第2話 傾く世界のリンク

【クリエイト】


そう叫ぶと、枝を持った俺の手が青白く光り始めた。

そして手の光が、木の棒に移っていく。


「うお!何だこりゃ⁉」


木の棒が細かい立方体に分解されていく。


「なにか武器の形を思い浮かべてみて」


武器?なんだか分からないが、とりあえず剣だ。

持ち手から、剣先にかけて形を思い浮かべてみる。

すると、立方体がさっきの木の棒と異なる形に変形していった。

そして、一秒もしないうちに変形は止まり、俺の手には木剣が握られていた。


「流石に 名持オリジナルちにはならなかったか。まあいいや、それで二、三発殴ればスライムは倒せると思うよ」


「二、三発⁉攻撃を掻い潜って当てろってか?今まででに戦闘経験なんて一回もないぞ」


「出来るはずだよ。体はこの世界に適応させたからね。さあ、行ってこーい」


やたら脳天気な機械音で指示を出してくる。

まあ、戦うしかないしやってやるよ!

覚悟を決め、俺はスライムに向けて走っていく。

スライムが、俺に向かってきていることもあり、互いが合流するのはそう遅くなかった。

俺がスライムの間合いに入ると、俺の顔面に向けてスライムの触腕が飛んでくる。右に顔を傾け、避けようとしたが、こめかみをかすった。


「ッ痛ぇ」


深くはなかったが傷がつき、血が頬を伝う。

スライムが出した触腕が、体に戻っていく。

手数で攻めてこないことから考えるに、どうやら同時に出せる触腕の数は一本のようだ。

次、触腕を出したタイミングで一気に畳み掛けよう。


「ピキィィィィィ」


「来た!」


スライムが叫び声を上げ、また触腕を飛ばしてくる。

だが、さっきと違う点が一つあった。

触腕が大きくなっている。


『避けられない…』


とっさに木剣を前に出し、一か八か攻撃を受け流そうとする。

すぐに、触腕が木剣にぶつかった。強い力が加わり今にも後ろに飛ばされそうになる。


『受け流せ、受け流せ』


冷静に木剣を動かし、最低限に衝撃を抑え、受け流すことができた。


「いける。今だ!」


スライムに木剣が当たる範囲まで全力で走る。


「うぉりゃぁ!」


そして、思いっきり木剣を振りかざした。


「ビィギャァァァァァァ」


すると、スライムは発光し、消えていった。


「思ったより早い討伐だったね。多分だけどアマトが落下したときの衝撃でスライムにダメージが入っていたのかな?」


ヘビィがフワフワと、こちらに飛んできて言う。


「あ~よくわからないことだらけだが、一つずつ質問してもいいか?」


「いいけど、何が聞きたいの?」


「じゃあまずは、ここはどこ??」


記憶喪失者みたいな質問をしてしまった。


「ここは"パラレラ"。または、傾く世界って呼ばれているところだよ!アマトが来た地球とは別の世界になってるね」


「は?地球とは別⁉」


確かに、落下中に傾く世界がなんたらとか言っていたな。


「あ~アマトのほうでは異世界とか呼ばれて…」


「ちょっと待った!さっきからアマト、アマトってなんなんだ?」


「え?キミの名前だよ?」


「いえ、相葉慶斗ですけど」


「あ~それも言わなきゃか、さっきアマトが落下してる時に、アマトの体をこの世界に順応させたんだよ。落下しながら聞いてたでしょ?その際に名前も変えさせてもらったよ。ちなみに、この世界の人々に近い名前にしといたからね。まあ、ランダムで選ばれたんだけど」


「最後にろくでもないことを言ってた気がするが…。まあいいや、この足も順応させた時に治った感じか?」


「そうなるね。他にも、身体中の悪いところは全部治っているはずだよ」


「まじか、じゃあ俺の難病も完全に治ってるってことかよ!ありがとなヘビィ」


「まあ、朝飯前よ」


なんだか、ヘビィが嬉しそうだ。まあ、表情から感情は読み取りにくいけど。


「ちょっと話を戻すが、ここは地球じゃない。つまり異世界なんだろ?この世界から帰るにはどうすれば良いか分かるか?」


暫くの間、ヘビィとの間に沈黙が流れる。

やがて、ヘビィが申し訳無さそうに喋りだした。


「ほぼここから帰ることはほぼ不可能と言っていいね。昔ならまだしも、今は無理だ」


動揺で言葉が出ない。帰ることはほぼ不可能?

せっかく足が動くようになったのにか?


「まあ、この世界もそんな悪いところじゃないよ。さっきのスライムとか、魔物はいるけど」


「さっきのやつ魔物なのか。異世界あるあるだよな魔物がいるのって。てか、帰るのがほぼ不可能ってどういうことだ?一応、方法があるみたいな言い方だが」


「ああ、それはね。年に二回、この世界はアマトのいた世界、地球とリンクするんだ。その際に地球に繋がる通り道がどこかにできるんだよ。まあそこに入れば地球に戻れるんだけど。近年、その通り道がどんどん小さくなっていて、見つけるのが困難になっているんだ」


「じゃあ、それを見つければいいってことだな!」


「急に割り込んでくるなぁ。でも簡単に言ってもらっちゃ困るよ。なぜなら、ボクの観測上、通り道の大きさは現在、直径二メートルぐらいだよ。しかも、パラレラのどこに発生するかわからないし、それも年二回だ。普通に考えて無理でしょ」


「いや、それでもやってやるよ」


「アマトがそこまで地球に執着する理由がわからないけど、まあ、しょうがないなぁ、付き合うよ」


「いいのか?ありがとなヘビィ。じゃあ今すぐ探しに行くぞ!」


「今年の一回目のリンクは終わったから次は半年後だよ」


「まじかい」

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┣傾く世界のクリエイト┨ よもぎ @yomogi0720

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