第43話 宝探し~陸~

「………なっ……なんで、討伐者で斬られても死なないんだ……? 絶対、死ぬほどの傷だろっ⁉」


 流石のシロも、慌てた声で日本刀を構える。

 しかし、「討伐者」の使用可能時間である5分が経過して、光の粉となって日本刀は消えた。


 2分間、ここから攻撃を耐えなければいけない。


「『妖精』!」


 すると、どこからか光が集まり始め、1人の人物の姿となって形作った。

 黄色の髪をして、小さな羽を生やし、二刀流の小刀を構えた少年だ。


『ん? 七柱しちばしら様⁉ どうしたんだ⁉』


 少年も、息を荒げるシロと、状況の異常さに気づいたようだ。

 そして、キッと青龍せいりゅうを睨みつける。


『お前か! 七柱しちばしら様に危害を加えたのは!』

「…………」


 青龍せいりゅうは相変わらず何も答えず、ただただ笑みを浮かべる。

 そんな態度にイラついたのか、少年はそのまま青龍せいりゅうに切りかかった。


「あまり攻めすぎるな!」


 シロの言葉にハッとなったのか、飛んできた斬撃を体をひねってかわす。

 しかし、掠ったのか、まとっていた服の切れ端がピシッと切れた。


『ちっ……ちゃんと躱したと思ったんだが………斬撃が伸びた?』


 少年は舌打ちしながら、素早く後ろに回り込み、そのまま小刀を振り下ろす。


「………ククッ」


 青龍せいりゅうは少しだけ、声を低くして笑う。

 その瞬間に、少年の腕が切り裂かれる。


『グッ———っ⁉』


 ピンチを感じたシロが、体力を能力の方に流し込む。

 すると、その力で、少年の腕が再生される。


 少年も、腕を抑えながら、一旦シロたちの方へと退く。


『何で突然……切り裂かれて……』

「見えました……」

「私も聞こえた!」


 同時に、めい裏音りおんが声を上げる。

 めいがサングラスを上げる。


「白い糸みたいな斬撃が……何重にも重なって、飛んで行ってた。凄まじい速さで。まるで……触れたら斬られる、蜘蛛の糸みたいに」

「うんうん」


 裏音りおんも、風が揺らぐ音で、斬撃が飛んだことが分かったようだ。

 やはり、青龍せいりゅうが危険すぎることを全員察したらしい。


 それに、「討伐者」というゲームシステムをはねのけているのも怖いところだ。


「…………」


 青龍せいりゅうが不気味に口角を上げる。


「ッ………」


 放たれる圧倒的な威圧感に、全員身がすくむ。

 瞬間、全員の首が飛んだ。


「はっ……?」


 重なる斬撃に完全に切り裂かれ、殺される。

 ただの肉片と化した、裏音りおんめい、シロは、青龍せいりゅうに見下ろされた。


「………クスッ…………」


 夜明よあけを殺した時と同じように、低く小さく笑う。


 すると、片目をしっかり隠している前髪が、風で揺れた。


 —――ボッ


 火の玉が宿った。

 そして、青龍せいりゅうが燃やされる。


 そのまま、青龍せいりゅうは深い笑みを浮かべたまま、闇の中へと消えていった。


 結局、片目は見えないままだった。


 —――


「やっぱり……ゲームシステム、突破されちゃうかあ」


 朱裏あかりはあはは、と力なく笑った。

 青龍せいりゅうの強さは、朱裏あかりはよく知っている。


 なぜなら———。


青龍せいりゅうは———私の最愛の姉を殺したんだから」


 朱裏あかりの顔から、笑みが消えた。

 その恐ろしいほどにぎらつく目には、闇が宿っている。


 バサバサッ!


 周りに囲むように置かれていた書類が、大きな音をたてて舞い上がる。

 そして細かく切り裂かれたかと思うと、朱裏あかりを守るように、素早く回り始めた。


「……ッ」


 一瞬、朱裏あかりが声を上げる。

 ポロポロと涙が零れ、必死に拭う。


 ビリビリに破れてしまった書類は、力なく地に落ちた。


「うぅ……っ。お姉ちゃん……」


 つぶやくと、力を振り絞って、書類に触れる。

 すると書類が復元されていき、元の場所に戻り、先ほどの空気はなくなっていた。


「………絶対に許さない…………」


 朱裏あかりの目に、赤い光が瞬く。


「私の姉を奪った青龍せいりゅうも———自分勝手な表世界の野郎も……!」


 静かに、苦し気にわめく。

 その声を、ドアの向こうから、伯真はくまはじっと聞いていた。


 経過時間:1日3時間30分

 残り時間:8日20時間30分


 参加者:50/15

 鬼:10/7


 てるてる:1/1

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