王子に婚約破棄された瞬間に前世の記憶を思い出したので、王子に決闘を挑んでみた

@Risusan

第1話 婚約破棄されたので、決闘を申し込んでみた

「サーシャ・ド・ロレーヌ! お前との婚約を破棄する!! お前は、私の愛したマリアをいじめまくったクズだ! 出ていけ! 二度とその面を見せるな!!!」


「ワイリー王子!!(キュン!!!)」


 そう言われた瞬間、意味が分からず。私の意識は飛びかけた。


 マリア? 誰その平民? あったことすらないが?


 婚約破棄? え?


 この衆人環視のパーティー。


 私とあなたの学園卒業式パーティーで、フランシーヌはおろか、諸外国から留学に来た。


 王族・貴族の、ご子息・ご令嬢の前で、言うのがそれ?


 ふ。


 ふふふ!!!


 ふははは!!!


 ハァァあ!!!


 ふざけるなァァあ!!!


 ――バッキィィィ!!!


 あまりの憤怒で、暴走した魔力が。私の持っていたグラスを粉砕した。


 その白いガラスの輝きと、零れ落ちるワインの紅に。


 頭を沸騰させる怒りと、指を切った痛みに。


(あ)


 私は、前世の記憶。


 この世界を、ゲームとしてプレイした。日本人だったころの記憶を思い出した。


 ……ああ、これ『マリ成り』か。


 うん。『マリアの成り上がりストーリー! 王子様を手に入れろ!!』という乙女ゲーだ。


 ストーリーは良くある感じで、平々凡々。


 いろんな職にジョブチェンジして成り上がり、王子を垂らしこんで結婚。


 その後、国家経営編とか戦争編とかを経て、いろんな男キャラと出会い。


 逆ハーエンドで、国土を統一すれば真クリアという。よくあるゲームだ。


 ぶっちゃけ、目を見張るような展開はない。


 でも、このゲームは、謎にアクションに力を入れてて、覚えられる武術や魔法の数が豊富。


 金策の宿経営や、冒険者モードもしっかり作られてて、国家経営なども稼げて面白いんだ。


 私的には、ミニゲームが好きな作品だった。


 ……しかし、そんなマリ成りのサーシャが私とはねぇ。


 うん。前世と違って、金髪で、巨乳。


 白の美しいドレスがよく似合う。マジできれいな美人!


 他にも文武両道とか、婚約破棄されるまでは普通に良い人だったりするんだが。


 追放されると、主人公の敵となって立ちふさがり。絶対に死ぬのよねぇ。


 まァ、主人公に勝てるわけがないからな。そりゃあそうだ。


 でも。


 そんな運命、認めない。


 ゲームのように、簡単に倒され、殺されるなんて!


 断じて、認めない!!


 我が命! 我が家名!


 たやすく殺せるなど、思うなッッッ!!! 


「分かりました。ワイリー王子。では……」


「ふん! 分かったようだな! では、さっさと出て」


「私、サーシャ・ド・ロレーヌは! あなたに決闘を申し込みます!」


「!? 何!?」


 そう叫び、私は剣を抜いた。


 魔法で出現した、一般的な太さを持つ剣。


 それを見た貴族たちは『ええ!?』『決闘!?』『おお!?』っと驚いているが、止めはしない。


 教師も同じで、驚いてはいるが止められないようだ。


 まァ、この国の侯爵令嬢と王子の決闘だからね。


 変に止めたら、絶対恨まれる。


 止められないわな。うん。


「ば、馬鹿な! 決闘など」


「馬鹿ではありません。私は、そこの平民に危害どころか、あったことすらない。

なのに、あなたは婚約を破棄! 二度と面を見せるなという!!

これは侮辱です!! 私だけでなく、我が一門! 貴族への侮辱!!」


「ならば、剣をとるには十分な理由! 命を賭けるに値するのです!!


それを馬鹿とおっしゃるのか!! あなたは!! どれだけ貴族を馬鹿にするのですか!!!」


「そ、そうだ!」


「った、確かに!」


「その通りだ! 貴族への侮辱だ!」


「これは許されないですよ!!」


「貴族を愚弄するかァ!!」


「そうだそうだァ!!」


 貴族の子息やご令嬢がのってくれましたね。


 っふ、計画通り!!


