第14話 ばあちゃん配信に映る
「とにかく。ちょっと距離感が近いとか、話が弾むとか、そんなので勘違いしてはいけないわけですよ。アミーリアさんのような美人が、俺みたいな子供を好きになるとか、ないわけです。そりゃ人間として嫌われてないのは分かってるし、俺も好意を持ってるけど、それだけだよ」
〝絶対にいけると思って告白したら駄目だったってのは普通にある〟
〝なんなら『好きだったけど告白されたら嫌いになった』って理不尽もある〟
〝今流行の蛙化現象か〟
〝でも告って玉砕するところ配信したらバズるぞ〟
〝それでアミーリアたんが拓斗さんのもとから離れたらもう動画に出てこないんだぞ。慎重に行くべきだ〟
「慎重もなにも、これはラブコメじゃないし、恋愛リアリティーショーでもないから。ダンジョンに潜ってモンスターと戦うチャンネルなの。ああ、そうだ。庭でアミーリアさんが近所の子供と遊んでるので、それを映しますね」
〝想像しただけで和む光景だな〟
〝どんな遊びしてるんだろ? 鬼ごっことか?〟
〝案外ゲームしてんじゃね? 初代ポケモンとか〟
〝初代は草。ゲームボーイとか昭和かよ〟
〝ポケモンは平成だよ!〟
〝二十世紀は全部昭和の感覚だわ〟
〝ガキが〟
〝オッサンw〟
「コメントで喧嘩しないでくださーい。青森県でも普通にニンテンドースイッチくらい売ってるんで」
〝本当にニンテンドースイッチなの? ゲームウォッチじゃなくて?〟
〝お、縁側だ〟
〝やっぱこういう日本建築って落ち着くよな。日本人の遺伝子に刻まれてるっていうか〟
〝日本人じゃないけど好きよ〟
〝庭も広くていいなぁ〟
〝ザ・日本の田舎〟
〝アミーリアたんが白いワンピース着てる!〟
〝やっぱ田舎と白ワンピースの組み合わせは鉄板〟
「頭突きの呼吸、一の型! スーパーウルトラ頭突き!」
「ぐえ」
〝待って。男の子が砲撃みたいにアミーリアの腹に突っ込んだぞ!?〟
〝魔女ちゃん、蛙が潰れるような声を出しながら画面の外に転がっていったんだが〟
〝小学三年くらいか? 余裕でマッハだった。超音速の頭突き〟
〝俺、高難易度ダンジョンからソロで生還できるくらいの冒険者だけど、今の喰らったら木っ端微塵になる。跡形も残らん〟
〝ぐえ、とか声を出せるあたり流石は三百年生きた魔女だな〟
「波ァッ!」
〝おい、今度は亀仙流の少年が現れたぞ〟
〝あのポーズで攻撃魔法撃つとそれっぽくて楽しいよな〟
〝魔法覚えて真っ先にやったわw〟
〝草。俺も魔法覚えようかな。ダンジョン行くのは怖いけど〟
〝草生やしてる場合か。アミーリアたん生きてる?〟
「アミーリア、少しは反撃してよぉ。拓斗兄ちゃんの彼女とは思えないくらい弱いぞ。拓斗兄ちゃんは町内で三番目に強いんだぞ」
「つーか、よくそんなんで今まで生きてこられたよな。外歩けないじゃん」
「俺たちだって、登校路でモンスターが出たら自分で追い返してるんだぜ」
「大人なんだからしっかりしろよー」
〝登校路でモンスターw〟
〝青森の子供たくましすぎる〟
〝待って。町内だけでも拓斗さんより強いのが二人もいるの?〟
〝やっぱ青森県民が総力をあげれば世界滅びるわ〟
「子供相手だからと手加減してやれば調子に乗って……今のは本当に痛かったですよ!」
〝アミーリアたん、自力で帰ってきた〟
〝髪の毛ぼっさぼさw〟
〝青森県民に負けるな! アミーリアたんは俺たちの代表だ!〟
〝異世界人が代表でいいのか?〟
「塔の魔女と恐れられたこの私を……初めてですよ……ここまで私をコケにしたおバカさんたちは……」
〝怒ってるw〟
〝台詞にフリーザ混ざってね?〟
「アミーリアさん、俺の部屋にあったドラゴンボール、徹夜で全巻読んだんだよ。なんかハマったらしい」
〝草〟
〝異世界人にも通じるとかさすが鳥山明先生〟
〝異世界人がマンガの感想語る配信とかやれよ。絶対バズる〟
〝それより異世界人にゲームやらせる配信とかどうよ〟
〝アーマードコアやらせろ〟
〝ラストジナイーダを倒すまで出られない部屋〟
〝初心者にそれはかわいそうw〟
「じわじわとなぶり殺しにしてあげます!」
〝アミーリアたんが消えた?〟
〝透明になる魔法か?〟
「いや、速いから見えにくいだけ。ちゃんと目をこらせば見えますよ。ダンジョン庁からもらったドローンの性能ならちゃんと映ってるはずです」
〝見えん〟
〝子供たちにも見えてないっぽいな。戸惑ってる〟
「アミーリアさんが使ってるのは、足に魔力を集中させて爆発的に解き放って加速する技です。昨日、ばあちゃんが教えてました。一日でマスターしてしまうアミーリアさんは凄いです」
〝よく分からんが凄い〟
〝ばあちゃん何者定期〟
〝お! アミーリアたんが子供二人を後ろから押し倒したぞ
〝おっぱい! おっぱい! おっぱい!〟
〝ガキどもそこを変われ!〟
〝俺も後頭部にアミーリアたんのおっぱいを押しつけられたい〟
「くっ、油断した……なかなかやるな!」
「けどこのくらいの力、はね除けてやる」
「ふふふ、ただ地面に倒しただけで済ますと思いましたか」
「な、なにをする気だ……あ、こら、脇腹をくすぐるな……あはははは!」
「こんなの卑怯だ……ひ、うひひひひひひ! 降参! 降参するからもう許して!」
〝かわいい決着〟
〝あー、俺もアミーリアたんにこしょこしょされたい〟
〝少年たちが特殊な性癖に目覚めそう〟
「あらあら。アミーリアさん、縮地をすっかりマスターしたのね。さすが拓斗が連れてきた人ねぇ。立派なお嫁さんになれるわよ。うふふ」
〝おっ、新たな美人登場〟
〝あらあらうふふ系の新キャラだ〟
「ばあちゃん。俺とアミーリアさんはそういうのじゃないって何度も言っただろ?」
〝ばあちゃん!?〟
〝どう見ても二十代だが〟
〝いや待て。なんか耳尖ってね?〟
〝エルフだ!〟
〝エルフが普通に廊下を歩いてきた!〟
〝このエルフさんがばあちゃん!?〟
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