第20話 異世界配信、再び

「マンドラゴラ以外にリクエストないですか?」


〝このまましばらく農作業を流して〟

〝和むわ〟

〝キュウリに味噌つけて食べたい〟

〝美人はなにしても絵になる〟

〝これぞ日本の田舎の風景よ〟

〝でもこれって青森県配信である必要あるか?〟

〝言われてみると〟

〝そろそろ絵に変化が欲しいな〟


「わがままなリスナーどもめ……実は俺も同じこと思ってたけど」


〝また異世界配信するってのはどうよ?〟

〝分かる。青森メッチャ楽しいけど異世界無双も見たい〟


「異世界かぁ。確かにあそこは面白かった。けど異世界行きのポータルは、新宿ダンジョンの最深部だからなぁ。ちょっと気軽に行く、ってわけにはなぁ」


〝そういえばダンジョン庁が大規模な調査隊を編成して、新宿ダンジョン最深部の調査しようとしたよな。失敗したみたいだけど〟

〝あれ? 俺は冒険者ギルドの調査隊って聞いたけど?〟

〝冒険者ギルドはダンジョン庁の組織だからどっちも正しい〟

〝ちょっと頑張ったくらいで最深部に行けるなら、もっと早く到達者が出ていただろうし〟

〝青森県民しかいけない場所〟


「異世界って、つまり私がいた世界のことですよね? もしかしたら、あのダンジョンの底からじゃなくても行けるかもです」


「え、マジ?」


「あっちからこっちに来るときは、私とタクトさんでポータルを開きましたよね。あの術式は覚えています。それを応用すれば、おそらくは」


〝青森県から異世界に直接行けるかもしれないってこと?〟

〝さすが魔女〟

〝コンテンツがますます充実してしまう〟

〝盛り上がってきやがったぜ!〟


「どういう術式? 見せて見せて~~」


「こういう感じです」


〝畑に魔法陣が!〟

〝相変わらず複雑怪奇な模様〟

〝アミーリアたんの魔法陣って絶対あちこちで研究対象になってるよな〟

〝当たり前〟

〝俺、魔法系の研究職だけど一ミリも理解できん〟

〝ユニバーサルメルカトル図法で関数を複合化すればいいんだろ〟

〝ユニバーサルメルカトル図法懐かしいw〟

〝なに、そのユニバーサルなんとかって〟

〝ググれ〟

〝解き明かせばグーグルに入社できる〟


「なるほどね~~。確かに、別の世界からこっちの世界に来るための術式ね。こことここを書き換えれば、効果が反転して、別の世界への扉が開くんじゃないかしら~~。あとは座標を上手く指定すれば、狙った世界に行けるはずよ~~」


「ひゃっ! いきなり魔法陣を書き換えないでください……魔力と魔力が干渉し合って私に逆流……んんっ!」


〝アミーリアたんエッチな声出したぞ〟

〝エッチって言うほうがエッチなんですー〟

〝こらぁ男子ぃ〟

〝そうは言っても実際エッチだったぞ〟


「シルヴァナさんのえっち!」


〝ほら〟

〝そうかアミーリアたんは魔力に干渉されると感じちゃうタイプか〟

〝よーし、いいこと思いついた!〟

〝お前如きの魔力で干渉しても気づかれんだろ〟

〝さっきシルヴァナさんが何気なく放った魔力って、一般人を炭化させるくらいの力が込められてるぞ、多分〟

〝随分と高度な話だな〟

〝でもえっちな話だろ〟


「…………あ、えっと。ばあちゃん、そういうのは、あれだ。一声かけてからやるべきだと思う」


〝拓斗さん、随分と片言ですね〟

〝本当はもっとエッチな声を聞きたかったんだろ

〝正直に言えよ!〟

〝もう拓斗さんがアミーリアたんに魔力流せばいいじゃん〟


「そ、そんなことできるわけないだろ!」


〝でもエッチな声に反応して固まってたろ?〟

〝意識が硬直するだけでなく、体の真ん中にある棒も硬くなってるやろ〟

〝前屈みになってる理由言ってみ?〟


「硬くなってねーし!? いくらアミーリアさんの声がちょっとエッチだったからって……はんっ! そんなんじゃ硬くならねーし!」


「タクトさーん……」


〝出た、かわいいジト目〟

〝しかし今回はタクトさん悪くないと思う。悪いのはシルヴァナさんと反応したアミーリアたんだろ。童貞少年は硬くならざるを得ない〟


「え、俺なにかしちゃいました!?」


〝そのセリフそういう使い方するもんじゃねーから!〟

〝優位に立ったときに言うんだぞ〟

〝ズボン脱いでギンギンに反り立つ拓斗さんを見せつければマウント取れるのでは〟

〝俺のアレがおかしいって、小さすぎるって意味だよな?〟

〝そうですよ、って言われたらどうすんだよ〟

〝死ぬしかないw〟


「…………ま、いいでしょう。タクトさんは健康な男子ということですね。健康は大切です」


「よかったわねぇ、アミーリアさん。拓斗に女として意識してもらって~~」


「は、はああああああああ!? いくら前屈みになったタクトさんがちょっとエッチだったからって……はんっ! そんなんで喜んだりしませんし!?」


〝似たような言い訳してらw〟

〝じれってーな……俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!〟

〝もうなってる件〟

〝この二人なんでまだ付き合ってないの?〟

〝アミーリアたんから魔力洩れてね?〟

〝興奮して暴走状態w〟

〝にしても光、強くね?〟


「アミーリアさん、転移魔法が発動しちゃってるわよ~~」


「え、え!? 止まりません、どうしましょう!」


「あらあら、困ったわね~~」


「あらあら、じゃねーよ!」


〝景色が変わった!〟

〝異世界転移成功!?〟

〝つーか、アミーリアたんが住んでた塔の玄関先じゃねーか〟

〝本当だw〟

〝突発的に発動したから、印象に残ってるところに出ちゃった系かな?〟

〝ところで空が紫なのはどういう現象?〟


「この空は……ま、まさか魔王が復活したのでしょうか……!」


〝魔王!〟

〝盛り上がって参りました〟

〝あれ? アミーリアたん本気で怯えてる?〟

〝ガチでヤバイ感じ?〟


「……一回配信切りまーす」

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