第2話 王子に勝って天領権利書を得たので、詐欺をやってみた


「さて、どうするかね」


 馬車が、ガラガラと音を立てて走る中。


 私は、今後の策を考える。


 王子との決闘に二度も勝ち。二度も勝ち(重要)。


 フランシーヌ王国の、天領・権利書を全て得たわけだが。


 このままいくと、フランシーヌ国王がロレーヌ侯爵領地に攻めてくるでしょうねぇ。


 権利書奪還のために。


 だから。


「今しか、チャンスはないわね」


 うん。まだ時間はある。


 あの決闘を見て、貴族・平民の心は離れている。


 正式な決闘で、奇襲までして二度も負けた。このダメージは想像以上にデカく、重い。


 これで、侯爵家をすぐに襲えば、王家の信用は地に落ちる。


 正式な勝者を襲う、人でなしの王と言われるだろう。


 そうなれば、フランシーヌの全貴族に『貴族を軽んじる王家を打ち倒せ!!』って檄文飛ばして、内乱できるけど。


 さすがに、国王は分かってそうだからなー。


 貴族の信用回復に努めるだろう。


 つまり、それが終わるまでの時間が、私たちの猶予。


 未来を決める、貴重な時間という訳だ。


 そして、その中でやれることは……。


「大事にするか」


 山火事は、山事消してしまう方がいい。


 なら、国王は国ごと消す。


 どうせ悪役令嬢なのだ。とびっきり悪いこと! してやろう!!


 うん!


「お嬢様、お屋敷に到着しました!」


「ありがとうリザ。行くわよ」


「はい!」


 覚悟は決まった。


 後は、お父様に話そう!


 そう思い私は、城のようにデカい屋敷に入り。


「おお! サーシャ! お帰り! ぎゅ~!」


 歓迎のハグで出迎えてくれる、愛する父上!


 シャルル・ド・ロレーヌに!


「父上! 只今戻りました! そして、時間がありません! 単刀直入に言います!!」


「ワイリー王子ご乱心! 私との婚約を解消し、平民と婚約! 面子をコケにされたが故、貴族の娘として決闘を挑み! 二度勝利! 命と名誉の代わりに、フランシーヌ王家が天領の権利書を! 全て頂いてまいりました!」


「こちらです!!」


 本題を切り出した!!

 

「……??? !?!? ??? !?!?」


 あ、父上が混乱なされている。


 落ち着いてくださいねー。父上ー。


「す、すまん。衝撃的すぎたが、え、マジで? 本当に?」


 はい。


「こ、婚約破棄?」


 はい。しかも、あったことない人間のいじめをしたと糾弾されました。


 場所は、学園卒業パーティーで。


 大勢の貴族のご子息とご令嬢が見ている。前でです。


「がっふ。そ、そうか。それは決闘だな。ああ、正面から喧嘩売られたんだ。当然の判断だ。で」


 当然勝ちました。そして、こちらが戦利品。天領権利書です。リザ。


「はい! こちらです!! 全て本物かと! いやー、お嬢様の勝利はすごかったですよ! 特に二回目! 私手をたたいて大興奮!! 歓声上げちゃいましたよ!! へへへ!!!」


 あの声、あなただったの!? マジで!?


「……うむ。本当だな。そして、すべてそろっている。……マジかァァあ!!! っはァァあ~~~!!! ~~~!!! ~~~!!!」


 顔を抑えて、うめく父上。


 気持ちは分かりますよ。ええ。


「よし、切り替えた。まずは、どうする。王家は、すぐにはこぬだろう。貴族の心が離れ過ぎた。これで、正式な勝者を襲えば、国が割れる」


 ですね。なので、国を割ろうと思います。


「……何をする気だ?」


 父上。


「その天領権利書。外国にすべて売りましょう」


「……」


「……??? !?!? !?!? WWWW !?!? ???」


 あ、また混乱した。


 父上ー。


「す、すまない。え、何? 売国するの? 本気で???」


「説明の途中です。父上。正確には、売国詐欺。権利書詐欺ですな」


「け、権利書詐欺???」


 そうです。


 結論から言えば、外国に売りません。


 ただ、外国が権利書を買うという噂を流し。値段を釣り上げ。


 王家に数倍以上の値段で、買い戻してもらうだけです。


 そうすることにより、我が一門に攻め入るための金を、奪います。


「……あー、そうか。戦争には、金が要るからな。城にも多少の備蓄はあるだろうが、常時ではない。戦の時に、食料・馬・武器・傭兵などを集めるには金が必要だ」


「なるほど、その金を権利書で奪うと! そういうことか!!」


 はい。その通りです。


 金がなければ、戦争もすぐにはできません。時を稼げます。


「なるほどな。しかし、王家は本当に買うだろうか? 力で奪ってくるのでは?」


 そうですね。売るのがロレーヌ家の者ならそうしてくるでしょう。


 なので。


「外国人に変装した当家の者。もしくは、外国人の奴隷を買って、そのものを通じて権利書を売ります」


「もし、そのものに王家が暴力を振るえば、その話を外国に流し。戦争にすればいいだけです」


「……」


 む、父上?


「……素晴らしい策だ。確かに。相手が外国人であるのが分かれば、下手な実力行使はできぬ。盗んでも、戦のきっかけとなろう。もしそうなれば、不満を覚える貴族と平民が暴れかねんからな」


「そうか。ならば、正面から。金で買い戻す可能性は高いか。ふむ……よし!」


「乗ったぞ! サーシャ! 儂はお前の策に乗ろう! 外国人の奴隷を秘密裏に集めて、外国が権利書を買ったうわさを流し! 国王から、金を巻き上げようぞ!!」


 おお! ありがとうございます! 父上!!


 では、さっそく執務室で策をつめましょう!


 素人の私の考えなので、もっと詳細を詰めないと。


「そうだな。変装や教育。いや、奴隷契約で交渉をさせることを考えると、執事長や私兵団長の話も聞いた方がいいか。さっそく彼らを呼んでくれ」


「「「「「かしこまりました。旦那様!!」」」」」


 よーし! よし! まずは第一関門突破! 父上がその気になった!!!


 あとは、策を上手くいかせるだけ!


 国王をだまして、金を巻き上げる!!


 ただそれだけよ! ええ!


「失敗した時は、本当に外国に売ったり、外国に話てもいいな。我が娘を追放するやつなど、願い下げじゃし!!」


「ははは。そうですね!」


「お! そういえば、サーシャ。この策が上手くいけば、かなりの金が手に入るが。何か使うのか?」


 ええ、計画はありますよ。


 おそらく、王都の民が流れてくると思いますので。それらを入れる孤児院や、学校。娼館。私兵部隊の拡張に、私兵冒険者などを増やしたいです。


 でも、一番は!


「私、海賊をやりたいです!」


 幼いころからの夢であり、今後に勝つための策!


 海賊侯爵令嬢になりますよ!!


「……??? !?!? ??? WWW」


 あ、また混乱された。


 誰か、気付けのワインをもてー。



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