第15話 散歩? デート?

「紹介します。俺を育ててくれたばあちゃんです。と言っても血は繋がってませんけど」


「あら、配信中? どうもー、エルフのシルヴァナって言いまーす。四百歳くらいでーす」


〝本当にエルフなんか〟

〝青森県ってエルフいるのか……〟

〝アミーリアたんより年上〟


「青森県でもエルフは珍しいですよ。けど、ここは白神山地が近いので、ほかの地域に比べるとエルフが多く住んでますね」


「私も故郷は白神山地なのよ。白神山地にはエルフの集落がいくつもあるの」


〝マジで〟

〝さすが世界遺産〟

〝人の手が入ったことのないブナの原生林ってのは知ってたけど、まさかエルフがいるとは……〟


「スマホでみんなのコメントが見えるのよね。やっほー」


〝やっほー〟〝やっほー〟〝やっほー〟〝やっほー〟〝やっほー〟〝やっほー〟


「反応があると嬉しいものね~~。ところで視聴者のみんなに質問。ぶっちゃけ、拓斗とアミーリアさんってどうなの? ラブラブ?」


〝はいラブラブっす〟

〝アミーリアさんは拓斗きゅん好き好き大好き状態〟

〝そうじゃない可能性だってあるっしょ〟

〝女心は分からん〟

〝いいや絶対にラブだよ〟

〝拓斗さんは朴念仁〟

〝拓斗さんは頑なに関係を否定〟


「ふーん。なるほどねぇ。じゃあ本人に聞いてみましょ。アミーリアさん、拓斗のこと好き?」


〝直球!〟

〝さすがですw〟


「す、好きだなんてそんな滅相もない! 確かにタクトさんは塔に引きこもっていた私を連れ出してここまで連れてきてくれた恩人でとても尊敬していますがそんな恋愛感情なんてありませんよ歳の差がありますし種族も違いますしなにより私如きが好きになったらタクトさんが困るでしょう!」


〝早口すぎる〟

〝顔真っ赤w〟

〝誤魔化すの下手か〟

〝あー、やっぱ拓斗さんラブラブじゃん〟

〝おい拓斗もいい加減認めろ〟


「アミーリア、拓斗兄ちゃんのお嫁さんになるんだろ?」


「お幸せにな~~」


「こ、こら! からかわないでください!」


「恥ずかしがってやんの」


「逃げろ~~」


〝子供にもバレバレ〟

〝気づいてないのは拓斗さんだけ説〟

〝今期はラブコメアニメが少ないから助かる〟


「ばあちゃんもコメントも自重してくれ。ごめんなアミーリアさん。世の中、ラブコメ好きが多いらしい。俺らをラブコメの登場人物だと思って楽しんでるんだよ。困ったもんだ」


「あはは……困ったもんですね」


〝拓斗さんが気づいてくれなくて困りますよね〟

〝いっそ押し倒すくらいしないと気づかないぞこの男は〟


「本当よね~~」


「はいはい。アミーリアさん、散歩行こう。家にいたら、ばあちゃんにラブコメやらされるよ。この辺の道に慣れたほうがいいだろうし」


「は、はい!」


「いってらっしゃ~~い」


〝むしろ拓斗さんが率先してラブコメしてる気がするんですが〟

〝デートだデート〟


「デートとかじゃないから。アミーリアさんを困らせるなって言ってるだろ」


「だ、大丈夫です。困ってはないので。むしろ、そんなにデートじゃないって強調されるほうが困るっていうか……タクトさんは私とデートするのが嫌なのかなぁって思っちゃいます」


