第2話:親指ぷちょへんざ!!
クイーンゲームが始まっておよそ一時間、めるてぃウォッチによると、現在時刻は19:00、毒物が注射されるまで...残り三時間。
私、花咲 絵梨と私のペアの伊黒 レイさんは、この建物の10階にある「居住スペース」で休憩を取る事にしていた。
めるてぃウォッチはゲームに関する様々な情報を閲覧する事が可能で、この建物の事もある程度調べる事が出来た。
まず、この建物は100階建て、...にわかには信じられないが、そういう設定なのだろう。私達が最初目覚めたのは1階の「ロビー」10~20階が「居住スペース」居住スペースはホテルの様な作りになっていて、ひとつの階に100部屋あるとのこと。
部屋はペアと共同で利用する物らしく、部屋の中も一般的なホテルに似た作りをしていた。二つのベットに小さな冷蔵庫、シャワーとトイレも付いている。
21~100階は...正直よく分からない、めるてぃウォッチにも情報は無かったし、行ってみる勇気も無いので謎のままだ。
「...お風呂から出るから、目を閉じててくれる?」
「あっ...う、うん...」
お風呂場からシャワーの音が止まり、扉を開く音が聞こえる。どうやら私が胸を触った事により、未だに何か誤解をされているらしく、部屋に入ってからも、あまり打ち解ける事が出来ていない。
「何これ...全部サイズピッタリ...気持ち悪い...」
伊黒さんがロッカーを開き、用意されていた服のサイズを見て、そう呟く。私も最初見た時は驚いたが、どうやらここに私達を連れてきた人物は、私達の服のサイズまで熟知しているらしい、私達のサイズに合った、あらゆる種類の服を用意していたのだ。
「...服、着たから...もう目を開けていいわよ。」
伊黒さんは黒いセーラー服を身に付けていた、私は白のセーラー服を着たから合わせてくれたのだろうか...?そうだとしたら、何だか少し嬉しい気がする...。
「ねぇ...これからどうしよう...」
私は伊黒さんの目を見て、そう問いかける、私たちの身体に毒物が注射されるまで、もう時間が無い...。
「...このまま待っていても仕方が無いわ。」
「ゲームに参加する、それしかない。」
伊黒さんは凛とした声で、そう宣言する。...だが、身体が微かに震えている、当然だ、彼女も私と同じ、得体の知れないゲームに参加するなど、恐怖でしかないのだから。
私は震えている伊黒さんの手を優しく握る。
「うん...一緒にがんば...」
「触らないでっ!!!」
私が握った手を、伊黒さんが勢いよく振り払う、彼女の表情は何かに怯えている様だった、...ゲームでは無い、もっと、別の何かに...。
「あっ...ご、ごめん...私また...」
私は両手を足元に置いて、彼女に謝罪する。
「...行きましょう。」
彼女は何も言わず、部屋を出て行く。私は彼女が背負う何かの存在に気付きながらも、今日を生き残る為に、ゲーム会場へと向かう。
「...見つけた。」
建物の二階から四階を探し回って約三十分、現在時刻は20:20分...伊黒さんが、とある扉の前に立つ。私はすぐさま伊黒さんの元に駆け寄る。
「見つけたって...こ、これ...」
その扉には、大きく赤文字で【ゲーム】【れべる②】【にんずう④人】と書かれている。
「...もう時間が無い、入るわよ。」
私と伊黒さんが部屋の中に入ろうとしたその瞬間、向こう側から何か慌てた様子の声が聞こえてきた。
「わ~っ!!見つけた見つけたぁ!!」
「朱雀おねぇさん!!見つけたよ~!!」
私と伊黒さんより少し年下の女の子が、元気いっぱいに走って、こっちに近付いてくる。
その後を追うかのように、身長の高いスラリとした、私達より少し年上の女性が歩いて近付いてくる。
「ゲーム会場...朱里ちゃん、よく見つけてくれましたね...。」
背の高い女性が、少しかがんで、朱里ちゃんと呼んだ女の子の頭を撫でる。
「えへへ~♡もっとほめてほめて~♡」
撫でられている少女は満更でも無い様子で、素直に頭を撫でられて、にこにこ微笑んでいる。
「...貴方達は?」
伊黒さんが二人に問いかける。
「あら、失礼...自己紹介がまだでしたね...。」
「私の名前は
「
状況から察するに、この人達も、私と伊黒さんのように、ゲーム会場を探していたのだろう。
同じ様に私達も自己紹介を済ませ、お互いに少しこの状況について話し合った後、一緒にこの部屋のゲームをする事になった。
「...開けるわよ。」
伊黒さんが扉を開けると、そこは一面真っ白な部屋の中だった、中央に設置された真っ白なテーブルに、4つの椅子...天井には、モニターが設置してある。
私達はそれぞれ椅子に着席すると、がちゃん...という音と共に、扉が閉まる。部屋の鍵がかけられた様だ。
...ゲームが始まる、そう実感すると、また身体が震え始める、ここで勝たなければ、私は今日毒物を注射されて死ぬ...そう考えただけで、身体の力が抜けてくる...。
「...えりりん、大丈夫...?」
朱里ちゃんが私の目を見てそう口にする。
「え...えりりん?私のこと...?」
「うん!朱里ね、あだ名付けるの得意なの!!」
朱里ちゃんが眩しい笑顔で私に微笑みかける、どうやら私を落ち着かせてくれているらしい、...自分も怖い筈なのに、なんていい子なのだろう...。
「うん、ありがとう...ちょっと元気出た...!!」
私がそう言うと、朱里ちゃんは嬉しそうにまた微笑む、無垢な笑顔に支えられて、私は落ち着きを取り戻すことが出来た...。
「みなしゃま!!おそろいでしゅか!!」
そうこうしていると、天井のモニターに少女の姿をしたキャラクター...めるてぃが映る。
「早速ゲームをはじめましゅ!!」
「今回のゲーム名は...」
「【親指ぷちょへんざ!!】でしゅ!!!」
...私は息を呑む、遂に...ゲームが始まる。
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