 実際、貴族は舐められたら終わりってのは世界共通ですから。


 そりゃあ、賛成してくれますよ。


「!? っぐ!」


 あ、自分の所だけでなく諸外国の貴族が私に同調したんで、怯みましたね。


「さっさと剣を抜き! 戦いなさい! それとも、兵に命じますか? 自分の力ではなく、父親の権力を借りなければ! 女一人追い出せない! 無能を晒しますか!!」


「な、なにおおお!!!(憤怒)」


 はい、フィーッシュ!!


 怒らせれば、さっさと剣を抜いて、私の前に立ったね!


 これで、決闘に行けます。


 やっぱチョロいは、この王子。


「では、審判をリザ。あなたがしなさい」


「は、はい!? 私ですか?」


「ええ。あなたです。頼みますよ」


「か、かしこまりました!!」


 っで、審判をさりげなく。私のメイドに任命。


 贔屓判定……は、真剣を扱うので、やりませんが。


 王子側の人間に審判されると嫌なので、任命します。


 ……本当は、私のメイドが審判することでプレッシャーを与えたいとも考えていましたが。


「絶対に勝つ! 勝つ!! 殺してやる!!」


 激怒しているので、全然感じてませんね。プレッシャー。


 つまりは、視野がだいぶ狭くなっているということ。


 人間、怒れば無駄な力みが生まれて、行動はおおざっぱ。攻撃は大振りになるので、やりやすいですね。


 そこを狙いましょう。


「では……はじめ!!」


「おおお!!!」


 はい、大声を上げて振りかぶる王子!


 動きが大きく、体を必要以上に晒してる!


 その隙だらけな、喉に!


 踏み込んで、突きィィい!!!


 ――ダンッッッ!!! ピタ!


「!? え!?」


「寸止めです。これ以上やれば喉を突き破りますが、やりますか?」


「い、いや、その」


「続行ですね! では!!」


「ま、まいった! まいった!! 負けを認める! 降参だァァあ!!!」


「「「「「『『『『『おおお!!!』』』』』」」」」


 やりました(0.2秒の決着)。


 ええ、寸止めですが、喉に剣を当てて、勝ちです。


 ギャラリーの貴族の子息やご令嬢。平民の方々も、湧いてますね。


 大変気分がよろしい!!


「な、なァ! サーシャ! 余が負けたのだから! 剣を引いてくれ!」


「いえ、まだです」


「……は?」


 何を言ってるんですかね。こいつは。


 侮辱された貴族が、相手の喉に剣を突きつけている。


 そんな優位を、タダで手放すわけないじゃないですか(ニッコリ)。


「剣をどけたいなら、それ相応の物を差し出してください」


「!? な、なんだとォ!? 王子である俺から奪うなんて! ゆ、許されない!! は、犯罪だぞ!! 身の程を知れ!!」


「私は、自分の命と一族の名誉をかけて戦いました。そして、あなたは決闘を受けた。なら」


「あなたも、命と名誉を掛けたということ。いただくのは、当然では?」


「「「「「『『『『『おおお!!!』』』』』」」」」


「そうだ! その通りだ!!」


「よく言った!!」


「感動した!!」


「賭けの内容を実行しろぉぉお!!!」


「神聖な決闘は、同じ条件・賭けで行われマース!! それが、決闘者のルール! 絶対の掟なのデース!!」


「そうだ! 決闘者の掟! 親の顔より見た、絶対のルール!!」


「血より濃く、鉄より硬い! 国王でも破れない掟なんだ!!!」


「差し出せよ! 命を!」


「今ここでぇ!!」


「王家の名誉をよこせぇぇえ!!!」


「負けたんだ、当たり前だよなァ!!」


「殺せぇぇえ!!!」


『『『『『「「「「うおおお!!!」」」」」』』』』』


「ひ、ひいいい!!!」


 周りがエキサイトして、王子が悲鳴上げてますね。


 しかし、彼らの言う通り! 決闘の賭けは絶対です!


 払ってもらいましょう!


 王子の命と、王家の名誉を!