「嫌なわけないでしょ。むしろデートしてみたいよ。アミーリアさん美人だし、優しいし。一緒にいると落ち着くし」


「そ、そうですか……! では、これはデートということにしちゃいませんか!? 私、デートってしたことないので、してみたいのです!」


〝アミーリアたん誰とも付き合ったことないの? こんな美人なのに?〟

〝馬鹿。過去を考えてみろよ〟

〝あ、そっか……魔女だから人間に近づけなくて……〟

〝お前のコメント見たらアミーリアたんが悲しむだろ!〟

〝今はコンタクト型デバイスつけてない?〟

〝無反応だからつけてないっぽいな〟

〝ほっ……〟

〝しかし実際、アミーリアたんは青森県に来てよかったな。周りに気を遣う必要ゼロだもん〟

〝魔女の強さで恐怖をばらまくどころか、小学生にやられかけてたもんなw〟

〝アミーリアたんが幸せそうで俺も幸せだよ〟


「じゃあ俺なんかでよければデートしましょう」


「はい!」


〝おおおお! アミーリアたん偉いぞ!〟

〝勇気を出したな〟

〝拓斗ぉ、お前これでもまだアミーリアたんに恋愛感情がないって言うのかぁ!?〟


「全くもう……恋愛感情はないって、さっき本人が言ってたろうが。お前ら、面白くするためなら、なにコメントしてもいいってわけじゃないんだぞ」


「どうしたんですか? ああ、視聴者さんたちとお話してるんですね」


「そう。あいつら、相変わらず俺とアミーリアさんをくっつけようとしてるんだよ。男と女がいたら必ず恋愛に発展すると思ってんのかね?」


「へ、へえ……確かに、恋愛になるとは限りませんよね。男女でも友情は成り立つと思います。逆に! 友情だと思っていたら恋愛感情だったというのも大いにありえますよね!」


「うん? まあ、そうなのかな?」


「頑張ります!」


「……なんか、そう言われると……アミーリアさんが俺と恋愛関係になりたがってるように聞こえちゃう……」


〝お!?〟

〝さすがの鈍感王も気づいたか!〟

〝よし、チャンスだ! 告れアミーリア!〟


「そ、そんなはずないじゃないですか! 私とタクトさんは友達ですよ! 恋愛だなんてあわわわわわわ!」


「だよね。変なこと言ってごめん」


〝あああああああ〟

〝なんでそこで日和るかなあああああ!?〟

〝今のはアミーリアたんが悪い〟

〝そこまで力強く否定されたら違うと思うしかない〟

〝あーあ。拓斗さんが察してくれる可能性がますます低くなったよ〟

〝そもそも察してもらおうという受身の考え方がいかんのだ。好きなら好きとハッキリ言えばそれで済む〟

〝おいアミーリア。今から拓斗を押し倒せよ〟

〝駄目だ。今のアミーリアたんにコメントは届いてない〟

〝いや、しかし異世界では魔力波だけでコメントのキモさを察してたし。応援してる俺らの気持ちも届くんじゃね?〟

〝頑張れアミーリアたん!〟

〝フレー! フレー!〟


「お前らな……」


「あの、タクトさん……これってデートなんですから……手を繋いでも……いいですか……?」


「え」


〝届いた!〟

〝いいぞ、その調子だ!〟

〝拓斗きゅん赤くなってる〟

〝アミーリアたんも真っ赤〟

〝甘酸っぱい空間だわ~~〟

〝やっぱラブコメはこうじゃないとね〟


「別にタクトさん、、、、、と手を繋ぎたいってわけじゃないですよ! 男性と手を繋いだことがないから経験してみたいってだけで……そう、男なら誰でもいいんです!」


「男なら誰でも……」


〝こらこらw〟

〝照れ隠しにしてもそれは酷い〟

〝拓斗さんがショック受けるのも当然〟

〝拓斗の鈍感っぷりも駄目だけど、アミーリアも劣らずポンコツだな〟


「い、今のは違うんです! 誰でもいいのではなく……信頼している男性なら誰でもいいという意味で、そして私が信頼している男性はタクトさんだけなので……早い話がタクトさんと手を繋ぎたいです……駄目、ですか?」


〝上目遣いで『駄目、ですか?』とか言われて『駄目』って断れる人類いる?〟

〝反則的なかわいさ!〟

〝尊すぎて死にそう〟

〝ふぅ……致命傷で済んだぜ……〟


「あ、ああ……えっと、よろしくお願いします……」


〝二人とも視認できない速度で動けるくせに急にスローモーションになったぞw〟

〝早く繋げよじれったい〟

〝指と指が〟

〝触れそうで触れない!〟

〝あともうちょい! 頑張れ!〟

〝ついに……〟

〝握ったああああああ!〟

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