23.作戦会議(ただし一人)
ぶはー疲れたー。
私が選んだ事とはいえここ数日疲れること多すぎんよー。
はーでもひっさびさのベットはいいなー。
ふっかふかやでー。
ここどこかって?
私の部屋。
なんでも部屋にはまだいくつか空きがあるらしく、その中で一番ラウムの部屋に近いところを私にあてがってくれたって事らしい。
出かけてるあいだにベットメイキングが完了してるってホテルかなんかか?
ありがてー。
おかげでこうして人目を気にせず存分に羽を伸ばせるって訳だ。
翼は伸ばせないけど。
2階とはいえ下手したら窓から見えるし。
それは不満だなー。
ま、それも一人でベットでゴロゴロする幸福に比べちゃあ大した問題じゃない。
幸せー。
うーん、よっし。
いくら久しぶりだからってゴロゴロしてばっかりもいられないな。
私がここにいるのは目的あっての事だ。
他の龍の居場所を掴み、殺す為。
世界中飛び回って探すのではいくらなんでも時間がかかりすぎるし、それなら龍の監視なんて事をしているこの国の騎士団の情報を盗み取って存分に活用すればいいのだ。
さて、それでその情報のありかだけど……可能性で言えば、昼間言った趣味の悪い屋敷、ナタールだっけ?
あいつの屋敷が一番可能性が高い。
なんか支部長とか言ってたし。
つまりお偉いさんでしょ。
あと本人も武芸はからっきしとか言ってたし、おそらく文官的な立場と見た。
それならグラムロックとかよりも情報を書いた書類を持ってる可能性は高そうだ。
もし無かったら?
そうだな……とっ捕まえて締め上げてみようか。
横の繋がりでなんか知ってるかもしれないし。
最悪なのは書類が無い上に締め上げたら「親龍王国に栄光あれ!」とか言って自殺されるパターン。
私は回復魔法もそれなりに使えるけど、流石に死者蘇生とか無理。
そもそも腕すら生やせないのにできる訳がねーですよ。
うーん……でも最悪は想定しといた方がいいか。
もしそうなったら、次の標的はグラムロックかラウムだね。
二人とも現場で動いてはいるけど、それでも立場的にはそれなりの位置にいる。
会社で言うなら部長とか係長クラス?
働いた事はないから知らんけど、それでも役職持ちなのは確か。
なら一人くらい知り合いが龍の監視をしていてもおかしくない。
それが聞き出せれば、あとはチンピラ風龍にしたみたいに芋づる式に龍の住処を知れる。
それでミッションコンプリート。
あとは復讐を果たして終わりだ。
ラウム達すら知らなかったら?
知らん。
虱潰し作戦決行だ。
さーて、当分の目標はそんな所かな。
問題はどうやって書類を探すかだけど、はっきり言って屋敷の持ち主を騙したり交渉したりして手に入れられる可能性は無い。
私コミュ障ですし?
2文節以上喋れませんし?
あんな油断も隙もないような人相手したくないです。
そうなると強奪……盗賊の真似事って感じか。
そっちの方が可能性はあるな。
闇魔法はその名の通り、真っ黒い魔法である。
それこそ闇に溶け込むくらいには。
月の光もない深夜、自分の周りを闇魔法で囲えば現代並の照明でもない限り極めて見えづらい。
上手く使えばワンチャンある。
ただそれでも問題はある。
それは魔法を使うだけあって、恐らく魔力が垂れ流しになるということ。
前にチラッと言った気がするが、魔力の探知自体は実は割と簡単にできるのだ。
そこから魔力を判別したり、探知できる距離を伸ばしたりするには才能だったり努力が必要になるけど。
あの屋敷にちょっと魔力を探知できる人がいたら、即不自然な魔力の高まりを探知する事になる。
私なら見逃さないなあ……。
まず間違いなく警戒する。
ま、正直情報を手に入れるだけならコソコソする必要もないんだけどね。
手順は簡単、まず町の外で龍に戻ってから屋敷を襲撃。
それっぽい紙の束とナタールを引っ掴み夜の闇に紛れて逃亡。
町から距離を取ったところで締め上げるなりなんなりして終わり。
ただ、それはあんまりしたくない。
何故かと言えば顔が割れるからである。
考えても見て欲しい。
黒龍が忽然と姿を消した森で保護された少女。
しばらく騎士団と共に過ごした彼女は、町に着くなり姿を消してしまう。
その夜、町は姿を消したはずの黒龍に襲われ有力者が攫われてしまうのであった……。
うん。
こんな三流の台本、余程のバカじゃない限り少女=黒龍って予測がつく。
もしこれから先人里に降りる必要ができた時にはこの顔を晒すことになるんだし、行く町行く町そこらじゅうに「この顔見たら110番!」なんて貼り紙を張り出されたらそれで詰む。
その事態を避けるとなるとコソコソ情報を集めつつ、時が来たら後腐れなくさよならするのが一番いい。
そうなるとやっぱり魔法で隠れ蓑するしかないんだけど……どうやって隠そう?
