第22話 バグありのRTA

「どうも、拓斗です。魔王城につきました。デカいし禍々しいデザインです。弘前城の十倍はありますね」


〝あれから五時間しか経ってないんですが?〟

〝このスピード感よ〟

〝黒塗りのシンデレラ城〟


「ここまで近づくと……ますます魔王の気配を感じます。タクトさんとシルヴァナさんが一緒じゃなかったら、とっくに逃げ出してますよ」


「そう? 私は、むしろ拍子抜けなんだけど~~」


「同感。このまま殴り込んでも、余裕って気がする」


〝拓斗さんもシルヴァナさん頼もしすぎる〟

〝でも四つのアイテムがなきゃ入れないんだろ?〟

〝さすがにそれは青森県民でもどうにもならんだろ〟

〝四人の幹部を地道に倒すしかない〟


「うーん……魔王城がドーム状の結界で包まれてるんですけど、殴れば壊せそうな気がするんですよね」


「ええ、きっといけるわよ~~。結界を殴って中に入って、魔王を殴って倒して、晩御飯にしましょ~~」


「え!?」


〝え!?〟

〝アミーリアたんの目がマンガみたいに丸くなってる〟

〝俺も同じくらい目を丸くしてるわ〟


「んじゃ、殴ってみますね。おりゃあああああっ!」


 バリバリバリ!


〝なにもない空間に亀裂が!?〟

〝いや、うっすら透明な壁が見えるぞ〟

〝これがドーム状の結界ってやつか〟

〝昭和のアニメのバリヤってこういう風にヒビ割れるよなw〟


「お、硬い。一撃じゃ貫けないか」


「じゃあ私も一緒に殴るわ~~、いっせーの!」


 バギバギバギバギバギバギバギバギバギッ!


〝木っ端微塵だぁぁぁぁ!〟

〝破壊可能オブジェクトだったのか〟

〝本当は違うんじゃない?〟

〝世界の法則が乱れた〟


「よっしゃぁ! じゃあ乗り込むか」


「晩御飯に間に合いそうねぇ。アミーリアさん、行くわよ~~。……アミーリアさん? ボンヤリしてどうしたの? ねえってばぁ」


〝どうしたの? じゃねーよw〟

〝ねえ、四つのアイテムが必要なんじゃなかったの?〟

〝壁すり抜けバグみたいなもんだろ〟

〝バグありのRTAって嫌いだったけど、ようやく楽しさが分かったw〟

〝魔王逃げてええええ!〟

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