第13話 実家から配信

「どうも、拓斗です」


〝急に始まった!〟

〝唐突に切ったと思ったら丸一日も開けやがって!〟


「……バスの運転手に怒られたんだから仕方ないじゃないですか」


〝バスから降りたら再開すればいいだろ!〟

〝碇ヶ関から一日中バスに乗ってたのか?〟


「いや……割とすぐ弘前市に到着して……そっからバスを乗り換えて実家まで来たわけです」


〝そこは拓斗さんの実家だったのか〟

〝昭和の家って感じ〟

〝畳だ。癒やされる〟

〝でもテレビはちゃんと液晶テレビだ。薄い〟

〝ブラウン管じゃないのか〟

〝青森ってテレビの電波来てるんだ。ラジオだけかと思ったよ〟


「で、ばあちゃんにアミーリアさんを紹介するわけじゃないですか。そういうのを配信するの……恥ずかしくて」


〝は? 今更?〟

〝魔女ちゃんとイチャイチャ配信は恥ずかしくないのに?〟


「そこまでイチャイチャしてないだろ!」


〝してるよ!〟

〝一回くらい自分の過去の動画見ろよ!〟

〝無自覚って怖いわ〟


「……けど、なんとなく分かるだろ? 身内を紹介する気恥ずかしさ……小学校の授業参観を思い出してくれ」


〝なるほど。把握した〟

〝自分の母ちゃんが教室にいるのって変な感じだよな〟

〝学校の自分と、家の自分って違うのに、それを両方同時にさらけ出してしまうような〟


「な? ばあちゃんをリアルタイム配信とか恥ずかしいわけですよ。『俺はビッグな男になってやる』とこの家を飛び出したのに、一ヶ月程度で『ただいま』と帰るわけですよ。で、アミーリアさんみたいな美人も一緒なわけだ。配信してなくても気まずいのに……」


〝その気まずいのを配信してこその配信者だろうが!〟

〝ダンジョン庁の役人に啖呵を切ったくせに、ばあちゃん相手にへたれてんじゃねーよ!〟

〝拓斗さんも人の子だな。怖いものがあるんだw〟

〝もう拓斗って呼び捨てにしようぜ〟


「呼び捨ては構わんけど。とにかく昨日は色々あったの。ばあちゃんは俺が帰ってきて喜んでたけど」


〝ばあちゃんってそういうものだよな〟

〝実家のような安心感〟

〝実際に実家w〟


「喜んでくれたのはいいけど、アミーリアさんに『いつ結婚するの?』とか冗談言うのは困ったよ」


〝本当に冗談か?〟

〝孫があんな美人連れて来たら早く結婚して欲しいだろ〟


「俺はまだ十八だぞ。気が早い。つーか俺はともかく、アミーリアさんがかわいそうだろ」


〝かわいそうか?〟

〝むしろ喜んでたんじゃないの?〟

〝ばあちゃん公認なら、あとは本人を落とすだけだもんな〟

〝本人が難所だけどな。拓斗さんって鈍感系主人公の化身みたいな感じだし〟

〝俺がラノベの編集者なら、こんなテンプレ主人公、ボツにしてやるね!〟


「お前ら。アミーリアさんが俺に恋愛感情を持っていて、俺がそれに気づいてないって設定でいつもコメントしてるよな」


〝設定? 現実ですよ〟

〝あんなに距離感近いのに、なぜ気づかない?〟


「すぐラブコメの方向に持っていこうとして。さてはお前ら、ちょっと女子に優しくされただけで好きになっちゃうタイプだろ」


〝そんなことなかと!〟

〝ど、童貞ちゃうし!〟


「それで『自分は鈍感な主人公と違う。ちゃんと女子の気持ちが分かるんだ。ラブコメ読んで勉強してるから大丈夫』とか思いながら、告白して、玉砕してないか?」


〝あれ? 俺の人生って配信してたっけ?〟

〝やめろ! 俺の黒歴史が蘇る!〟

〝ああああああああああああああああ!〟

〝なんで分かるのおおおおお???〟


「分かるよ。俺もそうだったから……中学と高校でやらかした」


〝拓斗さん!〟

〝同士だったのか!〟

〝親近感MAX〟

〝お前らスゲーな。自分から告るだけ大したもんだ〟

〝青春〟

〝でも中学と高校の両方でやらかすのはアレだなw〟

〝もしかして、それで地元にいられなくなって東京に行ったんですか?〟


「ち、違うし……俺は両親を探すために地元を出たんだし……」


〝目を背けたw〟

〝かわいい〟

〝俺ホモじゃないけど拓斗さんにキュンってした。ホモじゃないけど〟

〝ホモじゃないけどおじさん久しぶりだな〟

〝コメントしてないだけで常に見てるぞ〟

〝こえーわw〟

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