第12話 キリストの弟の墓
〝なんでバスが武装してるんですか……!?〟
「え。だって走ってるときモンスターに襲われたら、応戦しなきゃいけないじゃないですか。いちいち停めて戦うの面倒だし」
〝普通さぁ! モンスターってダンジョンにしか出ないからぁ!〟
〝なるほど。これが青森県ね〟
「じゃあバスが来たんで配信切りまーす」
〝カメラを止めるな!〟
〝バスがモンスター倒すところ見たい!〟
「そうですか? 需要があるようなので配信を続けます。アミーリアさん、バス乗るの初めてだよね? 俺と同じようにして。まず降りる人がみんな降りてから乗る。乗ったら整理券をここから取る」
「はーい」
〝地域によってバスの乗り方って全然違うから戸惑う〟
〝乗車口と降車口が別なパターンもあるよな〟
〝整理券とかもう何年も見てないわ〟
「自動車は東京で乗りましたけど、バスは初めてです。乗ってみたかったんですよ~~」
「希望が叶ってよかったね」
「はい。地球ってなにもかも新鮮で楽しいです。あ、走り出しました! 車の音ってそれぞれ違いますよねぇ…………タクトさん! 畑の向こうからモンスターが!」
〝遭遇するの早くね? まだ人里じゃん!〟
〝ヘビか?〟
〝ヘビだろうけど、やたらデカいぞ。少なくともバスよりはデカい。なんなら頭部だけでバスの正面くらいある〟
「乗客の皆様。右手よりニーズヘッグが接近中です。これより射撃開始します。揺れますので立ち上がらないようお願いします」
「ママ見て! ニーズヘッグだよ!」
「よかったね。弘前だとあんまり出ないもんね」
〝車内の会話カオスすぎる〟
〝始まった! 凄い連射!〟
〝命中したところ光ってるぞ。弾に火薬入ってる?〟
「いえ、あれは火薬じゃなくて……弾丸になにか術式が刻まれてますね。材質自体も特殊……? 光属性の攻撃魔法を込めた弾丸ですか?」
「さすがアミーリアさん。一目で見抜くなんて凄い。青森県のバスはみんな、新郷村で祝福を受けた魔法銀弾丸を発射できるようになってるんだ。大型モンスターにも絶大な効果を発揮する」
「凄い技術です……勉強になります!」
〝新郷村ってなんだ?〟
〝あれじゃね? キリストの墓がある村〟
「視聴者に詳しい人がいましたね。そうです、新郷村はキリストと、キリストの弟の墓があるところです」
〝弟!?〟
〝待ってキリストの弟ってなに?〟
〝兄か弟か知らんけどヤコブとかヨセフとかって名前の兄弟がいたはず〟
「ヤコブ? ヨセフ? 新郷村に眠っている弟はイスキリって名前だけど……」
〝マジで誰だwww〟
〝捏造すんな!〟
「捏造じゃねーよ。新郷村に伝わるキリストの遺言状にちゃんとそう書いてるらしいし……」
〝キリストの遺言状ですってよ奥さん〟
〝また新しいパワーワード出てきたな〟
〝ググったらキリストの遺言状の写真出てきたけど日本語で書いてあんぞw〟
〝まあ神の子だし……日本語くらいマスターしてるべ……〟
〝二千年前って日本に文字あったのか? 弥生時代だぞ?〟
「うっさいな。とにかく新郷村はキリストとその弟が眠る聖なる土地なんだよ。だから新郷村で銀を精錬すると魔法銀になるし、祈りを込めると強力な光属性を宿すんだよ! あと新郷村では強力なサイキッカーがよく生まれるんだ。新郷村のサイキッカーの話は石川賢が描いた魔獣戦線ってマンガにも出てくるから、嘘だと思うなら読んでくれ。魔獣戦線では旧名の戸来村になってるけど」
〝石川賢ってゲッターロボの作者か〟
〝キミは完璧で究極のゲッター!〟
〝推しの子、全話見たけどあんまりゲッターロボ出てこないよな〟
〝まるでちょっとは出てくるみたいな言い方だな〟
「見てママ! ニーズヘッグが木っ端微塵だよ!」
「綺麗ねぇ、花火みたい」
「あ、ニーズヘッグがもう一匹!」
「でもすぐ近くに農家のおじさんがいるから、やっつけちゃうんじゃないかな?」
〝マジだ。おじさんがクワでニーズヘッグの頭をぶん殴った〟
〝一撃で爆ぜたw〟
〝なんで農家があんなに強いんですか!〟
「いや、農家が農具でモンスター倒すのって一般的だと思うけど……みんなドラクエやらないの? ドラクエ6で農家のおじさんが牛を守るためにモンスターと戦ってたじゃん」
〝やってたけどさぁ!〟
〝フィクションと現実の区別つけようよ〟
「だから! 現実でもやってんだろ! お前らこそ現実を直視しろ!」
〝怒られた……〟
〝反論したいけど、どう反論したらいいんだろ〟
「車内ではお静かにお願いします」
〝やーい、運転手さんに怒られてやがんの〟
〝子供にも笑われてるw〟
「……配信切りまーす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます