第4話 魔女に会いに行く

「す、すいませんでした……スマホとドローンのバッテリー切れてて」


〝真っ当な理由だった〟

〝それはしゃーない〟

〝むしろ怒ってごめんね〟

〝謝ってる拓斗くんかわいい。俺ホモじゃないけど惚れた〟

〝待って。逆に今はどうやって配信してるの?〟


「ダンジョン仕様のスマホとドローンって電気を魔力に変換して通信してるじゃないですか。なら逆に魔力を流せば電気に変換されて充電できるかなーと思ってやってみたらできました」


〝できましたか(唖然)〟

〝拓斗さんが凄いのかスマホが凄いのか〟

〝あれじゃね? 転移したときスマホとドローンも変質してマジックアイテムとしての性質を得たとか?〟

〝ありそうな話〟

〝あるいは、ただひたすら拓斗さんが凄いか〟

〝それもありそうな話〟


「配信できなかった間、ギルドの依頼でモンスター狩ったり、情報収集したりしてました。で、町の外にある塔に魔女が住んでいるという情報を得ました。三百年くらい生きてるって噂です」


〝三百年は凄い〟

〝そんだけ生きてたら知識も凄いと期待〟

〝いわゆるボスキャラだな〟

〝ババアかな? ロリババアかな?〟

〝魔女が世界を渡る方法知ってたらいいな。青森県編はよ〟


「じゃあ今から魔女の塔に行きます」


 拓斗は宿を出て、町の出口に行く。

 すると、そこにはギルドの受付嬢や、冒険者たちが大勢集まっていた。


「タクトさん、本当に魔女の塔に行くんですか……? いくらあなたでも殺されますよ!」


「そうだぜ、行くなら俺たちも連れて行ってくれ。あんたは命の恩人だ。次は俺たちが命を張ってあんたを守る!」


「タクトが偶然通りかかってくれなきゃ俺たちはベヒモスに殺されていた……鉄パイプでベヒモスを殴り殺す姿に惚れちまったぜ!」


「あんたはこれからもっとビッグな冒険者になる。みすみす魔女に殺させるわけにはいかねーぜ」


「タクトが岩を素手で粉砕してくれたから工事が進んだ……あんたはこの町に必要な人間だ!」


「私はこの町の領主だ。タクトくん、私の養子にならないか?」


「タクトお兄ちゃんが集めてくれた薬草のおかげでお母さんの怪我が治ったの! タクトお兄ちゃん、ずっとこの町にいて!」


〝なんだなんだ?〟

〝数日で拓斗さん、この町のヒーローになってる〟

〝そうはならんやろ〟

〝なっとるやろがい!〟

〝可愛い幼女に懐かれてる。爆発しろ〟


「みなさん、ありがとうございます。けれど俺はもといた世界に帰りたい。その手がかりを知っているとしたら、三百年生きている魔女くらいでしょう。たとえ命がけだとしても俺は行きます。そして命がけだからこそ一人で行きます」


「く……確かに俺らがついていっても足手まといになるばかりか……」


「タクトさん、必ず生きて帰ってきてください。私、ギルドの受付嬢として、あなたが伝説の冒険者になるところに立ち合いたいんです」


〝おい、受付嬢さんも拓斗に惚れてねーか?〟

〝あの顔は絶対に惚れてる〟

〝なにした!〟

〝ナニしたのか?〟

〝拓斗さんハーレム体質かよ。そんな気がしてた〟

〝じゃあ魔女もチョロイン決定だな。ぜってぇ美少女の類いだわ〟

〝魔女はババアであってくれ。そんで拓斗のチンポもげろ〟


「魔女の塔までどんなに急いでも三日はかかるだろう。うちで作った干肉だ、持っていけ」


「これ、私が作ったお守りです。私だと思って持っていって!」


「タクト様、帰ってきたら結婚して~~」


「ワシの孫にならんか?」


〝老若男女にモテてやがる……〟

〝でも仕方ない。俺ホモじゃないけど拓斗さんに抱かれたいもん〟

〝分かる〟

〝おいホモ増えてんぞ〟


「ふぅ……ようやく解放された……はい、これが町の外です」


〝あいかわらず綺麗な草原〟

〝移動するところもできるだけ配信して〟

〝拓斗さんが無双してるのもいいけど景色を見てまったりするのもいい〟

〝こういう景色って日本にもあるのかな〟

〝青森県にはあるんじゃね?〟

〝俺は『日本にも』と言ったんだが?〟


「青森は日本だから。じゃあ、リクエストがあったので塔までの道中も配信しまーす」


〝おなしゃす〟

〝町の人いわく三日はかかるらしいな〟

〝さすがに全部は見れんな〟

〝作業用BGM代わりに流しておくわ〟

〝俺は全部見るぞ〟

〝暇人すぎるw〟

〝働け〟

〝ちょっ待って! 走るの速い!〟

〝そうだ、こいつ拓斗さんだった〟

〝新宿ダンジョンでも爆速すぎてなんだか分からなかったけど今回もヤベェw〟

〝もはや景色じゃない。ただの色が後ろに吹っ飛んでいく〟

〝ドローン頑張れ! 置いていかれるなよ!〟

〝これ誰かにぶつかったらどうなるんだ? 跡形も残らないのでは?〟

〝殺人事件じゃん。完全犯罪じゃん〟


「いや、見えてるから。誰かいたらちゃんと避けるし。ちなみにもうイノシシ三匹避けた」


〝分からんw〟

〝いつのまにwww〟

〝大草原不可避〟

〝実際に草原を走ってるはずなんだがな〟

〝こんだけ速いと衝撃波で草原を抉ってるのでは?〟

〝拓斗さん、ちょと立ち止まって振り返ってみて〟


「こうか?」


〝やっぱ抉れてる〟

〝草原に綺麗に溝がwww〟

〝草生えてない(唖然)〟

〝環境破壊するなよ〟

〝駄目だ笑いすぎてお腹痛い〟


「……おかしいな。青森県の草はこのくらいで抉れたりしないのに」


〝大昔から青森県民がマッハで走りまくったから雑草もマッハに耐えられるよう進化したんだな〟

〝青森県の草とクマムシってどっちが強い?〟

〝大気圏突入にも耐えられそう〟

〝お兄さん、ここ青森県じゃないからね? ただの異世界だから。手加減してあげて〟


「……これでもドローンがついてこれるようゆっくり走ってるつもりだけど。じゃあもうちょっと速度落としまーす」


〝また走り出した〟

〝見えん〟

〝どこをどう手加減してるんですかね?〟

〝一応ギリギリ音速は出てないっぽい?〟

〝あーもう景色が台無しだよぉ〟

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る