見知らぬ少女
十七歳から十八歳の間だけ奇妙な夢を見た。
目の前に見知らぬ少女が立っている。
ショートカットで、目が細い、痩せた少女。
どのような場所だったかは分からない。ただ目の前に少女がいる。
僕は少女と色々な話をしたはずだ。
夢の中のことだから、ほとんど覚えていない。
そんな夢を、途切れ途切れに、継続的に見ていた。
夢から覚めるたびに、あの少女は誰なのだろうと考えたが、答えには辿り着かなかった。
そんなことが半年は続いただろうか。
ある夜、夢の中で僕はまた見知らぬ少女と話をしていた。
どんなことを話していたのかは分からないが、僕が彼女に、
「ごめんね」
と言った。
その瞬間だった。
金縛りに遭った。
全身が締めつけられたようで、ピクリとも動かない。
なんだこれ、怖い。
そう思ったとき、仰向けに寝ていた体のうえに何かが乗った感覚があった。
息苦しさが増す。
助けてくれ!
叫びたいが声が出ない。
急に、痩せた何者かに抱き締められたような感覚があった。両腕が締めつけられて痛い。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
夢の中と同じように、僕は誰かに謝った。
すると、体のうえ、掛け布団の中に何かが現れた。
それが、ずいずいと体をあがってくる。
布団のふくらみが顔に向かって近づいてくる。
ダメだ!
ヌッと布団の中から顔が現れ、僕を見下ろした。
夢の中で会っていた少女だった。
少女が無表情のまま言った。
「もう遅いよ」
少女の目は凍りつくほど冷たかった。
そのあとの記憶はない。
それ以降、少女は二度と夢に現れなかった。
今でもあの少女が誰だったのか分からない。
それにしても、いったい何が、
遅かったのだろう。
第一章終了
次回からは独り暮らしを始めたアパートで起こった怪異『平成物怪録』をお送りいたします!
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