鬼発生
第5話 1日目
「ん~……なんかデスゲーム始まってるけど……どうしよっかな」
そこらへんに置いてある、空中浮遊をするベンチに座っている少女……
「うわっ、うるさっ」
その耳に飛び込んできた大音量の参加者たちの話し声に、
常人よりも2倍どころではなく、何十倍も聴覚がいいため、常に耳栓をつけていなければ、うるさすぎて生活できない。
「何でこんなうるさいの~……デスゲームくらいで騒ぐなし。あ、
その瞬間ぬっと後ろから現れたのは、
「めっちゃ見えるよ。ほぼほぼの人が慌ててるね。見てるこっちがくらくらするほど」
サングラスをしっかりと持ちながら、
五感の一つ、視覚が引き上げられているのだ。
直線方向であればどんなものも見える。
つまりこの二人が組めば、攻撃される前に気配を察知できるということだ。
「……あれ? ごめん、盟」
「前方から正体不明の物質が……ものすごいスピードで近づいて……!」
するとその一瞬のうちに、横に何者かが降り立ったと思うと、その風圧のせいで、二人は吹き飛んでしまった。
「……はぁ?」
その人物は不思議そうな顔をする。
「人影が見えたから来たのに……吹き飛んでっちゃった」
その人物は何故か背中から蝶の羽が生えていて、猫耳カチューシャをつけている。
髪が腰よりも長く、前髪の横にクロスさせたピンをつけていた。
どうやらものすごい風圧を出したのは、背中の羽のようだ。
「たった秒速1000m出しただけだけど……普通じゃないのかな? 常人には?」
常人にはあり得ないことを言ってのけるのは、ゲーム参加者の
苗字も名前も難しい漢字を使っている、16歳の少女。
「まぁ、いっか。もともと私、協力プレイとかできないし」
そう言って自分を納得させた
残り時間:9日23時間00分。
カチッ。
と、タブレットに表示された時計の秒針が動いた。
ブーッ! ブーッ!
と、タブレットから、通知が届いたことを知らせる音が鳴り響く。
-鬼が放出されます-
タブレット画面に、赤く血で書いたような、そんな文字が浮かび上がる。
一斉送信されたメッセージ。
「ついに放出ね……」
タブレット画面を見ていた
その隣で、
一時間の、逃走時間が終わった。
これから、鬼が放出される。
「大丈夫……ここは薄暗いから、きっと見つからないよ」
今二人がいるのは、大きな透き通る建物の真っ暗なエントランス。
その端の、空中エレベーター乗り場の、丁度影になる部分に二人で体育座りで、なるべく外から見えないように隠れている。
「なるべく静かにしてましょう……
その雷は、
そして、そのまま
「……⁉
しかし、何も答える者はない。
その代わりに、タブレットが振動した。
急いで
そこには、忠実な脱落表示。
「鬼<雷鬼>により、東雲香澄が脱落しました」
-生存者:48名-
そして、鬼が放出された場所、空中公園。
「ん、誰か一人殺せたよ」
薄い青色の髪が揺れる自動ブランコで、鬼陣営である
「おっけー! じゃあ……あっ、私たちが殺す前に、なんか参加者同士で殺し合ったみたいだね。だから生存者は残り48名」
サラサラした肩まで届く髪、雫型の水色のアクセサリーが付いたチョーカー、冷たい感じのする黒と灰色の目。
そんな少女の名前は、
「二人とも、どうする? 突撃する?」
そんな少女二人に横から近づいたのは、おとなしそうな少年。
ヘッドホンを首からかけ、片手でスマホをいじっている。
「あ~……。でも、
「……まあ、それもそうだね」
リンネに
二人と同じ鬼陣営。
「
しかし
「もー……全員がバラバラだと、負けちゃうよ! 人数差が40人もあるのに~!」
そんな声を出したのは、ストレート髪で、前髪にピンクのハートが付いたヘアピンをつけ、ミニスカートをはき、派手な格好をした少女。
「まあまあ
にこりともしないで言い放つリンネ。
その様子に腹を立てたのか、
「大体、何で鬼陣営に能力者がいるわけ⁉ 私たちは持ってないのに……ズルくない⁉」
いきなり怒りの矛先を向けられ、
「そーゆー文句は、運営に言って」
その瞬間、空中公園に、透明エレベーターも使わず飛び込んできた人物がいた。
「ヤッホー。鬼陣営さん」
つまり、今飛び込んできたのは参加者陣営の誰か。
「そこから動かないで」
「じゃないと、『雷鬼』で死ぬよ? 君」
「またまた~!」
その人物は笑って、タブレットを出す。
「ここに書いてあるじゃん。<雷鬼>によってって。多分、遠隔で雷を出して、ランダムで参加者を殺すのかな? 怖いね~!」
その人物はタブレットをしまい、続きを話す。
「でも、そんな強い能力、1日に何度も使えるわけがない。ほぼ、参加者陣営の能力、『殺人鬼』と一緒なんだから。つまり、『雷鬼』は1日に一度しか使えない。……そうじゃないの?」
「そこまでよくわかったわね。この短時間で。……けど」
リンネが鬼能力を発動し、一瞬でその人物の背後に回り込む。
「ここには鬼全員がいるの。無謀に突っ込んできたあんたが悪いから……死にな」
しかしそのリンネのスピードをものともせず、その人物は一瞬で横に移動する。
リンネのタッチしようと伸ばした手は、空を切った。
「なっ……」
「慌てすぎ! そもそも私は……」
その人物はタブレットを見せる。
そこには能力表示が出ていて……。
「君たちに協力しに来たんだよ?」
-あなたの能力は「裏切り者」です-
と、表示されていた。
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