第4話 ゲーム開幕~弐~

 多くの参加者が飛び出していったのは……広い広い街だった。


 それも、現実には存在せず、ありえないほどに近未来化が進んだ世界だった。

 凄まじく文明が発展している。


 空に浮くエレベーターに、空中公園、偵察し、広い敷地内を何回も巡回する警備用ドローン。


 自立型ロボットに、認証システム、自動着替え装置。

 もっともっと……。


 この世に絶対存在しないようなものが溢れ、光に包まれていて、機械音を鳴らしていた。


「これも能力の力か……?」


 ゲーム参加者である城川きがわ奏斗かなとは、物珍しそうに横移動式エレベーターを見ながらつぶやいた。


「だとしても、範囲が広大過ぎるよね」


 試しに奏斗かなとは空中公園行きの自動回転式ロボットに少しだけ触れた。


 ……触れる。

 これは……。


 考えらえるものと言ったら、「具現化」とか。

 想像したものすべてを、自分の力で現実に反映させる能力。


 ま、そんな能力は見つかってないけど。

 完っ全に、僕の想像。


 奏斗はそんなことを思いながらも、ロボットから指を離した。

 そして、逃げなければならないことをようやく思い出す。


「君。そんなところで固まってていいの?」


 ニコッと奏斗に笑いかけたのは、ゲームの参加者、東雲しののめ香澄かすみ


「……誰ですか?」

「私は東雲香澄。君、よかったら協力しない? 固まりすぎると鬼に見つかりやすくなるけど……二人くらいならダイジョブだよ!」

「……まぁ、それもそうですね。僕は城川奏斗です。よろしくお願いします」

「うん! よろしくね~!」


 香澄かすみは人懐っこく笑った。

 それにつられて、奏斗もほんの少し口角を上げた。


 ゲーム参加者:50人中49人


 その瞬間に、参加者全員のタブレットが振動し、「ブーッ」と音が鳴る。


 それはかなり大きい音で、鬼に見つかってしまいそうなレベルだ。

 奏斗かなと香澄かすみは慌てて音量を下げる。


 音量は、最大に設定されていた。


「あぶな~……ていうか、今の何? ビビったんだけど………」

「……東雲さん」


 通知を素早く開いて確認した奏斗かなとが、青ざめた顔で香澄かすみに言った。


「もう誰か、脱落したらしいです」

「………はっ⁉」


 確かに、ゲーム参加者の欄には「生存者:49人」と書かれている。

 脱落したのは本当のようだ。


 しかし、なぜ……?


「……そういえば」


 香澄かすみが言った。


「鬼は『討伐者』か『殺人鬼』じゃないと殺せないけど、参加者は別に何も書かれていない……」

「……確かにそれなら、単なる能力の殺し合いでも、参加者は脱落する。もしくは、早すぎるけど殺人鬼とか……」


 二人は考え込むが、それ以外にできそうな手段は何もなかった。



 —―――



「ふぅ~……やっと邪魔者がいなくなった」


 そう言ったのは………先ほどまで藍沢海斗、月川翔也と行動していたはずの、桜庭さくらば美晴みはるだった。


 そして足元には……月川翔也であったもの。


 それは大分損傷していて、一目見ただけじゃ誰か分からないほどだった。


「海斗君はすぐに一人にさせられたからいいんだけど……こいつがいつまでもついてくんだよね、邪魔」


 美晴みはるはその美しい顔をゆがめて、月川翔也を蹴り飛ばした。


「まぁでも、私のゲーム能力『討伐者』は重要だし……ばれないように、この辺にしとこ」


 美晴みはるは心の中で自身の能力を発動させた。


(私の能力は「磁力」。ものの引き合いを操れる。だから———)


 美晴みはるがくいっと指を曲げる。

 すると美晴みはるの体が浮いて、壁にくっついた。


「こんなふうに、高速で移動できるし、相手を壁にたたきつけたりもできる。ほんと、使い勝手いいし便利だよ」


 自分の能力を誇示した美晴みはる

 そんな美晴みはるはまだ気づいていなかった。


 影で息をひそめ、自分のゲーム能力を見つめながら美晴みはるを狙っている人影に……。


 ・月川翔也<脱落>


(ゲーム開始から0日0時間13分)


 残り49名。残り時間:9日23時間47分。

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