「という訳で、王子のお付きの方。王子の命と王家の名誉の支払いを求めます」


「!? え!?」


 え、じゃないでしょう。執事さん。


 そのために、あなたはいるんですよ。


 ああ、私を取り押さえるよう兵士に命じるのはやめなさい。


 それより早く、私は王子とマリアを突き殺し。


 あなたたちを屠れますから(ニッコリ)。


「わ、分かりました! し、しかし! 王子の命と王家の名誉となる物となると……」


 あるじゃないですか。とびっきりの物が。


 ズバリ言うと。


「フランシーヌ国王の直轄地・天領。その権利書です」


「「え」」


『『『『『「「「「!!!」」」」』』』』』


 王子と執事が絶句し、周りの方々も驚かれてますが。


 王子の命と名誉なら、良い代物でしょう?


 なんせ、王族が絶対に手放したくない。直轄地。


 税収地なんですから。


「!! さ、さすがにそれは……!!」


「では、王子には死んでいただきますか」


「!!!」


 おう。早しろよ。


 こちとら侯爵令嬢。面子のためなら、王族も殺せと習ってるからな。


 実演してもいいぞ? マジで。


「!!! わ、分かりました! こ、これでございます!!」


 ん。リザ。


「はは! 受け取ります! ……本物です! 全ての天領の権利書が揃ってます!!」


 よろしい。


 この子は、ちょっと気が抜けてるところがあるけど、能力は本物なので信用できる。


 リザが本物と言えば、本物だ。


「では、引きましょう」


 ――ッス!


「!!! フー! フー! フー!!(深呼吸)」


「お、王子様!!」


 剣を引いたら、めっちゃ呼吸してるワイリーに、マリアがかけよって抱きしめた。


 そんな光景に、特に思うことはなく。


(さァ、こっからが大変ね。気を引き締めないと)


 っと、さっさと背を向けて。


 去っていこうとすると!!


「!!! うわあああ!!!」


 ワイリーが剣を振り上げ! 叫びをあげ! 


 襲ってきたのでぇ!


「ふん!」


 ――ガキン! グルン!! ブワン!!!


「!? ぎゃ!!」

 

 私の剣を剣にぶつけ! 巻き込み、跳ね上げ!


 奴の手から剣を、弾き飛ばしつつ!!


 ――斬! 斬! 斬!!!


「!? ぎゃあああ!!!」


 その服を斬りつけ!!


 ええ、Sの字を服に切りつけましたわ!


 二度も負けるとは、無様ですわね。


「「「「「うおおお!!!」」」」


『『『『『すっげえええ!!!』』』』』


『『『『『「「「「「かっけえええ!!!」」」」」』』』』』


「え、何今の!? すっご!」


「剣を巻き込んで、跳ね上げた!? 飛ばした!?」


「あんな技! みたことない!!」


「あんなことできるのか!?」


「すっげえええ!!!」


 おお、めっちゃ褒められてる。


 ど、どうも。


「ああ、凄い剣の技だった! 感動した!」


「いいもの見たわァ! はー! っで、それに引き換え」


「王子はよぉ」


「日に二度も負ける奴があるか!!」


「しかも、背後からの奇襲って」


「えぇ……」


「あの、日に二度も負けるのやめてくれます? しかも、背中を見せた彼女への不意打ちで、返り討ちにされるとか。マジでクソですよ」


「やめたら? 王子」


「才能ないよ」


「愚物が!!」


「はー、つっかえ」


 おお。周囲からの容赦ない侮蔑!


 王子相手にも容赦ないね。君たち。


 まァ、一日に二度も負ける。しかも、不意打ちでってのは、ないわね。


 擁護できませんわ。ええ。


 っという訳で。


「では、失礼。行きますよ。リザ」


「は、はい!!」


「おお! ブラボー!」


「すごかった! 感動した!!」


「スカッとしたぜ!!」


「「「「「『『『『『ヒューーー!!!』』』』』」」」」」


 私とリザは、周囲の貴族と平民たちから歓声を浴び! パーティー会場から出て!


「こちらです! お嬢様! この馬車で、ご実家に!」


「ええ、急ぎますよ!! 至急、父上の所に!」


「ガッテン! ハイヤー!!」


 馬車に乗り込み!


 フランシーヌ西部の侯爵領。


 ロレーヌ侯爵家へと、向かうのであった。


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