隠す手段を隠すというマトリョーシカ的な理論。
結局また隠している事を隠して更にそれを隠してまた隠して……無限ループって怖くね?
はあ……なんでこんな面倒なことする羽目になるかなぁ。
ダンボールとかあればいいのに。
あれに隠れれば細かい事を考える必要はない。
被ったまま潜入できる。
ま、ないものねだりしても仕方ない。
やらなきゃいけないならやるだけだ。
最悪ゴリ押すのも視野に入れておこう。
よーし、そんな所かな。
とりあえずやる事を整理しようか。
まず情報がどこにあるのか調べる。
できれば書類なのかはたしてそうじゃないのか、どんな状態で保管されてるのかまで調べられたら完璧かな。
予想ではナタールの屋敷が一番可能性が高い。
けどもしかしたら無いかもしれないんだよなあ。
てか龍を監視してるのは事実としてあるからいいとして、そもそも龍の居場所の情報自体この町にあるのかすらわからんのだけど。
そこは共有されてると思いたい。
で次。
忍び込む手段。
今のところ最有力は闇魔法を隠れ蓑にする事だけど、闇魔法の魔力を隠す方法が思いつかなければそれも難しい。
そうなった場合の代案も考えておいた方がいいだろう。
目的自体の問題はそんな所かな?
他にも色々とないわけではないけど、さしあたっては直接問題になりそうなのはそんな感じ。
で、決行日はいつにするか。
多分だけどある程度馴染んでからの方がいい。
取り入ってすぐに実行すれば、もし見つかった時に怪しさ満点だ。
ちょっと慣れていれば「何してるんだろう?」で済むことが、警戒MAXだと「ちょっとお話いいかな?」になったりもする。
要は親しい人間は疑いにくい。
そういう事だ。
うんうん。
やる事は決まったね。
あとはどれだけ上手くやるか。
理想的にいけば誰にも気付かれないまま情報だけをもらい、後腐れなく町を出ることになる。
そうなればいいなあ。
もしばれたらよろしいならば戦争だ状態だからなあ。
ちなみにこの町で魔力探知する限り私に勝てそうな人間はいなかった。
隠してる可能性もあるけど、そうそういないでしょ。
そうなると戦争と言うより虐殺である。
前もしたことある気がする。
あ、ここら辺で言っとくけど、私別に人殺し大好きって訳じゃないからね?
単に必要とあれば躊躇しないってだけだからね?
その辺勘違いしないでよ?
あーでも人肉はなんだかんだ食べた事ないから味とか結構気になるなー。
雑食性の動物の肉は臭いってのは体験済みだけど、人間はどうなんだろう?
香辛料とか食べてるとその味が体に染み付いて実は美味いとか?
無きにしも非ず。
もしチャンスがあったら失敬してみよう。
食の探求はとどまる所を知らない!
いつの時代、どの世界でもな!
ま、でも今日はしっかり休もう。
疲労はいろんな面で良くない。
最高のパフォーマンスにはしっかりとした休みが大切だ。
まあ人の姿ってだけで肩凝るし、バレないようにっていう精神的な疲労もやばい中で何言ってんだこいつって感じだけど。
さーて、じゃあ寝るかな。
久しぶりのベットだ。
埃臭い天幕でも固い地面でもない柔らかい布団。
天国か?
はー、素肌にシーツの冷たい感触が心地いい。
寝てる間に人化が解けてバレないかと心配する必要も無し。
今日はよく寝れそうだ。
じゃ、お休みなさーい。
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