはやめてください! これ以上騒ぐようでしたら、すり潰して陸奥湾のホタテのエサにしますよ!」
〝従業員の言葉が物騒な件〟
〝警察呼びますよ、じゃないのかw〟
〝陸奥湾のホタテを検索したらメッチャ美味しそうなの出てきた〟
〝青森県ってリンゴ以外にも名産品があったのか〟
〝ふるさと納税の返礼品に陸奥湾のホタテあったわ〟
〝やはり青森県と日本の物流は生きてるのか……しかしどうやって……〟
〝おい! 明日香が従業員の羽交い締めを振り払ったぞ!〟
〝青森県民に力で勝つとか強すぎないか!?〟
〝これもまた愛の力……〟
「ホタテのエサになるのは私じゃない! アミーリア! あなたをホタテに食わせてやるううううううっ!」
〝抜剣しやがった!〟
〝剣聖VS魔女!〟
「塔に引きこもっていた頃ならともかく、今の私はそう簡単に死んであげませんよ!」
〝光のムチみたいなのが明日香に巻き付いた!〟
〝触手じゃね?〟
〝そう言われるとエロく見えてきたw〟
「ぐぬぬぬ! 動けない……!」
「もう暴れないでください。怪我をさせたくありません」
「うるさい! 見下しやがって! このまま私を絞め殺せばいいのよ! タクトさんに振られた以上、夢も希望もない!」
「……仕方ありません」
「ふがふが……」
〝口元まで覆った〟
〝締め落として気絶させたw〟
〝まあ黙らせたほうがいいよな〟
〝しかし明日香はもう配信者としてやっていけないな〟
〝清楚系だったのに迷惑系になっちまった……〟
「拓斗様、アミーリア様。ご協力感謝します。もしよろしければ、私がこの方を陸奥湾に沈めておきますが、如何なさいましょう?」
「えーっと、さすがに海に沈めるのはちょっと……今回はこんなことになったけど恩人だし。どうしよっかな……」
「タクトさん。この人……アスカさん、でしたか? 私たちの部屋に泊めてはどうでしょう? 見えないところでまた暴れられるよりは、監視できるところにいてもらったほうがいいと思います」
「あー……確かに。けれどホテル的に大丈夫ですか?」
「そうして拘束し続けていただけるのでしたら」
「よし。じゃあ部屋に転がしておこう。詳しい話は明日だ。今日の配信はここまでです。また明日見てくださいねー」
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