第2話 ゲーム開始前~弐~
『まぁ、ルールは簡単に、超簡単に言ってしまえば……今回は、「鬼ごっこ」です』
その放送は、いなくなった女性のことなど初めからなかったように、平然とルール説明を始めた。
僕たちはどうすることもできない。
この中によほど強い能力を持つ人がいるかもしれないけれど……。
実際に能力を勝手に使ってしまった人があんなことになっているんだから、僕らにはできることが少ない。
その一つが、「無言」だった。
しかし「鬼ごっこ」という言葉に、急に辺りがざわつき始めた。
デスゲームというくらいだから、もっと怖い物かと、僕も予想していたんだけれど……。
放送は、続きを話す。
『能力者を集めましたが……ゲームで自分の能力はもちろん、勝手に使うことができます。今はだめですけどね。
しかし、それだけだと非常につまらないので、もう一つゲームでの立ち回りを有利にしたり、逆に自分自身を縛り付けたりする……まぁ、あれです。
人狼ゲームなんかでよくある、役職。ここでは、「ゲーム能力」を渡します』
ゲーム能力。
それが何なのかは微妙なところだったが、追加の能力ととらえればよさそうだ。
『ゲーム能力は、各自渡されたタブレットでご確認ください。あ、他人に見られる可能性はありませんよ。
認証した本人以外が見ようとすると、勝手に電源が切れる仕様になっていますから』
僕はそう言われて初めて、腕にがっちりと固定されたタブレットがついているのに気付いた。
他の人も大体似たような色で、なくしたら見分けがつかなそうだ。
そう思ったから、念のためタブレットはどれぐらいの力で外せるのか試してみたが、どうやってもタブレットが腕から外れることはなかった。
つまり、タブレットは絶対に取れないらしい。
『さて、「鬼ごっこ」のルール説明は………まぁ、タブレットに転送します。
………はい、転送完了です』
すると、タブレットからピロン、と電子音がして、画面が明るくなった。
その画面には、認証システムでよくあるようなマークが映し出されている。
「スキャンしています………プレイヤー名、藍沢海斗。十二歳。プロフィール確認中……」
画面に文章が映し出され、しばらくすると「お待ちください」の画面に切り替わる。
そして数秒後に、「登録完了」と文字が出てきた。
パッと画面がまた切り替わり、ホーム画面になる。
そこにはすでに勝手にアプリが登録されていた。
一つ目は、「電話」。
他の人と通話ができるようになっている。
二つ目は、「ルール説明」。
これが、先ほどの放送で出た鬼ごっこのルール説明だろう。
三つ目は、「時計」。
開くと、時間は「残り時間:9日23時間59分59秒」で止まっている。
四つ目は、「ゲーム能力」。
自分のゲーム能力を確認できる仕様になっていた。
『さてさて、自分のタブレットは見れたかな。じゃ、ルールを確認してね。残り五分でゲームを始めるから、お早めに~』
そんなふうに、デスゲームが始まるとは思えないのんきな言い方をして、放送はそれっきり途絶えてしまった。
五分しか確認する時間はないので、急いで僕はタブレットの「ルール説明」を開いた。
「鬼ごっこ」~ルール説明~
このゲームは、自分の持っている能力と、ゲームマスターから渡された「ゲーム能力」を駆使して、『鬼陣営』から逃げ切るゲームです。
参加者は50名の能力者。
全員が何らかの能力を所持していて、ゲーム能力も追加されています。
そして敵陣営の鬼。10名です。
鬼は能力者ではありませんが、少なくとも「ゲーム能力」より強い「鬼能力」を、ゲームマスターから渡されています。
「ゲーム能力」は自分自身を強化するものもありますが、違うものもあります。
例えば「呪縛者」。
呪縛者は、ゲーム残り時間が三日になると、ある一つの場所から動けなくなります。
しかし代わりに、鬼全員の「居場所」と、鬼の「会話」と、誰がどんな「鬼能力」を持っているか。
これが全て把握できるようになります。
このようにかなり強いゲーム能力でもデメリットがあったりします。
なのでゲーム能力をうまく使い、自分の能力も最大限に生かしましょう。
鬼が参加者に触れ、「タッチ」すると、その参加者は消えてしまいます。
つまりそれは………「死」を表します。
しかし誰か一人でも生き残れば、参加者全員は無事に生き返ることができます。
全滅してしまったら即、そこでゲームオーバーです。
参加者陣営が生き残れば、鬼陣営は全員死。
鬼陣営が生き残れば、参加車陣営が全員死にます。
ゲーム時間は10日間です。
参加者が逃げられる時間は一時間。
一時間たつと、「鬼」が放出されます。
そして、ゲーム中に、
その詳細は、特別イベント開催時にタブレットをご確認ください。
参加者は10日間逃げ切れば勝ち。
鬼は参加者を全員タッチすれば勝ちです。
全力を出し切り、生き残るために頑張ってください。
………これが、ルール説明の全てだった。
本当にデスゲーム。
僕の中では、まだこれが何かのドッキリじゃないかと疑っていたのだ。
しかし、全員能力者だと知っていたり、先ほどのタブレットのような高度な科学技術を持っていたり。
これは本当のことだと、信じるしかないような状況に追い込まれていた。
「逃げ切らないと………」
今さっき死体を見たからか、死への恐怖からか、僕の口からはそんな言葉が一人でに飛び出していた。
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